日本の「少子高齢化」のレベルを元データで確認してみよう

[2015/10/9 12:43]

「少子高齢化」を元データで確認する

「日本の少子高齢化を受けて」という言葉が、まるで枕詞のようにニュースやブログの先頭で語られています。

では、実際に10年後や20年後にどうなっているのかというのも、ニュースでは流れていたような気がするものの、きちんとしたデータでは読んだ覚えがありません。

いわゆる「少子高齢化」についてのデータの大元である「国立社会保障・人口問題研究所」の報告書を改めて読んでみました。

国立社会保障・人口問題研究所のデータが大元

国立社会保障・人口問題研究所は、70年以上前に厚生省人口問題研究所として設立され、将来人口推計を公表してきた機関です。

国の政策の基本データとして人口を扱う場合、確定した過去データについては総務省の国税調査、未来を推定したデータについては、ここの「日本の将来推計人口」を使用するのが基本です。

たとえば、内閣府が公開している「高齢社会白書」でも、人口推移については、この2つのデータを使用しています。将来の人口推移についての基本となるデータと言ってよいでしょう。

国立社会保障・人口問題研究所が公開している「日本の将来推計人口」の最新版は、「平成24年1月推計」です。

この推計では、この時点で最新の2010年の国勢調査データを元として、未来を推計しています。したがって、現在のデータとしては2010年時点の数字が出ています。

以下、推計の理論的な部分は抜きにして、結果の数字だけを抜き出します。推計には低位/中位/高位の3段階があるますが、よく使われる中位を中心に記述します。年の表記は西暦で統一します。

だいたい30年後に人口が1億人を割る

2010年時点での人口は1億2,806万人です。

出生率が中位とした場合の推計では、人口は2030年の1億1,662万人を経て、2048年には1億人を割って9,913万人となり、2060年には8,674万人としています。

出生率を高位や、低位として推計すると、人口が1億人を割る時期がずれますが、いずれにしても30~40年後には1億人を割り込みます。

総人口の推計。出生率の違いに関わらず2060年には1億人を割り込んでいます。出典:国立社会保障・人口問題研究所

生産人口は4割減る

15~64歳の人口を「生産人口」と言います。働いてお金を稼いでいる現役世代と考えて良いでしょう。

生産人口は、2010年には8,173万人でした。2013年、2027年、2051年にはそれぞれ8,000万人、7,000万人、5,000万人を割り、2060年には4,418万人となります。50年で4割以上減る計算です。

また、14歳以下の「年少人口」についても、2015年に1,500万人台へと減少し、2046年には1,000万人を割り、2060年には791万人となります。こちらも4割以上減る計算で、少子化の傾向がはっきりと出ています。

年齢3区分別人口の推移。生産人口が減って、老年人口に近づいていきます。出典:国立社会保障・人口問題研究所

老年人口比率は4割近くになる

65歳以上の老年人口割合を見ると、2010年現在の2,948万人から、2012年に3,000万人を上回り、2020年には3,612万人へと増加します。

第二次ベビーブーム世代(1971年~1974年生まれ)が老年人口に入った後の2042年に3,878万人でピークとなります。その後は減少に転じて2060年には3,464万人となります。

老年人口については、全人口に占める比率で見たほうが、問題がわかりやすいでしょう。

65歳以上の老年人口割合を見ると、2010年現在の23.0%から、2013年には25.1~2%で4人に1人を上回ります。2035年に33.4%で3人に1人を上回り、50年後の2060年には39.9%、すなわち2.5人に1人が老年人口となります。

2022年には、現役2人で老年1人を扶養する計算

年金問題でよく引用されるのが、「老年従属人口指数」です。

これは、生産年齢人口100に対する老年人口の比率で、いわゆる「~人で1人の老人を支える」というデータです。

老年従属人口指数は、2010年現在の36.1(働き手2.8人で高齢者1人を扶養)から、2022年に50.2(同2人で1人を扶養)へ上昇し、2060年には78.4(同1.3人で1人を扶養)と推定されています。

人口ピラミッド

各世代の人口を横軸にとったグラフを人口ピラミッドと呼びます。国立社会保障・人口問題研究所では、推計データをもとにした人口ピラミッドのグラフを公開しています。

グラフの形によって、富士山型、ピラミッド形、釣鐘型、壺形などがあります。日本の人口ピラミッドは、少子化の傾向が強い壺形となっています。

ここでは、2015年、2045年、2060年の3つのピラミッドを掲載します。

第1次ベビーブームの「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ)と、第2次ベビーブームの「団塊ジュニア世代」(1971年~1974年生まれ)の、2つのピークの推移に注目してください。

2015年は段階世代が65歳前後、団塊ジュニア世代が45歳前後です。

2045年になると団塊世代が退場し、70歳前後になった団塊ジュニア世代が一番多くなります。

2060年になっても、一番人口が多いのは、その時点で90歳前後になっている団塊ジュニア世代なのです。

2015年の人口ピラミッド出典:国立社会保障・人口問題研究所
2045年の人口ピラミッド出典:国立社会保障・人口問題研究所
2060年の人口ピラミッド出典:国立社会保障・人口問題研究所

自分自身や自分の親の老後をイメージする

今回見たのは、簡易な形の「報告書」ですが、それにしてもなかなか厳しい内容となっています。
たとえば、これから出生率が急上昇したとしても、それが反映されるのはずっと先の話であり、基本的な傾向はすでに生まれている年代別の人口比によって決まっています。

もちろん、国や地方自治体のレベルでも、いろいろな政策は行なわれるでしょうが、頼り過ぎてはいけません。自分や家族を守るためにも、これらの数字と向き合って将来の生活設計をしましょう。

大事なのはこれらの数字を元にして、自分の未来のイメージを持つことです。自分の親の世代や自分自身が、どのような生活を送るのか、どうやって生活を支える糧を得るのか考えておきましょう。

[シニアガイド編集部]