二世帯住宅を考えるときのチェックポイント

[2015/9/12 15:41]

「なんとなく」で二世帯住宅は危ない

「二世帯住宅」という言葉をご存知でしょうか。

親と子の2つの世帯が、同じ建物に同居するための住宅です。

例えば、「親が弱ってきたので、親と同居するため」とか「都内では一戸建てを建てるのは難しいので、親の家を建てなおして同居する」、「子育てが大変なので親にサポートしてもらうため」などが二世帯住宅にする理由です。

しかし、二世帯住宅は、親の世帯と子の世帯の2つの世帯が同居するのですから、いろいろな問題が控えています。

住宅は一度建てると、やり直しができない、大きな買い物です。建てる前に、よく考えなければなりません。

二世帯住宅を建てようと思う理由は何でしょう。

大きく分けて「お金」と「心」の理由があります。

二世帯住宅の建設を決断する前に、もう一度、両方の面からチェックしてみましょう。

お金の理由

お金の理由です。「経済的なメリット」と言い換えても良いでしょう。「親の家の土地が利用できるので、その分、建物にお金が使える」「親もお金を出してくれるので、ローンの負担が軽くなる」「同居している事実があるので贈与税の控除がある」などがあります。

経済的に言えば、二世帯住宅はとても有利です。まず、ローンは親の世代と子の世代が協力して払えますので、予算が大きくとれます。親の家が建っている土地があるので、ローンも借りやすいでしょう。

相続の面でも、「小規模宅地の評価減」と呼ばれる控除で、“同居している”親の家を相続する際に、330平方m以下であれば評価額が80%減額されます。いくつかの条件はあるのですが、相続税を気にしなければならないほど条件の良い土地建物を相続する場合には考慮したくなる制度です。

これらのメリットは、わかりやすく、親と子の両方の両方が賛成しやすい理由です。

心の理由

二世帯住宅を建てたいという心の理由は大きく2つあります。1つは、「弱ってきた親と同居して、様子を見てあげたい」というものです。もう1つは「子育てで苦労している子供の世帯をサポートしてあげたい」という、主に親の側からの理由です。

どちらも、親子として素直な心情であり、反対しにくい理由です。ただ、こういう場合に忘れがちなのは、夫婦どちらの「親子」の関係を軸にしているのかということです。

例えば、夫が自分の親のことを心配し、自分の親の土地に二世帯住宅を建てる決心をするとします。この場合、夫と親世帯とは実の親子関係ですから長い絆がありますが、妻は見知らぬ土地で、周囲を他人に囲まれて生活することになります。

妻としても、二世帯住宅のメリットは理解していますし、自分からは口に出しにくい問題でもあります。

しかし、住宅のために夫婦関係が壊れてしまっては意味がありません。他人と同居することになる配偶者に配慮し、自分の世帯の意思を統一することが必要です。

許せる範囲をシミュレーション

「世帯」という言葉は「同一の住居で起居し、生計を同じくする者の集団」と定義されています。

ずっと以前の日本社会のように、親子孫の3世代が同居していても、生計が1つであれば、それは一世帯です。

わざわざ「二世帯住宅」というからには、一つの世帯となって同居しているわけではなく、親の世帯と子の世帯で、何かが分離しているわけです。

例えば、1970年代に最初に登場した二世帯住宅は、1階に親の世帯が住み、2階に子の世帯が住むという完全分離型だったそうです。子の世帯の玄関は2階に設けられており、同じ建物ですが、生活は分離されていました。

その後、住み方の変化などがあって、玄関はいっしょだが台所や浴室などの水回りは一緒、それぞれの寝室は別だが台所は一つ、などのバリエーションが生まれたそうです。

つまり、どこを共有して、どこを別々にするかという判断が、間取りを決めます。

例えば、こういうことが許せるかどうか考えてみましょう。

  • 自分が外出することが、常に親の世帯に分かっている
  • 食事が終わって食器をシンクに置いておくと親が手を出して洗う
  • 常に親の世帯と同じ場所で食事をとる
  • 親とテレビを共有できる
  • 自分たちの洗濯物を、親の世帯が一緒に洗濯して干す
  • 親の世帯が沸かしたお風呂に入る

つまり、玄関、台所、食堂、リビングルーム、洗濯機を置く洗面所、浴室などが共有されていると、上のようなことが起こりやすくなります。

自分の親と同居することを前提に二世帯住宅の計画を進めている場合は、逆に、自分が配偶者の親と二世帯住宅で同居することを想像してみましょう。そして、上のような状況が起きることが許せるかどうか考えてみましょう。

そういうシミュレーションをした上で、もう一度、配偶者の心情も考えましょう。

実際に、親世帯と同居するのが息子夫婦なのか、娘夫婦なのかによって、間取りには大きな差がでます。それを前提として、配偶者と話をすると、前向きな話し合いができるでしょう。

二世帯住宅を成功させる秘訣は「見ざる言わざる聞かざる」と言われます。お互いの生活が見えると、何か言いたくなりますが、それをガマンするのがコツということです。

ただ、見せたくないものについては、見えないような間取りにするという手もあります。どこまで共有するかという距離感を保つためにも、間取りについては慎重に検討しましょう。とくに、間取りを決める場合は、主に家事をする人の意見を優先しましょう。

最後は協力しあう心

二世帯住宅は、経済面でのメリットが大きく、親から子、子から親、親から孫など世代間の助け合いがしやすいという長所があります。

ただ、例えば夫婦や夫婦と子供だけで暮らしていたときに比べれば、年齢が離れた他人がごく近い場所で生活するわけですから、親の世帯にとっても、子供の世帯にとっても、ある程度の覚悟は必要です。

同居する家族が増えるということだけでも、人によって許容範囲が異なります。それぞれの生活史と個性を考えながら、二世帯住宅を検討しましょう。

二世帯住宅は、建てて終わりではなく、そこから長い生活が始まります。

最後は、親と子がお互いに支えていかなければ成り立ちません。お互いに協力しあう心があれば、二世帯住宅のメリットを活かしながら助け合って行けるでしょう。

[シニアガイド編集部]