企業年金制度がないサラリーマンと自営業が年金を増やせる「確定拠出年金」

[2015/10/8 15:03]

年金の積み増しができる制度を利用しよう

年金制度は、3階建ての建物に例えられることがあります。

厚生年金に加入しているサラリーマンの年金は、ベースとなっている1階部分が「国民年金(基礎年金)」、それに積み増す2階部分が「厚生年金」となっています。

1月当たりの年金支給額は、基礎年金が67,017円、厚生年金が104,092円です。両方合わせて171,109円です。

この金額をさらに増やすために加入する“3階部分”の制度は、以前は「厚生年金基金」が主力でした。しかし、運用実績の悪化から厚生年金基金制度が縮小されてしまい、他の制度への移行が進んでいます。

現時点では、大手企業は「確定給付年金」、中規模の企業は「確定拠出年金(企業型)」、それ以外の企業は「確定拠出年金(個人型)」が用意されていることが多いようです。

しかし、確定給付年金と確定給付年金(企業型)は、あなたが勤務している企業が運営していなければ加入できません。つまり、入りたいと思っても、会社が用意していなければ入れない制度です。

それに対して「確定拠出年金(個人型)」は、自分の意志だけで加入することができます。

なお、企業年金が用意されている場合は、確定給付年金(個人型)には加入できません。企業年金を利用しましょう。

企業年金のないサラリーマンと自営業者が対象

確定拠出年金(個人型)に加入できるのは、企業年金が実施されていない厚生年金の被保険者(2号被保険者)、自営業などで国民年金に加入している1号被保険者です。

専業主婦などの3号被保険者と、公務員などの共済加入者は対象となっていません。

サラリーマンの方は、確定拠出年金の申し込みの前に、自社の総務部門に「確定拠出年金(個人型)に加入したいので、やっている人はいませんか」と聞いてみましょう。

確定拠出年金(個人型)に加入する場合、加入資格や天引きなどでいろいろな書類を会社に用意してもらう必要があります。いずれにしても総務部門とはお付き合いすることになりますから、最初から相談しておくと良いでしょう。

自営業の場合は、口座振替を利用します。

確定拠出年金(個人型)の毎月の拠出額(掛金)は、サラリーマンの場合、5,000円~23,000円の範囲で1,000円単位で指定できます。自営業の場合、年金の2階部分も含むので上限が68,000円と大きくなります。

確定拠出年金(個人型)の拠出額(掛金)は、全額「小規模企業共済等掛金控除」に該当します。つまり、税金がかかりません。自営業の場合、最大で816,000円が控除できるので節税策としても有効です。

自分で運用方針を指図できる

確定拠出年金では、「拠出」の金額は確定していますが、その資金をどのように運用するかは、加入者本人が「指図」します。運用の方針や市場の変化によって、給付される年金額が変化します。

加入者は、定期預金、国内/国外の株式投資、国内/国外の債券投資などの用意されている金融商品を組み合わせて、オンラインで自分の資金運用を指図します。

株式投資の場合は、特定銘柄への投資ではなく、投資信託やファンドなどへの投資となります。また、ある商品から他の商品への預け替えは、指図してから反映されるまで数日かかります。もともと、長期的な投資をめざす制度なので、短期的な商品を入れ替えはなじみません。

金融商品としては、東証株価指数(TOPIX)などの株価指標に合わせたインデックスファンドや、海外債権などが多く選ばれます。同じようなファンドでも、商品によって手数料率が異なりますので、そこにも注目しましょう。

もちろん、元本割れのリスクを嫌って、全額を定期預金にするという選択もあります。

確定拠出年金の利点は、運用期間中の運用益にも課税されないことです。運用益をそのまま再投資できるので、お金を増やしやすくなっています。

なお、口座の管理料として、年間に1,300円程度がかかります。

分割でも一括でも受け取れる

確定拠出年金は基本的には60歳から受け取れます。分割して5年以上の期間に渡って毎月受け取ることも、全額を一度に受け取ることもできます。

分割した場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となるので、税金はかなり優遇されます。勤続年数や金額にもよりますが、税金がかからない場合も多いでしょう。

なお、確定拠出年金への拠出期間が10年以下の場合は、60歳から受け取れず、支給年齢が繰り下げられます。一例として拠出期間が2年未満の場合は65歳からとなります。

また、60歳になる以前でも、加入者が高度障がい者になった場合は「障害給付金」、死亡した場合は「死亡一時金」として口座の残高が給付されます。

掛金、運用、受給のすべての面で優遇

確定拠出年金は、掛金、運用益の両方に税金がかかりません。また、受給時も多くの場合は税金がかかりません。

また、特に理由がないかぎり、掛金が給与から天引きされるために貯めやすい制度です。

さらに、運用方針の指図によって、支給額が左右されるという特徴がありますので、自分の運用方針を反映することができます。

資金の運用を自分で指図することで、難しいというイメージのある確定拠出年金ですが、どうしても指図が面倒で、リスクを避けたいなら定期預金にしてしまうこともできます。

税金面での優遇というメリットを生かして、年金の2階建て3階建て部分として活用しましょう。

なお、次の国会では「確定拠出年金法改正案」が審議される見込みです。この法案が成立すると、2017年からは、確定拠出年金に3号被保険者や公務員、企業年金のある企業の従業員なども加入できるようになります。また、制度の簡易化なども盛り込まれています。次回の国会での審議が注目されます。

[シニアガイド編集部]