別の区の老人ホームに入ったのに、前に住んでいた区から介護保険の請求が来る理由
別の区の老人ホームに引っ越したのに、以前の区から請求が来る
先日、知り合いの方から、次のような相談を受けました。
「去年、80歳の母が板橋区の老人ホームに入りました。住所の転出などの手続きはきちんとしたつもりなのですが、介護保険の納付書や領収証が、入所する前に住んでいた練馬区から引き続き届きます。何か手続きに漏れがあるのでしょうか」
介護保険の保険料は、多くの場合、年金から天引きされる「特別徴収」なので、どこの区へ納めているかということはあまり気にならないのですが、この方の場合、お母さまの年金額が少なくて、納付書が送られてくる「普通徴収」だったので、気がついたそうです。
これは手続きのミスではなく、介護保険の「住所地特例」という制度によるものです。住宅地特例は、他の保険制度にもありますが、ここでは介護保険に絞って説明します。
介護保険は、その住所の市区町村が原則だが...。
介護保険の被保険者は、原則として居住している市区町村の介護保険に加入します。
しかし、老人ホームなどの施設に入っている被保険者全員を、施設がある市区町村の介護保険に入れると、施設がたくさん建設されている市区町村の負担が大きくなります。
このような状態を解消するために設けられたのが「住所地特例」という制度です。
具体的には、入所した施設が「住所地特例対象施設」に該当する場合、施設がある区ではなく、以前住んでいた住所の区の介護保険に入ったままの状態となります。もちろん、保険料を納付するだけではなく、支給も以前の区の介護保険から受けます。
大半の老人ホームが「住所地特例」の対象
住宅地特例の対象となる「住所地特例対象施設」は、次のものがあります。
- 介護保険施設
- 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設
- 特定施設
- 有料老人ホーム、軽費老人ホーム、大半のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、養護老人ホーム
つまり、俗に「老人ホーム」と呼ばれる施設のほとんどが該当します。この方の場合も入居したのがケアハウス(軽費老人ホーム)だったので、「住所地特例」に該当していたわけです。
ちなみに、自己と生計を一にする親族の介護保険料は、社会保険料控除の対象になります。
1月に届く介護保険料の納付を証明する書類は、特別徴収の場合は「源泉徴収票」、普通徴収の場合は「所得申告参考資料」です。届いたら忘れずに確定申告しましょう、少しですが税金が戻ってきます。