離婚時に夫の年金を分割しても、妻の年金は月に5万円しか増えない
離婚するときは年金も分割できる
夫婦が離婚をする場合、夫の財産を分与することが認められてます。
年金についても、夫の年金の一部は妻の内助の功によるものであり、離婚時に財産分与として分かつことができるようになっています。
ただし、この制度にはいくつか制限がありますし、実際に分割される金額もあまり大きいものではありません。リアルな数字を見ていきましょう。
年金を分割しても、妻の年金は月に5万円しか増えない
まず、一般的な家庭では、いくら年金が貰えるのかを確認しましょう。
政府による、年金の受給モデルは、一般的な会社員と専業主婦を想定しています。年金額の受給額は月23万3千円です。
23万3千円の年金の内訳は次の通りです。
- 夫の厚生年金 月額約10万1千円
- 夫の国民年金 月額約6万6千円
- 妻の国民年金 月額約6万6千円
このうち、離婚の時に分割されるのは、「夫の厚生年金」だけで、しかも分割する比率は1/2と決められています。正確には、年金の金額を1/2するのではなく厚生年金の加入期間を分割するのですが、わかりやすいようにざっくりと計算しましょう。
すると、約10万円を1/2ずつ分け合うことになるので、次のようになります。
- 夫の厚生年金 月額約5万円
- 夫の国民年金 月額約6万6千円
- 妻の厚生年金 月額約5万円
- 妻の国民年金 月額約6万6千円
つまり、夫婦で23万3千円貰えるところを、離婚すると、夫も妻も約11万6千円ずつ貰うという計算になります。
これだけで、生活を維持するには、ちょっと少ない金額です。妻の立場で見ると、自分の国民年金から月に5万円増えるだけです。
なお、上の例のように、自動的に1/2で分割されるのは、平成20年4月以降に妻が第三号被保険者として登録していた期間に限られます。それ以前の期間については、分割には当事者の合意または裁判所の決定が必要です。
「卒婚」や退職金などからの財産分与も検討しよう
ここまで見てきたように、かなり理想的なモデル家庭であっても、年金分割で増える妻の年金は約5万円です。
実際に増える金額は、もっと少なくなる可能性が高いと言えます。
したがって、離婚時の財産分与は、退職金などの現金や住居などを分割するように交渉した方が実際的でしょう。
また、離婚すると、夫が先立った場合に妻に支給される「遺族年金」はもらえません。また、夫の年金に追加される「加給年金」もなくなります。
男女の平均寿命の差を考慮すると、離婚して年金を分割するよりも、籍は残しておいて別居する、いわゆる「卒婚」にしておいた方が金銭的には有利と考えられます。
ちなみに、2014年の「人口動態調査」によれば、20年以上同居した上で離婚した件数は1年に36,770件もあります。長く一緒に生活していたからと言って離婚されないわけではないということは、早めに夫に伝えておいた方が良いでしょう。
そうすれば、妻の生活上の意見や不満に、少しは耳を傾けてくれるようになるかもしれません。