急な病気のときに頼りになる高額療養費制度

[2015/8/31 19:25]

急な病気のときに頼りになる高額療養費制度の使い方

自分や家族が急な病気に襲われたときに、頼りになるのが「高額療養費制度」です。これを活用すれば、高額な手術費や入院費の負担が軽くなります。ここでは、制度の使い方をQ&A形式で短くまとめてみました。

簡単に言うと、どういう制度なの?

基本的に月単位で考えられている制度です。

「高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)とは、公的医療保険における制度の一つで、高額な医療費がかかった月に支払う自己負担分の上限が決められていて、それ以上の支払いがあった場合は、戻ってきます。

たとえば、抗ガン剤を使った治療では、総額で月に100万円以上の医療費がかかることがあります。健康保険の場合、自己負担は3割ですが、それでも30万円以上になります。高額療養費制度を使うと、それがさらに安くなります。

誰が使えるの?

公的医療保険(健康保険)に入っている人なら、すべて対象となります。

対象となるのは、健康保険組合、全国健康保険協会、市町村(国民健康保険、後期高齢者医療制度)、国保組合、共済組合などの、健康保険の加入者です。

日本では、国民皆保険制度のため、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入していますから、すべての国民が対象となります。

実際に、どこまで安くなるの?

70歳未満の場合、年収によって5段階に分かれています。

年収370万円以下の場合で自己負担額は月額57,600円。収入が一番少ない場合で月額35,400円、一番多い場合で月額252,600円+αです。

70歳以上75歳未満の場合は、一般所得者で月額44,400円。収入が一番少ない場合で月15,000円、一番多い場合で月額80,100円+αです。

75歳以上は、後期高齢者医療制度の対象ですが、高額療養費制度の自己負担額は変わりません。

まだ高いけど、手はないの?

高額療養費では、いくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みも設けられています。

家族の自己負担額を世帯で合算できる「世帯合算」、その年に高額療養費制度の対象となる月が3月以上ある場合の4月目以降の負担が軽くなる「多数該当高額療養費」などの制度があります。

つまり、家族の中に複数の病人がいる場合や、病気が重く高額な医療費が4カ月以上かかる場合は、負担を軽くすることができます。

とくに「多数該当高額療養費」は、高価な抗ガン剤を使った治療を継続的に行なう場合などには有効です。

どこに言えば、お金が戻ってくるの?

自分が加入している健康保険の窓口に「高額療養費の支給申請書」を提出するのが基本です。窓口は、保険証などに記載されていますので、確認しましょう。

基本的に自分が申請しなければ、お金は戻ってきません。また、申請できるのは医療費の支払いから2年以内です。忘れないように、早めに申請しましょう。

なお、一部の健康保険組合や共済では、支給申請ができることを教えてくれたり、自動的に手続きをしてくれるところもあります。最初の手続きの時に確認しておきましょう。

申請してから、どれぐらいでお金がもどってくるの?

病院から医療費の申請が健康保険に回って、確認されてからになりますので、最低3カ月はかかります。

たとえば、3月に20万円の医療費がかかり、自己負担額が8万とすると、差額の12万円が戻ってくるのは6月から7月になります。

国民健康保険の場合は、健康保険料を引き落としている銀行口座に振り込まれますが、組合健保の場合は給与と同時に支払われる場合もあります。

3カ月も待てません。なんとかなりませんか?

高額な医療費がかかることがあらかじめわかっている場合は、健康保険の窓口で手続きして「限度額適用認定証」をもらっておきましょう。

この認定証を、病院の窓口で確認してもらうと、月ごとの支払額が自己負担限度額までとなります。つまり、立て替え払いをする必要がなくなります。差額は病院が直接、健康保険に請求します。

「限度額適用認定証」をもらうときは、期限を長めしておくと、手続きが1回ですみます。保険によって異なりますが、だいたい1年単位で期限を指定できます。

また、健康保険組合などで無利子の貸出制度などが用意されていることもありますから、限度額適用認定証の申請が間に合わなかったときなどに利用しましょう。

なお、限度額適用認定証は、入院だけではなく、通院でも使用できます。

食費や差額ベッド代も対象になるの?

高額療養費制度はあくまで、保険適用される診療の自己負担額が対象となります。つまり、入院中の食費や差額ベッド代などは対象となりません。

個室へ入院した際などには、医療費よりも差額ベッド代の方が高くなることも珍しくありません。万一のリスクに備えて、貯金や民間の医療保険なども用意しておきましょう。

[シニアガイド編集部]