就業中のケガであればアルバイトでも対象となる「労災保険」

[2015/9/30 01:45]

個人で加入していなくても給付の対象

いったん定年を迎えたシニアが再雇用されて働く際は、パートやアルバイトという弱い立場になりがちです。

また、そういう立場で働いた経験が少ないため、自分が利用できる制度を、よく知らないために利用できていない例を見かけます。

その1つが「労災保険(労災)」です。この保険は、通勤中や勤務中の災害によるケガや病気を対象にしており、たとえアルバイトとして雇用された初日であっても医療費をカバーしてくれる強力な制度です。

万が一の勤務中の事故に備えて、その存在を覚えておきましょう。

業務上や通勤中の災害を保障

労災が対象としているのは、業務上の災害および通勤中の災害による、労働者のケガや病気です。この場合の労働者は、正社員だけではく、契約社員やアルバイトも含みます。

本来、業務中の災害による障害は、会社(使用者)に保障の義務がありますが、その保障が確実に実施されるために労災という制度が用意されています。加入は会社単位で行なわれ、保険料も全額会社が支払っています。

ごく限られた例外、たとえば、個人経営の農業、水産業で労働者数5人未満の場合、個人経営の林業で労働者を常時には使用しない場合を除き、すべての会社は労災に加入する義務があります。

また、契約は会社(正確には事業場)単位で行なわれているため、そこで働いている従業員は雇用の形態に関わらず対象となります。つまり、社員ではないアルバイトやパートでも対象となります。

なお、通勤中や勤務中の災害については、労災が社会保険よりも優先してカバーすることになっています。

自己負担なしで治療が受けられる

労災で用意されている給付には、たくさんの種類がありますが、ここでは主なものだけを紹介します。

療養給付
労災対象の傷病について、医療費を負担してくれます。全額負担してもらえるので、無料で治療が受けられます。
休業給付
労災対象の傷病によって働けず、賃金が得られない日が4日以上あると支給されます。金額は事故の直前3カ月に給付された給与の80%です。
障害給付
労災対象の傷病によって障害が残った場合に、障害の程度に応じて給付されます。
遺族給付
労災対象の災害で、死亡した場合に給付されます。

請求の方法

労災の届け出先は「労働基準監督署」です。

届け出を行なうのは、被災した労働者本人またはその遺族ですが、提出書類には会社(事業主)による証明が必要となります。労災対象であることを会社側が認めない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。

また、最近では「雇用」ではなく、「業務委託」の形で業務に従事している場合があります。この場合、労災の対象外ですが、実態が雇用であると認められれば労災対象となることもあります。労働基準監督署に相談しましょう。

労災保険は、雇用者側が自分で保険料を負担していないためか、加入している実感が少ないようです。しかし、基本的にはすべての会社が加入している保険です。勤務中の事故災害をカバーしてくれる強力な制度ですので、働く側の常識として覚えておきましょう。

[シニアガイド編集部]