認知症の不安が出てきた時にサポートしてくれる「日常生活自立支援事業」

[2016/3/17 00:00]

軽い認知症の高齢者などをサポート

例えば、一人暮らしの高齢の方で、もの忘れの症状がひどくなり、銀行の通帳を失くしては再発行を繰り返す例があります。

また、軽い認知症で、郵便物の整理ができなくなり、公共料金の支払いに支障が生じる例があります。

このように、施設に入るほどではなく一人暮らしはできるが、サポートが必要なときに利用したいのが、「日常生活自立支援事業」です。

日常生活支援事業は、地域の社会福祉協議会が行なっている事業です。地域によっては「あんしんサポート制度」などの名前でサービスが提供されています。

対象となるのは、認知症の症状や知的/精神障がいなどによって、必要な福祉サービスを、自分の判断で適切に利用することが難しい方です。

金銭管理や重要書類の預かりも可能

日常生活支援事業は、主に3つのサポートを行なってくれます。

  • 福祉サービスを利用したい場合の相談と支援 介護保険や障害者自立支援法などによるサービスが受けられるように支援します
  • 福祉サービス利用料、公共料金、家賃等の支払手続きや生活費の管理 銀行の通帳を預かり、銀行で支払い手続きを代行してくれたり、あらかじめ定めた生活費を渡してくれます
  • 年金証書や通帳、土地の権利書等の重要な書類の保管 重要な書類を社会福祉協議会の貸金庫で預かってくれます

日常生活支援事業の特徴は2つあります。

  • 利用者本人と社会福祉協議会が契約を結んでから援助が開始されます。利用者本人が契約内容に合意し、理解している必要があります。
  • 当初の相談は無料ですが、支援については有料で行われます。例えば、通帳を預かって金銭管理をする場合は「1回1時間まで2,500円」で、「1時間を超えた場合は30分ごとに500円」かかります。

つまり、契約内容が理解できる程度の判断力があり、一定の料金を支払えることが条件となります。

利用料金については、社会福祉協議会ごとに異なっていますが、だいたい1回1,000円~3,000円程度です。自前でヘルパーを利用することを考えれば、かなり安く設定されています。

施設などへの入所の前に検討を

日常生活支援事業は、認知症の症状が自覚できて、一人暮らしが不安になっている高齢者は、ぜひ利用してほしい制度です。
事業を行なっている社会福祉協議会は公共性の高い民間団体ですから、同じような作業を個人に委託する場合に比べて安心感があります。

一定の法律と管理のもとで事業を行なっている団体でなければ、銀行の通帳や重要書類を預けることには抵抗があります。

また、一定額の料金が必要であることは、負担に感じるかもしれません。しかし、少額であっても料金の支払いを伴う方が、個人の善意に甘える場合に比べると気が楽で利用しやすいものです。

離れて暮らす親御さんに認知症の症状が出始めて、一人暮らしを不安に感じるようになってきたら、施設などへの入所を考える前に、地元の社会福祉協議会に相談してみましょう。

[シニアガイド編集部]