読書ガイド 辻川覚志 著「老後はひとり暮らしが幸せ」

[2015/11/5 00:00]

家族と同居よりひとり暮らしが幸せ

この本は、60歳以上の方460人のアンケート調査結果をもとに、「高齢期のどのように過ごせば、一番幸せに過ごせるか」というテーマで書かれたものです。

筆者の辻川覚志氏は、大阪府門真市で耳鼻咽喉科を開業するかたわらで、高齢者在宅支援のための門真市医師会「お元気ですかコール」活動に携わっており、日常的に高齢者に接しています。

その活動のなかで、集めた460人のアンケート結果と個別の聞き取りによって、幸せな老後生活の形を探ります。

その結果、辻川先生の予測を裏切り、90歳までのすべての年齢でひとり暮らしの人の方が、家族と同居している人よりも、生活に対する満足度が高いことがわかります。

また、辻川先生は、子供の家への近くへの転居や、老人ホームへの入居などによって、長年自分が暮らしてきた土地を離れた人の満足度が下がることを見出します。

辻川先生は聞き取りを続けていくなかで、「自由に振る舞える生活」「信頼の置ける友」「慣れ親しんだ土地」が、独居を支える条件なのではないかと考えます。

本の後半は、ひとり暮らしをしている高齢者に聞いた暮らしを楽しむための秘訣や、ひとり暮らしのまま最後を迎える場合にどのような準備が必要なのかという、ひとり暮らしを実践するための知識が書かれています。

ひとり暮らしを必要以上に怖がらないで良い

2009年に芸能人の「孤独死」が報じられ、2010年のNHKのドキュメンタリー「無縁社会」が放映されたことで、「ひとり暮らし」について孤独死に直結する生活という否定的なイメージが広まりました。

今でも、地域の人付き合いを奨励し、家族と同居することの幸せを無条件に肯定する声は大きく、ひとり暮らしに対する逆風を感じます。

そういう状況の中で、ひとり暮らしについて自信を失いかけていた人にとって、この本はなによりの味方でしょう。老後のひとり暮らしに対して不安を感じていたり、このままで良いのだろうかという迷いを感じている方に、ぜひ一読をお勧めします。

なお、辻川先生は続編として「ふたり老後もこれで幸せ」を出されています。これは、ひとり暮らしを否定するものではなく、二人暮らしの生活をいかに快適なものに変えていくかという内容です。

こちらは、老後に夫婦だけの二人暮らしが予想される方、すでに二人だけの暮らしで同居人に対する不満を感じている方にお勧めします。

(いずれも水曜社刊、四六判並製 本体価格1,400円)

[シニアガイド編集部]