場合によっては年間で10万円以上の差が出る、都内の国民健康保険【訂正版】

[2015/10/9 16:34]

市区町村ごとに異なる国保の保険料

自営業のための国民健康保険(国保)の保険料は、全国一律ではなく、市区町村ごとに規定されています。

ここでは、東京都内の市区町村に保険料について、一般的なモデルを設定して、保険料を計算してみました

意外に保険料の差は大きく、同じモデル家庭であっても、年間の保険料は10万円以上の差が出ました。
【10月9日20時:お詫びと訂正】初出時に、所得から基礎控除の1人当たり33万円を引かない金額で保険料を計算していました。お詫びして訂正させていただきます。

モデル家庭の設定

国保の保険料は、家族の人数や収入、固定資産税がかかる資産の有無を元として計算されます。

ここでは、夫と妻に子供1人の3人の家庭と設定しましょう。

年齢は夫が41歳で、妻は38歳とします。夫は介護保険の対象となる年齢です。

所得は夫が250万円、妻が35万円で、合計285万円とします。

夫の収入は500万円前後で、経費を引いた後の所得が250万円という計算です。妻は税務上の配偶者控除を外れないように100万円に抑えて働いており、給与控除で65万円引かれた所得額です。

資産は2LDKのマンションで固定資産税が年間で15万円とします。

保険料の要素

国保の保険料は、次の要素で決まります。

  • 【所得割】世帯加入者の所得に応じて計算(所得額×料(税)率)
  • 【資産割】世帯加入者の資産に応じて計算(固定資産税額×料(税)率)
  • 【均等割】世帯加入者の人数に応じて計算(加入者数×均等割額)
  • 【平等割】一世帯あたりいくらと計算

この4つの項目を、それぞれ基礎賦課、後期高齢者支援金、介護保険の3つの分野について計算します。

モデル家族の場合、所得額は285万円(夫のみは250万円)ですが、1人当たり33万円の基礎控除が引かれますので、夫婦2人分のときは219万円、夫のみのときは217万円となります。

固定資産税額が15万円、加入者が3人、介護保険対象者が1人となります。

東京都23区は年間保険料が40万円台

わかりやすいように、順を追って計算していきますが、面倒な人は次のセクションまで飛ばしてください。

まず、基礎賦課分から計算していきます。
計算式は、「所得額×所得割利率+固定資産税額×資産割利率+均等割額×人数+平等割額」です。

東京都の23区の場合、介護保険の所得割を除き、税率などは全区で共通となっています。また、資産割と平等割はありません。

基礎賦課分は、219万円×6.45%+33,900円×3人ですから、242,955円となります。
後期高齢者分が、219万円×1.98%+10,800円×3人ですから、75,762円となります。

介護保険分の所得割は、区によって差があります。

一番安い千代田区は、217万円×0.70%+14,700円×1人ですから、29,890円となります。
一番高い葛飾区は、217万円×1.76%+14,700円×1人ですから、52,892円となります。

介護保険に加入している夫の所得217万円に掛ける利率が1.06%違いますから、約2万円強の差となります。

というわけで、国民保険の年間保険料は、千代田区在住の場合348,607円、葛飾区在住の場合371,609円となります。

千代田区以外で、安い区には中央区、港区、渋谷区があります。葛飾区以外で、高い区は墨田区、荒川区、板橋区が挙げられます。

高いのは立川市、安いのは町田市

モデル家族の国保の年間保険料は、東京23区の場合、一番安い千代田区で348,607円、葛飾区在住の場合371,609円という計算になりました。

次に市町村を見ていきましょう。

都下の市部では、立川市が高くなっています。モデル家庭の年間保険料は345,515円で、23区内並みです。

安い方では、町田市が247,863円と、立川市と比べると年間で10万円近く差があります。23区で一番高い葛飾区と比べれば12万円以上差があります。

他の市は30万円前後のところが多くなっています。主なところでは、武蔵野市が304,340円、国分寺市が282,503円、多摩市が259,080円、清瀬市が325,393円、あきる野市が291,126円でした。

まとめると、国民健康保険の保険料は、23区内は35万円前後、都下では30万円前後が中心でした。ちなみ、島しょ部である大島町は323,210円で、都下の市部とあまり変わりません。

家族構成と固定資産の有無で違いが出る

国保の保険料率は、23区内はだいたい統一されているのですが、市町村部はそれぞれの自治体ごとに考え方の差が大きく単純に比較できません。

23区と都下のいくつかの市は、世帯単位の所得に重きをおいています。つまり「所得割」の掛率が高く、代わりに固定資産にかかる「資産割」と、家庭単位でかかる「平等割」がありません。

例えば、所得が同じであれば、住居が持ち家でも賃貸でも、同じ保険料になります。持ち家であっても収入が低くなれば、国保の保険料が安くなりますから、定年退職後に分譲マンションに住む場合は有利です。

一方、町田市には、世帯単位で一定の金額がかかる「平等割」があります。「平等割」のある自治体では、家族の人数が要素として入ってきます。今回のモデルのように家庭の人数が多いと、1人当たりの負担が小さくなります。一方、一人暮らしの場合は、他の市より高くなる場合があります。

さらに、あきる野市、日野市、狛江市、武蔵村山市、東大和市、清瀬市、小平市では、「平等割」に「資産割」が加わります。島しょ部の自治体も同様です。

「資産割」は固定資産税を元に計算されますから、土地付き一戸建てや分譲マンションを持っていると、保険料が高くなります。どういう住居に住んでいるかが、毎年の保険料に影響するのです。

一方、所得割の率が低いので、固定資産を持たず借家住まいをしていれば、他の自治体よりも保険料が安くなります。借家住まいで可処分所得を増やしてマイペースで暮らしたいという人には有利です。

どこに住むかということは、国民保険の保険料だけで決められることではありません。それでも、ご自分でお住まいになっている自治体が、どういう傾向で運用されており、それが自分のライフスタイルに合致しているかどうかを知っておくのはムダではないでしょう。

[シニアガイド編集部]