万一の時に、葬式を出して部屋を片付けてくれる「あんしん居住制度」

[2015/10/19 04:06]

シニアのための支援事業

東京都の外郭団体である公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターは、都内の建築に関わる多数の事業を行なっています。

その一端である高齢者支援事業に「あんしん居住制度」という、シニアの暮らしをバックアップするサービスがあります。

「あんしん居住制度」は、東京都(島しょは除く)に居住または居住予定の人を対象としています。「見守り」「葬儀の実施」「残存家財の片付け」の3つのサービスがセットになっており、シニアや家族の要望に応じて、組み合わせることができます。

サービスについて、この分野で実績のあるホームネットと業務提携しています。以下、料金は税込です。

警報装置による「見守りサービス」

見守りサービスは、シニアの日常生活を見守り、万一の際に係員が駆けつけるサービスです。契約は1年単位で、料金は年間54,780円(事務手数料込)です。

まず、シニアの住居に「生活リズムセンサー」「緊急警報装置」「携帯用ペンダント」の3つを設置します。これらの機器から緊急の連絡が入ると、受信センターからの指示で係員がかけつけて安否を確認します。住居の鍵は、部屋の設置する暗証番号付きのキーボックスから鍵を取り出して解錠します。

「生活リズムセンサー」は、よく通る場所の天井や壁などに設置し、一定時間反応がないと受信センターに通報します。

「緊急警報装置」は固定電話のそばに設置します。「緊急ボタン」を備えており、ボタンを押すと受信センターに通報します。

「携帯用ペンダント」は、室内にいるときに首から下げておくペンダントです。緊急ボタンを押すと通報します。

通知を受けて葬儀から納骨まで代行

契約者が死亡した場合に、必要な手続きを代行して、直葬を行なうサービスです。

死亡連絡を受けると、死亡診断書の受け取り、火葬(埋葬)許可書の交付申請、遺体の搬送、火葬、指定連絡先へ遺骨引き渡しを行ないます。

葬儀に関わる業務は、社会福祉法人 東京福祉会が行ないます。行なわれる葬儀は直葬なので通夜や告別式は行なわれません。それらが必要な場合は、東京福祉会に生前予約して別料金で行なうこともできます。

また、遺骨を引き取る指定連絡先がない場合は、無料で東京福祉会の納骨堂に5年間保管した後に、慰霊堂に合祀されます。

料金は1名分が362,500円で、預かり金として契約時に渡します。申込時と5年毎に54,000円の事務手数料がかかります。途中解約の場合、事務手数料以外は全額返金されます。

前払いの預り金で遺品を処分

契約者の死亡連絡を受けて、住宅内に残っていた家財の片付けを行なうサービスです。

持ち家の場合は指定連絡先の登録が必ず必要です。死亡連絡を受けると、まず指定連絡先へ通知されます。

指定連絡先の人と家財の状況を確認し、相談の上で片付けの実施日を決めます。片付けてほしくない家財や貴重品については、指定連絡先の人が実施日までに引き取ります。実施日には、住宅内に残っていたすべての家財が片付けられます。

賃貸住宅の場合は、指定連絡先がなくても良く、管理会社に確認の上で片付けが行なわれます。

料金は、面積に応じた統一価格で、3段階になっています。60平方mまでは308,500円、60平方m以上80平方m未満は411,400円、80平方m以上100平方m未満は514,200円です。100平方m以上は別途相談となっています。荷物の量によって値段が変わることはありませんし、追加料金もかかりません。

料金は契約時に預り金として渡します。申込時と5年毎に54,000円の事務手数料がかかります。途中解約の場合は、事務手数料以外は全額返金されます。

賃貸用に月払い契約もあり

「葬儀の実施」と「残存家財の片付け」は魅力的なサービスですが、預り金が必要なため、契約時の初期費用が大きくなります。そのため、「葬儀の実施」と「残存家財の片付け」とがセットになった、月払い契約が用意されました。

これは、賃貸住宅の居住者を対象にしたもので、月払いとすることで初期費用を抑えています。

ただし、月払い契約の場合、次の条件があります。契約時点で79歳以下、都内の賃貸住宅に居住または居住予定、入院中でないこと、介護が必要な状態でないこと、過去2年以内に疾病による5日以上の入院をしていないことです。

契約は1年単位で、料金は月に3,980円です。1年毎に10,800円の事務手数料が必要です。料金は1人分なので、夫婦2人暮らしの場合は、2人分の料金が必要となります。

「孤独死」などの不安を解消

シニアの一人暮らしでは、万一の際に、誰にも見つからずに死去することに対する不安があります。また、その際に、自分の葬儀や家財の処分なども不安要素です。

「あんしん居住制度」の3つのサービスを利用することで、そういう不安が、ある程度解消されます。一人暮らしのシニアには、魅力的なサービスです。

見守りサービスは、23区内では区の事業として廉価に用意されているところが増えていますが、葬儀や遺品処分まで踏み込んでいることろに価値があります。

ただし、初期費用として大きな金額が必要なところは弱みでしょう。それでも、一般的な葬儀や遺品処分に比べ、良心的な価格設定ではありますし、一定の金額を預り金として預けるシステムで、追加料金などが発生しないのは利点です。東京都の外郭団体という公共性の高い組織が引受先であることも安心材料でしょう。

一人暮らしに不安を感じ始めたシニアとシニアの家族は検討する価値があるサービスと言えるでしょう。

[シニアガイド編集部]