子や孫のために知っておきたい「ひとり親の支援」

[2015/11/5 00:00]

ひとり親となった息子や娘との同居が増えている

年金生活をされているお年寄りの家に、離婚した子が孫を連れて同居している例を、よく見かけるようになりました。離婚件数が多い世相の反映なのでしょう。

離婚後の子の生活のセーフティネットとして、親の家が役立っているのは、とても良いことです。しかし、意図していなかった同居生活が長期化すると、資金や体力の面で、親自身の老後の生活設計にも影響してきます。

子の側にしても、資金や制度の援助があれば、新しい生活に立ち向かうきっかけが作れます。しかし、離婚の当事者である子は、すぐに気持ちを切り替えることができず、そういう支援情報まで調査することは難しいでしょう。

とくに、孫がいて、子が「ひとり親」状態のときは、手厚い公的支援があります。親の時代にはなかった制度もありますし、男親を対象とした制度も増えています。

お子さんと一緒にチェックして、新しい展望を開くための参考にしてください。

国による、ひとり親の支援制度

ひとり親の支援は、「国」と「地方自治体」のレベルで、それぞれ用意されています。

まず、国の制度から見てみましょう。ひとり親用ではない手当も参考のために掲載しています。

「児童扶養手当」(国)
18歳未満の子供を養育しているひとり親を対象とした手当です。子供1人の場合、月額9,780円~41,430円で、所得に応じて変わります。2人目は5,000円が加算され、3人目以降1人につき3,000円が加算されます。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/100526-1.html
【参考】「児童手当」(国)
こちらはひとり親に限らず、15歳未満の子供を持つ親に支給される手当です。よく「児童扶養手当」と混同されるので注意してください。子供1人につき、年齢に応じて月額で1万円~1万5千円が支給されます。所得制限があり、年収が960万円以上の場合は、1人当たり5,000円になります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jidouteate/
【参考】特別児童扶養手当(国)/特別児童扶養手当(国)
障害を持つ児童を持つ親のための手当です。詳細はリンク先をご覧ください。
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/kosodateteate_hyo.html

地方自治体による、ひとり親の支援制度

地方自治体も、独自のひとり親支援策を用意しています。ここでは、東京都の例を挙げます。各制度は、都内に住所があることを前提としています。

「児童育成手当」(都)
18歳未満の子供を持つ、ひとり親などに支給される手当です。子供1人につき「育成手当」として月に13,500円が支給されます。子が障がい者の場合は「障害手当」となり、子供1人につき月に15,500円が支給されます。扶養親族の数や子供の数に応じて所得制限があります。
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/jidoikuseiteate_ikusei.html
都営交通無料パス
児童扶養手当を受給している人か同一世帯の1人に、都営交通の無料パスが発行されます。
http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/other/kanren/fare/free.html
ひとり親家庭等の医療費助成
対象者に「ひとり親医療証」を交付されます。各種医療保険の自己負担分から一部負担金を差し引いた額が助成されます。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/maruoya.html
自立支援教育訓練給付金
母子家庭等の母または父子家庭の父で、児童扶養手当を支給されているなどの条件を満たしている人が対象です。雇用保険制度の教育訓練給付の指定訓練講座など就業に結びつく可能性の高い講座を受講した場合に、支払った費用の20%に相当する額を支給します。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062986.html
高等職業訓練促進給付金
母子家庭等の母または父子家庭の父で、児童扶養手当を支給されているなどの条件を満たしている場合に、自立援助のための高等職業訓練を支援する給付です。対象資格は、看護師、介護福祉士、保育士、理学療法士、作業療法士、保健師、助産師、理容師、美容師です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062986.html
東京都母子及び父子福祉資金
20歳未満の子供を扶養している母子家庭の母又は父子家庭の父等を対象とした資金の貸付けです。貸付が自立に繋がると判断できて、返済計画を立てられる必要があります。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hitorioya_shien/kashitsuke/boshi.html
母子生活支援施設
18歳未満の子供を養育している母子を対象とした支援施設があります。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/php/html/boshi/about.html

お金のことが元で仲が悪くなるのはもったいない

離婚した子と孫が同居しているは、それだけ頼りにされている証でもあり、当面はうれしいことです。しかし、同居が長期化すると、どうしても資金面の問題が出てきます。

親としても、子供に頼らずに暮らせるように立てて来た老後の生活設計に影響が出てくれば、不安になるのは当然でしょう。年齢から言っても、いつまでも子と孫の生活を支え続けるには無理があります。

しかし、せっかくの家族関係なのですから、お金のことで関係が悪化するのはもったいないことです。支援制度を利用して、少しでも不安を解消しながら、徐々に自立を促すように心がけましょう。

親が提供できるのは、お金という「物」だけではありません。情報という「知恵」と、自分がいなくなった後も自立して生活して欲しいという「愛情」も立派な贈り物です。

子が同居を続ける場合でも、再び独立して生活を始める場合でも、よく相談してから判断してください。お互いの立場を思いやりながら、感情的にならないよう、冷静に話し合いを進めましょう。

[シニアガイド編集部]