60代前半男性の手取りは約25万円、女性は11.9万円ー電通総研調査
60代のリアルな労働状況
電通総研が7月に発表した、シニアの労働環境に関する調査結果に、リアルな60代の労働環境が表れています。
発表からやや時間が経っていますが、しっかりした内容のレポートなので紹介します。
調査対象は、50代後半に就労経験のある60代男女2,600名です。男女同数で、首都圏/関西圏/中京圏の3つのエリアから、地域ごとに重み付けをしてサンプルを取っています。
レポートは男女を対比しながらまとめているのですが、男女別に回答を追っていくと、その働き方の流れがはっきりするので、ここでは男性と女性のストーリーを別々に追っていきます。
ご興味の有る方は、ぜひ元のレポートもご参照ください。リリースページからリンクされているPDFファイルがフルバージョンです。
男性は定年後も同じ会社で働いている人が多い
まず、男性の働き方の流れを追ってみましょう。
「定年退職」の体験者は約8割でした。定年退職年齢は60歳~61歳です。
定年退職者の7割以上が働き続けています。そのうちの過半数は、再雇用契約により同じ会社かグループ会社で働いています。
働いている60代前半男性の雇用形態は「正社員」が4割強と多く、「契約社員・嘱託社員」が3割、「アルバイト・パート」が1割です。
しかし、60代後半になると、「正社員」と「契約社員・嘱託社員」は、ともに2割台に減ります。そして「アルバイト・パート」が3割以上になります。
たぶん、定年退職時に在籍していた会社の再雇用契約が、65歳前後で打ち切られて雇用形態が変わるのでしょう。
それを裏付けるように、「無職」と答えた人は、60代前半では3割ですが、60代後半では6割を超えます。再雇用契約が切れた時点で、働くのを止める男性が多いのでしょう。
働いている人の7割以上が「現在の仕事に満足している」と回答しています。
満足している理由としては、「自分の経験が生かせている」「働けるだけで満足」「自分の能力が生かせている」の順となっています。
また、定年前に抱いていたイメージと、定年後の実際の仕事とにギャップを感じるかという回答には、5割以上がイメージ通りと回答しています。
イメージと実際が異なっている点としては、「休みがとりやすい」「手取り収入が少ない」の2つが挙げられています。
なお、手取り収入の平均値は、60代前半が24.9万円、60代後半が18.8万円でした。
女性はパート・アルバイトが中心
一方、定年退職を経験している女性は約4割でした。アンケートには退職年齢がないのですが、結婚生活のために定年前に退職した人が多いと思われます。
定年退職年齢は60~61歳で男性と同じです。さすがに、退職年齢に男女差をつけている会社はなくなったようです。
60代前半の女性は、「働いている」が5割強、専業主婦が3割強、無職が1割強です。60代後半になると、「働いている」は3割弱に減ります。専業主婦が5割に、無職が2割強に増えます。
働いている人の雇用形態は「アルバイト・パート」が7割弱で一番多く、社員は2割弱、契約社員は1割に留まっています。これは、60代前半も後半もほとんど変わりません。
平均手取り収入は、60代前半で11.9万円、60代後半で11.1万円です。やはり、雇用形態の違いを反映して、男性の平均よりも低くなっています。
なお、働いている人の7割以上が「現在の仕事に満足している」と回答している点や、満足している理由が「自分の経験が生かせている」「働けるだけで満足」「自分の能力が生かせている」の順であることは、男性と変わりません。
さらに、定年前に抱いていたイメージと、定年後の実際の仕事とにギャップを感じるかという回答には、7割以上がイメージ通りと回答しています。これは男性よりも多い割合です。
つまり、60代の雇用形態はアルバイト・パート中心の働き方であろうと、多くの人が予想しており、その上で、一定の満足は感じているというわけです。
こうして男女それぞれの働き方を追ってみると、現在の60代では、まだ働き方の男女差が大きいことが分かります。実際の収入面でも格差があります。
働けきたくても働けない人も多い
60代の男女の3割強は、働きたいと思っていても働けていません。
働きたいと思っていても働けない人は、60代前半の男性では15.1%ですが、60代後半になると42.2%に増えます。女性の場合は60代前半でも31.4%と多く、60代後半では54.1%と過半数を超えます。
やはり、働ける場所を見つけるのが一番大変な仕事のようです。
働き続けるのに必要なものは「お金」と「体力」と「気力」
最後に「60歳以降も働き続けるために必要なこと」という質問では、次の3つが上位に入りました。
- 給与が下がってもゆとりをもって暮らせるための資金・資産
- 今以上に元気な体力
- 今以上に強い気力
つまり、60代になって働き続けるためには、「お金」と「体力」と「気力」が必要ということです。退職年齢前の方は、いまのうちから準備を進めましょう。