全日本仏教会が「Amazonのお坊さん便」批判を公開

[2016/1/8 00:02]

クリスマスイブに公開された「お坊さん便」批判

「お坊さん便」をめぐり、日本仏教会が批判文書を公開したため、Amazonのコメント欄やtwitterで議論が続いており、年明けになってから、マスコミの報道も加わって加速しています。

ことの起こりは、昨年12月8日に株式会社みんれびが、自社の僧侶派遣サービス「お坊さん便」の販路を拡大し、Amazonマーケットプレイスで発売したことにあります。

「お坊さん便」については、2013年よりみんれびの自社サイトで販売されていましたが、マーケットプレイスでの取り扱いは、「Amazonでお坊さんが手配できる」というインパクトがあり、テレビのニュースでも大きく取り上げられました。

しかし、12月24日になって、主要な59の宗派が加盟し「日本の伝統仏教界における唯一の連合組織」である公益財団法人 全日本仏教会が理事長談話として、お坊さん便を批判する文書を公開しました。

批判の中核は次の部分です。

『私ども公益財団法人 全日本仏教会は、宗教行為としてあるお布施を営利企業が定額表示することに一貫して反対してきました。お布施は、サービスの対価ではありません。同様に、「戒名」「法名」も商品ではないのです。(中略)

今回の「Amazonのお坊さん便 僧侶手配サービス」の販売は、まさしく宗教行為をサービスとして商品にしているものであり、およそ諸外国の宗教事情をみても、このようなことを許している国はありません。そういう意味で、世界的な規模で事業を展開する「Amazon」の、宗教に対する姿勢に疑問と失望を禁じ得ません。しっかりと対応していきたいと考えます。』

つまり、全日本仏教会の批判の趣旨は、「お布施」「戒名」「法名」について、商品ではないということにありました。

全日本仏教会の批判文書公開が、年末に近いクリスマスイブだったため、マスコミ報道はあまりありませんでしたが、1月7日発売の「週刊文春」などが「全日本仏教会のAmazon批判」として記事にしたこともあって、再び議論に火がついています。

宗教行為かサービスか

全日本仏教会の批判文では、「お布施」「戒名」「法名」などはサービスではなく、宗教行為であるという点に力点が置かれています。その部分を引用します。

『申し上げるまでもなく、お布施は、慈悲の心をもって他人に財施などを施すことで「六波羅蜜(ろくはらみつ)」といわれる修行の一つです。なぜ修行なのかというと、見返りを求めない、そういう心を持たないものだからであります。そこに自利利他円満の功徳が成就されるのです。』(本文)

これに対して、一部の報道では『宗教活動による収入(公益事業)は非課税であるため、「宗教行為」ではないサービスにはしたくないのだろう』という指摘が出ています。

また、全日本仏教会の批判が「みんれび」ではなく「Amazon」に向けられたことも、「Amazonのシステムがわかっていない人の批判」という印象を与えてしまいました。これが原因で、ネット上では最初から否定的に受け止めている人も見受けられます。

Amazonマーケットプレイスのシステム上、Amazonは仲介役であり、いわばショッピングモールの大家的役割です。批判するのであれば「お坊さん便」を販売している主体である「みんれび」を批判し、その販売を許しているAmazonに批判が及ぶという形にするべきだったでしょう。

力ではなく、教えを説いて欲しかった

1月8日現在、「お坊さん便」に対するAmazonのカスタマーレビューは、41件が寄せられています。

評価は、5が17人、4が2人、3が2人、1が19人で、賛否が半ばしています。カスタマーレビュー欄でこういう議論を行なうこと自体の良し悪しは置くとして、違う立場の人が意見を公開しているのは良いことでしょう。

こういう議論が巻き起こるきっかけを作ってくれたという点では、全日本仏教会の批判文公開は意味のある行為でした。少なくとも団体としての意見を公にし、記録に残したことは評価されるべきでしょう。短い文章ですので、読者の皆さんにもご一読をお勧めします。

ただ、残念なのは批判文の内容や、批判する対象にもう少し配慮があればよかったと思います。

たとえば、批判文全体は、宗教法人が「お坊さん便」をどう捉えているかという姿勢に終止しており、「しっかりと対応していきたいと考えます」などと、今後の力による行動を暗示する文章もあります。文章全体が団体の視点からのみ書かれていてさみしい気がします。

そうではなく、もう少し一般人の立場に向けて、宗教的行為であることの裏付けの教えを説いてくれる言葉が欲しかったと思います。

力による説得ではなく、言葉による理解を求めていくほうが、より宗教者にふさわしい姿勢だったのではないでしょうか。

[シニアガイド編集部]