定年退職時の健康保険の選び方
社保から離れる際の3つの選択肢
会社員が定年退職する際に、加入していた健康保険(社保)から脱退することになります。これまで使っていた社保の保険証は、退職日の翌日から使用できません。
再就職などで、新しい勤務先の保険に入る場合を除き、自分で手続を行なって、何らかの公的医療保険に加入する必要があります。
この場合の選択肢は3つあります。
- 加入していた社保を任意継続する
- 国民健康保険に加入する
- 家族の健康保険に被扶養者となる
社保の任意継続は2年間
社保を任意継続をするなら、退職から20日以内に手続きが必要です。加盟期間は退職時から2年間です。
在職時の社保の保険料は、自分と会社が半額ずつ支払っていますが、任意継続すると会社の分も自分で負担します。つまり、単純計算で2倍となります。
ただし、保険料を計算する基礎となる標準報酬月額について上限が設けられています。たとえば、ある健保組合では、この上限を41万円に設定しており、介護保険を含めた保険料は月に38,950円となります。これが上限となります。
それでも、一般的には、定年退職前よりも負担が大きくなりますので、会社の総務部門や健保組合に確認して試算してもらいましょう。
国民健康保険に加入
国民健康保険への加入は、退職の翌日から14日以内に市区町村の窓口で手続きを行ないます。
ただし、国民健康保険に加入する場合に注意が必要なことが2つあります。
まず、国保を管理している地域によって保険料が異なることです。地域によっては意外なほど大きな差があります。
また、国保には扶養という概念がありません。社保では被扶養者になっていた家族にも、それぞれ保険料がかかります。したがって、家族が多い場合は保険料の総額が大きくなります。
国保に加入する場合は、実際に保険料がいくらになるのか、居住している市区町村の窓口やWebサイトなどで、必ず確認しましょう。
家族の被扶養者になる
生計を一にする家族の誰かが社保に加入している場合は、その被扶養者になることができます。
この場合、保険料は発生しませんが年収の制限があります。被扶養者になれるのは、60歳未満で年収が130万円未満、60歳以上の場合は180万円未満です。
また、雇用保険の基本手当を受給している場合も、被扶養者になれません。
基本は保険料で決めて良いが、付加給付は確認
家族の被扶養者になった場合、社保を任意継続した場合、国保のいずれでも、医療費の自己負担率は原則3割で共通です。一般的には保険料が安い方を選んで問題ありません。
被扶養者になれない場合は、社保の窓口と国保の窓口で、保険料の試算をしてもらい安い方を選択しましょう。
ただし、これまで加入していた社保が組合健保の場合は「付加給付」と呼ばれる制度が用意されていることがあります。これは、一般的な給付に上乗せして、給付を行なう制度です。
例えば、付加給付があれば、その月の医療費の負担額は2万5千円が上限となります。本人や家族が、抗癌剤治療など高額な治療を受けている場合には、国保よりも負担が軽くなります。その場合は、任意継続を選択する意味があります。
なお、付加給付については、一部の組合健保の制度であり、実施していない組合もあります。また、協会けんぽでは実施していません。まず、健康保険証で加入している健保の名前を確認して、制度について調べてみましょう。