いつも一緒にいられる手元供養という選択
変わりつつあるお墓の形
亡くなった方をどのような形で葬るかという形が大きく変わってきています。
以前は、寺院に付属する墓地や、地方自治体や民営による霊園墓地などが主流でした。最近では、共同で1つのお墓に入る永代供養墓や、植物の周辺に埋める樹木葬。墓を作らない散骨、島田裕巳氏が提唱するお骨を持ち帰らない「0葬(ぜろそう)」など、さまざまな形があります。
「一緒にいたい」という気持ち
中でも、注目を集めているのが「手元供養」です。これは、お骨をお墓やお寺に納めず、自宅に置いておくものです。
単純に納骨するお墓がないという理由だけではなく、「一緒にいたい」「離れたくない」という遺族の気持ちによる場合も大きいようです。
これまで手元供養と言うと、火葬を済ませた焼骨を骨壷に入れた形で、自宅に安置している状態を指しました。
以前は、手元供養の理由として、「墓を建てるお金がない」という経済的な理由が挙げられることもありました。しかし、数万円の費用とゆうパックによる送付ができる永代供養墓が存在するようになり、そのような消極的な理由で手元供養をする必要はなくなっています。
今では、手元供養専用に作られた美しい骨壷や、遺骨を持ち歩けるペンダント、遺骨を加工したプレートやダイヤモンドなどの商品が多数存在しており、自分が望む形で積極的に手元供養を希望する人が多いことが伺えます。
手元供養は、「離れたくない」という気持ちを表す供養の形として普及し始めているのです。
散骨や樹木葬と組み合わせる例も
手元供養は、単独ではなく、散骨や樹木葬、永代供養墓などと組み合わせる例もみられます。特に、散骨の場合は骨を粉骨化するため遺灰を取り分けやすく、一部を骨壷やペンダントなど入れて手元供養しやすいのです。
また、散骨は祈りの拠り所がないと後で感じやすいと言われますが、手元供養と組み合わせて拠り所を作ることでカバーできます。遺灰を撒くタイプの樹木葬なども相性が良い組み合わせです。
死生観に左右されるので周囲とも相談を
お墓を定義している「墓地埋葬法」では、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」とあります。つまり、自宅の庭に遺骨を埋めるのは違法です。
しかし、遺骨(焼骨・遺灰)を自宅等で保管することは法律に触れませんし、実際に四十九日の納骨まで遺骨を自宅で供養することは、以前から行なわれてきました。
ただ、永続的に遺骨が手元供養の状態にあり、納骨しないことについては、人によって感じ方が異なります。また、骨をプレートやダイヤモンドなどに加工することについても同様です。これは死生観の問題なので、きちんと遺族間で話し合うことが必要です。
また、自分が死んだ時に、故人の遺灰などがきちんと処理されるように遺言などを残しておくことも考えておきましょう。