ケガだけでなく、がんや糖尿病なども対象になる「障害年金」
老齢年金以外の2つの年金
「年金」というと、65歳になってから貰える「老齢年金」のことばかり考えがちですが、現役世代でも貰える年金が2つあります。
それは、「障害年金」と「遺族年金」です。
それぞれ、民間の保険で言えば「傷害保険」と「死亡保険」にあたる存在で、現役世代が障害を負ったり、死亡した場合に支給されます。
ここでは、あまり知られていない「障害年金」について紹介しましょう。
障害年金の特徴
障害年金の主な特徴は次の通りです。
- 国民年金に加入していると「障害基礎年金」が貰える
- 障害のもととなるケガや病気から、1年6カ月以上障害が残った場合に支給される
- 肉体的な障害だけではなく、うつ病などの精神的な障害も対象となる
- 国民年金の保険料をきちんと納めているなど、一定の制限がある
- 障害の等級が用意されており、どの等級に判断されるかで支給額が変わる
- 18歳未満の子供がいる場合は年金が加算される
- 厚生年金に加入していると「障害厚生年金」が貰える
- 障害厚生年金は、等級が広くなり、支給額も増える
- 障害厚生年金は貰えないが、一定の障害がある場合は「障害手当金」という一時金が出る
障害年金の等級
障害の等級は次のように4段階になります。下の2つは障害厚生年金だけにあります。
- 障害等級1級
- 身の回りのことはかろうじてできるが、それ以上の活動ができない、または行なってはいけない状態。病院であればベッド周辺、家庭であれば寝室内に活動が限られる程度
- 障害等級2級
- 家庭内の穏やかな家事(軽い調理、下着の洗濯など)はできるが、それ以上の活動ができない、または行なってはいけない状態。病院であれば病棟内、家庭であれば家屋内に活動が限られる程度。
- 障害等級3級
- 障害厚生年金のみにある。労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加える事を必要とする程度。
- 障害手当金
- 障害厚生年金のみにある。疾病が治っているが、労働が制限を受ける状態。
各等級については、障害の種別ごとに具体的な基準が決まっています。
たとえば、視力障害については次の通りです。ここで言う視力はメガネなどを使用した「矯正視力」となります。
- 障害等級1級
- 両眼の視力の合計が0.04以下
- 障害等級2級
- 両眼の視力の合計が0.05以上0.08以下
- 障害等級3級
- 両眼の視力の合計が0.1以下
- 障害手当金
- 両眼の視力が0.6以下
障害年金の特徴として、民間の保険では対象外となっていることが多い「精神疾患」についても対象となっています。厚労省の調査によれば、精神疾患による受給が増えてきています。
また、ガン(悪性新生物)による療養の場合も対象となることが多く、闘病関係のブログでも、受給に向けた活動や受給例を目にすることが増えてきました。
一般に考えられているよりも、広い範囲をカバーしている制度なので、療養中の方は受給が可能か検討することをお勧めします。
障害年金の支給額
障害年金の支給額は、国民年金による「障害基礎年金」が定額です。
年額は、障害等級1級が「975,125円」、障害等級2級が780,100円です。18歳未満の子供がいると加算があり、第1子と第2子は1人当たり224,500円です。 第3子以降は1人当たり74,800円です。
障害厚生年金については、勤続年数や、給与から計算する標準報酬月額などから計算されます。
勤続年数が短い場合は、最低保証月数の300カ月(25年)として計算されるので、それなりの金額となります。
なお、サラリーマンの場合は、障害厚生年金と、働けなくなってから1年6カ月支給される「傷病手当金」を同時に受給すると、金額が減額されてしまいます。
しかし、年金が出るかどうかの裁定には、数カ月程度の時間がかかります。多少の重複は恐れず、障害手当金が出ているうちに、障害年金を貰う準備を進めましょう。
少しずつ改善されている障害年金の体制
障害年金については、知名度が低い、書類作成が面倒、初診日の証明がうるさい、年金事務所に相談に行っても詳しい人がいない、判定基準が県によって異なる、などの欠点が指摘されてきました。
これらの問題については、厚労省の審議会でも問題となっており、判定基準の統一、第三者による初診日証明の容認、専任スタッフの配置などが進められています。少しずつ状況は改善されているので、まず、年金事務所などの窓口に行ってみましょう。
なお、心身の状態によって、自分で相談に行けなかったり、書類を集める作業ができない場合は、社会保険労務士(社労士)に代行してもらうこともできます。
その場合の報酬は、さまざまですが、「最低報酬10万円、成功した場合は年金の2カ月分または、初回振込額の10%」としている事務所が多いようです。
まず、窓口に相談に行って、必要な作業量などを把握してから、社労士への依頼を検討しましょう。