万一の際に家族が簡単にお金を受け取れる「遺言代用信託」

[2015/11/17 00:01]

年間4万件も売れる人気信託

「遺言代用信託」は、2009年に始まったばかりの信託です。まだ新しいものですが、1年間の新規契約件数が2年連続で4万件を超える人気となっています。

遺言代用信託を一言で言えば、「遺言の代わりに信託銀行と契約を結び、預けたお金を管理してもらうサービス」です。

よく売れている理由は、元本保証で信託手数料がかからないこと、お金の受け取り方が簡単で早ければ即日受け取れること、現金が対象で使い方がわかりやすいこと、などです。

ここでは、一番売れている三菱東京UFJ信託銀行の「ずっと安心信託」を例に、その特徴を見ていきます。

200万円以上を5年以上預ける

遺言代用信託は、契約者本人が持っている現金を信託銀行に信託(預け)ます。

「ずっと安心信託」の場合、信託できる金額は200万円以上3,000万円以下で、1円単位で指定できます。

契約者が預ける現金は、相続される遺産の一部なので、遺産分割協議で問題にならないように、保有する金融資産の1/3までという制限があります。つまり、200万円を信託するためには、600万円以上の金融資産が必要です。

信託期間は5年以上30年以内で、年単位で指定できます。信託期間は後で変更することができません。事前に信託銀行とよく相談しておく必要があります。

3つの使い方が用意されている

遺言代用信託の主な使い方は、次の3つです。

  1. 自分用に、一定の間隔で一定の金額を受け取る。自分用年金のような使い方
  2. 自分が死亡した場合、家族に一時金として支払う。葬祭費用や相続税支払い用現金などに使う
  3. 自分が死亡した場合、家族に一定の間隔で一定の金額で支払う。年金を贈るイメージ

なお、同じ遺言代用信託であっても、家族への支払いのみが対象で、自分が受け取ることはできないものもあります。これができると、手持ちの現金が乏しくなった時に、支払いプランを変更して自分の受取金額を増やすことで対応できます。必ず事前に確認しましょう。

契約者は、3つのプランから支払方法を選びます。1つだけでも良いですし、2つや3つを組み合わせることもできます。

例えば、全体で500万円を信託し、自分用に200万円を割り当てて月に5万円ずつ受け取る、家族の一時金に200万円割り当てて配偶者を受取人に指定する、最後に自分の長男に100万円を割り当てて年に1度10万円ずつ贈る、という細かい指定ができます。

お金を贈ることができるのは「推定相続人」に限定されています。一般的には、配偶者と子供ですが、家族構成によって異なりますので、事前に信託銀行と相談が必要です。

お金の受け取り間隔は、毎月、隔月、3カ月に1回、4カ月に1回、半年に1回、1年に1回から選択できます。公的年金の払込が2カ月に1回なので、それが無い月に隔月の支払いを指定するなどの工夫もできます。

万一の際に、家族がお金を受け取りやすい

遺言代用信託では、契約者本人が死亡した場合に、家族が簡単に一時金を受け取れるのが特徴です。これがあるので、自分の葬祭費を準備する方法として、使いやすいのです。

必要な書類は、「契約者の死亡診断書、または除籍謄本」「信託の通帳」「受取人の印鑑証明書など本人確認書類」「受取人の届印」です。

さらに、受取人が事前に三菱東京UFJ信託銀行に口座を作っておけば、「届印」だけで受け取れます。

家族にお金を残す場合は、他の選択肢も検討しよう

「ずっと安心信託」は、自分用年金、家族用一時金、家族用年金の3つの使い方が用意されており、自由に組み合わせることができます。手元に現金が必要というハードルがありますが、応用範囲の広い便利な商品と言えるでしょう。

ただし、遺言代用信託で家族に贈るお金は相続税の課税対象となりますから、相続税の節税効果はありません。

また、贈るお金の金額は決められますが、お金の使い方に制限を付けることはできません。

現在、期間限定の商品として、相続税対策や用途の制限が可能な「教育資金贈与信託」や「結婚・子育て支援信託」が用意されています。子や孫への贈与が主目的であれば、それらの商品も検討しましょう。

[シニアガイド編集部]