無担保融資などで55歳以上のシニア起業を支援する東京都の事業

[2015/9/24 00:01]

地元を支える起業をサポート

定年を期に起業するというのは、人生の選択肢の1つです。

しかし、会社員として働いてきた経験と退職金を基に事業を始めても、経営と資金繰りはなかなか難しいものです。

東京都では2014年から、「女性・若者・シニア創業サポート事業」を開始しました。

これは、女性、39歳以下の若者、55歳以上のシニアで、創業の計画がある者または創業後1年未満の者を対象としています。創業の形態は、個人事業主、株式会社、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人です。NPO法人が含まれるのが珍しいですね。

また、事業の対象として「地域の需要や雇用を支える事業であること」を条件としています。

このような起業支援策は、金銭面での優遇などが中心ですが、この制度はセミナーや個別相談と組み合わせた総合的な支援策となっている点です。

シニアの起業支援策として、面白い制度ですので、詳しく見ていきましょう。

事業計画書が書けるところまでサポート

この制度が地域密着型なのは、東京都と組んで融資を行なう金融機関が信用金庫と信用組合という地域に根ざした金融機関であることにも現れています。

信用金庫と信用組合の協会は、創業の専門家「地域創業アドバイザー」を設置し、その意見を参考に事業計画書を審査した上で融資を実行します。

地域金融機関である信用金庫と信用組合が審査するのですから、その地元の特色や状況にふさわしい事業が選択されることが想像されます。たとえば、シニアの起業例として「地域企業OBの技術を活かした会社の設立。人脈や経験を活かした地域企業へのコンサルティング」が挙げられています。このあたりが期待されている分野ということです。

想定されている創業規模は中小企業者の範囲で、大企業が実質的に経営を支配していないことが条件となります。また、公序良俗に問題のある事業や風俗営業などでないことも条件となっています。

また、支援の対象者は「創業に関心のある方、事業計画書をこれから作成する方」に重点が置かれています。つまり、創業してみたいと思っていても、手続きや事業計画書の書き方は分からないという層を対象にセミナーや個別相談を無料で行ないます。

セミナーは市区単位で、比較的頻繁に行われています。日程は主催者によって異なり、長期セミナーも用意されています。個別相談は予約が必要ですが、無料で受けられます。

つまり、意欲のある人を対象に、セミナーや相談で、起業計画を練り上げ、事業計画書が書けるところまでサポートするわけです。

融資は無担保低金利

事業計画書を基にして、信用金庫か信用組合から融資が行なわれます。

融資条件は年度ごとに変わりますが、無担保低金利が基本です。金利は固定金利で1%以下とされています。

平成27年では、融資限度額は1,500万円以内で、運転資金のみは750万円以内。返済は10年以内で、据置期間が3年以内です。

資金の用途は「新たに事業を始めるため、または新たな事業開始後に必要とする設備資金・運転資金」とされており、比較的自由に使えます。ただし、他の借入金の借換は対象となりません。

融資後も5年間に渡り経営をサポート

融資が終わってからも、最大5年間、年3回以内の範囲で経営アドバイスが行なわれます。内容は、事業計画のブラッシュアップや、事業の継続発展のためのアドバイスとされています。

起業の例をみると、お金を集めて、そこで安心してしまい、事業計画が進まないということが良くああります。アドバイス役がいるのは良いことでしょう。

また、融資初年度のみ税理士などが決算書の作成アドバイスを2回まで行なってくれます。決算書の作成を代行してくれるわけではありませんが、初めて決算書を作るのはとまどうものなので、有効なアシストでしょう。

地方自治体は起業を支援しているので探してみよう

今回は始まったばかりの東京都の制度を紹介しましたが、お住まいの市区町村や県のホームページを検索すると、意外と多くの支援策が用意されています。産業の振興は、すべての地方自治体の課題なのです。

検索する際は「経営支援」「金融支援」「産業振興」「起業支援」「地域資源」などのキーワードで探すと見つかりやすいようです。

可能であれば、起業する前のサポート制度も利用して、自分の事業計画をより良いものにしましょう。第三者の目は、起業のどの段階においても有効なものです。

[シニアガイド編集部]