胃の不調が続く人は、ピロリ菌の検査と除菌を検討しよう
胃潰瘍や十二指腸潰瘍を起こすピロリ菌
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に住みついている菌です。
日本での感染者数は約3,500万人とされています。年代別では、50代以上に感染率が高く60歳以上では70%以上に達します。一方、40代以下の世代では20%以下と低くなっています。年代による差は上水道の普及などが原因とされています。
ピロリ菌が感染していると、胃の粘膜を傷つけるため、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの原因になります。
また、胃がんになる原因の1つとされています。ピロリ菌を除菌すると胃がんの発生が43%以下に抑えられるという調査結果もあります。
除菌の前に2つの関門
ピロリ菌は、3種類の薬を飲むことで除菌できます。
しかも、2013年からは健康保険の適用範囲に「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」が加わり、ピロリ菌による慢性胃炎という診断が下れば、3割負担で除菌療法が受けられることになりました。
除菌療法を受けるためには、2つの条件があります。
- 検査により、ピロリ菌の感染が確認されていること
- 胃の内視鏡検査を受け、慢性胃炎などの症状が確認されていること
この2つの検査の結果が出てから、初めて除菌に取り掛かれます。
実際には、下記のような経路をたどります。
- 人間ドックのレントゲン検査で胃潰瘍の疑いで要再検査指示を受ける、または胃痛などでかかりつけ医を受診し内視鏡検査(胃カメラ)を指示される→紹介先の病院で内視鏡検査を受診→慢性胃炎と診断→血液検査などでピロリ菌の抗体を確認→除菌
指定の薬を1週間飲み続ける
ピロリ菌の除菌は、3種類の飲み薬を朝夕の2回、1週間飲み続けるだけです。
薬のうち1つは胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬という胃薬、あとの2つは抗生物質です。
写真の「ランサップ400」のように、3つの薬を飲み忘れたり分量を間違えたりしにくいようにパッケージされた製品も用意されています。
また、抗生物質を飲み続けるので、副作用についても医師から説明があります。主な副作用として、軟便、下痢、味覚異常などが挙げられています。さらに重い症状が表われた場合は、すぐに医師に連絡するよう指示されます。
薬を飲み忘れたり、途中で飲むのを止めると、薬が効きにくい耐性菌が生まれる原因となります。ともかく、忘れずに1週間飲み続けることが重要です。
4週間以上あとに検査
除菌療法が終わったあとで、4週間以上間を空けてから、ピロリ菌の生き残りをチェックします。
この際は、確度の高い「尿素呼気試験」という、吐いた息を紙袋に吹き込む試験が行なわれることが多く、内視鏡検査や採血などは行なわれません。
この検査の結果、ピロリ菌がいないことが確認できれば除菌療法は終了です。1次除菌の成功率は78.8%とされています。
ピロリ菌が残っていた場合は、薬の処方を変えて2次除菌を行ないます。2次治療の成功率は91.0%とされています。
通院3回、費用は7,500円前後
除菌治療の実例では、通院が3回で診察費と検査費を含めて5,000円前後、処方薬が2,500円前後となっています。保険診療の対象となったために、自己負担分は7,500円前後で収まっています。医療機関や処方薬によって異なりますが、費用的な負担は軽いと言って良いでしょう。
ピロリ菌の除菌は、胃炎の治療だけではなく、胃がんのリスクを減らすために有効な手段です。
慢性的な胃の不調をかかえていらっしゃる方は、一度、消化器内科を受診し、内視鏡検査とピロリ菌の感染検査を受けましょう。