読書ガイド 「週刊東洋経済 2015年 11/21号『介護離職』」

[2015/11/18 06:57]

11月16日に発売された「週刊東洋経済」は、「介護離職」というテーマを第一特集として32ページを割いています。

9月に“アベノミクス新第三の矢”として打ち出された「介護離職ゼロ」という方針を受けての特集です。

これは厚生労働省が打ち出している「仕事と介護の両立」という施策に沿ったもので、介護がきっかけになって、定職から離れてしまう事態を避けようというものです。

まず、「ルポ 私と介護離職」という7ページに渡る介護離職の実例が圧巻です。実名入りの5件のケースそれぞれに、判断を迫られたターニングポイントがあり、そこでの判断が追い込まれた状態につながることがよく分かります。

1件1件のボリュームがやや物足りず、どうしてそういう判断になるのかとまどう場面もあるのですが、とりあえず読者に覚悟を迫るという点で、非常に有効な記事です。

しかし、この特集でとくに有益なのは、「3分でわかる! あなたの離職危機」という2ページの記事や、「介護7つの鉄則」という4ページの地味な記事で、実際の介護に立ち向かう上での有効な手がかりが良くまとめられています。

実際に介護にあたっていると、「私がやらなけば」という意識で抱え込んでしまいがちなのですが、実は探してみれば、相談できる場所も、使用できる施設もあるのです。「情報を探してサービスを利用する」という側面に立った、このような記事にもう少しボリュームが割かれていると、なお良かったでしょう。

また、特集全体に言えることですが、読者を「介護をする側」としてとらえています。逆に、読者も「介護をされる側」に立つ可能性があるという記事が1本あると良かったでしょう。この雑誌の読者の年代であれば、自らが倒れて、息子や娘が若年介護者になる可能性があるのです。

特集後半は、「変わる企業の介護支援」「介護休業最新ランキング」など、企業側に視点を置いた記事が並びます。このあたりは企業の定期購読が多い週刊経済誌らしい記事といえるでしょう。

いくつか惜しい点はありますが、経済誌の「介護」特集としてはよくできた記事で、ご一読をお勧めします。「東洋経済オンライン」にルポのダイジェスト記事もありますので、興味を持たれた方は、そちらもご覧ください。

[シニアガイド編集部]