入るのが難しいと定評のある「特養(とくよう)」は、どんな老人ホームなのか

[2016/2/24 00:01]

「特養」は大人気

テレビのニュースで、「老人ホームの入所希望者が多くて何年も待っている」という話題が伝えられることがあります。

この「入所希望者が多くて何年も待っている」という老人ホームが「特養(とくよう)」と呼ばれる施設です。正式には「特別養護老人ホーム」と言います。介護保険ができてからは、その分類に従って「介護老人福祉施設」と呼ばれることも多くなりました。

特養は、高齢者の中でも、特に要介護者を対象とした介護施設です。そして、介護の必要がある高齢者にとって、最後の頼みの綱ともいえる重要な存在です。

この「特養」の特徴と、入所するための方法を紹介しましょう。

申し込みが殺到するも、空室はほとんどなし

この「特養」の人気を数字で見てみましょう。

2014年に行なわれた調査では、特養への入所申込者は全国で約52万人いました。

調査の時点で、全国に特養は7,249施設あり、定員は約49万人でした。利用率は97%以上ですから、空室はほとんどなく満杯の状態です。

つまり、すでにあふれかけている施設に、さらに定員以上の入所希望が寄せられている状況です。

実際には入所を希望する人達が、複数の地域や施設に重複して申し込みをしている例があるとはいえ、「特養に入るには、数カ月待ちは当たり前で、数年待ちも珍しくない」という評判を裏付ける人気の高さです。

入所するには「要介護3」認定が必要

特養の施設数は、毎年増えていますが、入所希望者の増加には追いついていません。

そこで、2015年4月からは入所条件が厳しくなりました。

現在では、「原則として介護保険の要介護認定で要介護3以上」という入所資格が必要です。

また、介護保険の対象ですから「第1号保険者」である「65歳以上」が主な対象となります。

ちなみに、「要介護3」というのは「中度の介護を要する状態」とされており、「排泄、入浴、食事に介助が必要な段階」です。「暴言・暴行」や「大声を出す」などの問題行動が見られる段階でもあります。

つまり特養は、「重度の要介護状態にある高齢者に介護サービスを提供する施設」という位置づけになったのです。

要介護認定が軽い人や、特定疾病などによる介護保険の「第2号保険者」も入居できないわけではありませんが、かなり難しくなったことは間違いありません。

2015年からは「要介護3」認定が必要となった 出典:厚労省によるリーフレット(PDF)

特養はどんなところ

特養は、社会福祉法人や地方自治体などが運営する「公的」な「施設」です。

例えば、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」のような、「民間」が提供する「住宅」に比べて、公共性が高く、福祉政策の一部としての側面が強い老人ホームです。

また、特養は、要介護者が介護サービスを受けながら生活する場です。入所にあたっては、入所期限などは設定されておらず、長期間入所できます。

具体的には、入浴・排泄・食事等の介護、日常生活の世話、機能訓練、健康管理、療養上の世話などのサービスが提供されます。

利用するにあたって必要な費用は、比較的安く設定されています。入所費などの初期費用はありません。

月額の利用費は、施設や受ける介護サービスの内容によって異なりますが、一般に6万円~14万円程度とされています。

居室は7割が個室です。10人ほどのユニットごとに共同の生活室が用意される「ユニット型個室」が主流になってます。

従来型の居室と、ユニット型個室の違い 出典:厚労省資料

特養の申し込み手順

特養に入所するためには、どのように手続きを進めればよいでしょうか。

なお、通常は、本人、配偶者、同居の家族などが、入所申し込みを行ないます。

  1. 「要介護3」の認定が必要ですから、市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談して、介護認定を受けます
  2. 介護認定が取得できたら、ケアマネージャーと施設サービスとして「介護老人福祉施設(特養)」利用することを相談します
  3. 特養施設に連絡して見学をさせてもらいます。同じ特養でも、施設ごとの方向性や施設の差が大きいので、必ず見学してから、入所する施設を決めます
  4. 必要な書類を揃え、市区町村の介護窓口へ申し込みます。
  5. 市区町村から、各特養に入所希望者の名簿が渡されます。どの順番で入所させるかは、特養施設が決定されます。

特養は介護が必要な高齢者の最後の頼みの綱

家庭での介護が難しい要介護者を抱えた家族にとって、特養はありがたい存在です。

しかし、「要介護3」以上が入所資格になっても、相変わらず入所には時間がかかっています。

特に23区内の施設は、待っている人が多く、数年待ちも珍しくありません。

今はなんとかなる状況であっても、介護認定は必ず受けておきましょう。初めて介護認定を受けるときは時間がかかるので、あらかじめ受けておくことをお勧めします。

また、切羽詰った状況で入居を急ぐ場合は、いま住んでいる場所にこだわらず、都下や周辺の県にある施設も視野に入れて探しましょう。

厚労省のホームページで、全国の特養施設が検索できます。また、埼玉県のように「空床・入所待ち情報」を公開している自治体もあります。

なお、特養への入所は先着順ではなく、要介護者の状況などを考慮して、特養施設の会議で決定されます。

申し込みにあたっては、ケアマネージャーや施設の職員に自分たちの状況を率直に打ち明けておき、判断の際に考慮してもらえるように努力しましょう。

[シニアガイド編集部]