10年放置して「休眠預金」になっても、お金は下ろせます

[2018/7/2 00:00]
出典:金融庁

「10年経つと下ろせなくなっちゃうんでしょう」

先日、法事で集まった高齢の親戚の間で、次のような会話がありました。

「こないだ、ナントカって法律ができて、銀行に預けておいたお金が、10年経つと下ろせなくなっちゃったんでしょう」

「そうそう、だからねぇ。やっぱり“郵便貯金”の方が安全なのよ」

こちらも忙しかったので、その時はツッコメなかったのですが、この会話には2つの間違いがあります。

  • 10年放置しても、銀行に預けておいたお金が下ろせなくなることはない
  • 郵便貯金の方がルールが厳しかった

この記事は、私の親戚と同じ思い違いをしている人へお知らせするために書きました。

本人と口座の確認ができれば、いつでも下ろせる

ウチの親戚が、今度できたと言っていた法律は「休眠預金」に関するものです。

2018年1月1日に施行されました。

この法律は、「10年間異動がなかった口座の預金は、休眠預金に移管され、民間公益活動に活用される」というものです。

「異動」は、残高が変わるような取り引きと考えてください。入出金や手形や小切手による支払い請求などです。口座の残高照会や通帳への記帳など、残高が変わらないものは、基本的には含まれません。

大切なのは、「休眠預金」になっても、没取されるのではないことです。

本人と口座の確認ができれば、口座の解約や継続が行なえます。窓口も、いつもどおりの銀行の窓口で変わりません。

郵便貯金は20年2カ月で権利が消失

ウチの親戚のように「郵便貯金」に対する絶対的な信頼感を持ち続けているお年寄りは少なくありません。

しかし、民営化以前の「郵便貯金」には、今回の休眠預金よりも厳しいルールがありました。

それは「最後の取扱いや満期日から、20年間取扱いがない場合は催告書を発送し、発送の日から2カ月間貯金の払戻しがない場合は、権利が消滅する」というものです。

こっちは、本当に没取されてしまうのです。

普通の口座は、まだ良いのですが、「定額郵便貯金」「定期郵便貯金」「積立郵便貯金」などは、満期になったまま放置されていることが少なくありません。

預けっぱなしになっていないか、通帳や証書などを、もう一度確認しましょう。

なお、現在の「ゆうちょ銀行」は民間の会社ですから、休眠預金のルールは他の銀行と同じです。

つまり、「10年経つと休眠預金へ移管されるが、引き落としなどは行える」というものです。

放置しておくと困る2つの理由

「なんだぁ、10年放置しても没収されないんだ。じゃあ、このままにしておこう」と思う方も多いでしょう。

しかし、口座を放置しておくと、2つ困ることがあります。

1つは、りそな銀行のように、独自のルールで「未利用口座管理手数料」が請求される場合があることです。

これは「2年以上異動がなく、残高が1万円未満の場合、年に1,200円(税別)の未利用口座管理手数料が請求される」というものです。

口座の残高がどんどん減っていき、最後はゼロになって、口座が解約されます。

残高が1万円未満に限るとはいえ、自分のお金が、どこかで少しずつ減っていくのは、もったいないことです。

使っていない口座の解約は優れた「終活」

もう1つは、相続時の手間が増えることです。

もし、あなたが亡くなって、その財産を家族が相続するときには、あなたの財産をすべてリストアップする必要があります。

例えば、いったん書類ができた後で、使われていない口座の通帳が見つかったりすると、最悪の場合、書類を作り直して、関係者全員のハンコを貰い直す羽目になります。

しかも、あなたの家族が、「相続」として預金口座を引き継ぐ場合は、ものすごく手間がかかりますし、手数料もかかります。

使っていない銀行口座を解約することは、家族に迷惑をかけないという意味で、とても優れた「終活」なのです。

とりあえず手元にある「預金通帳」と「キャッシュカード」を全部集めましょう。

吸収や合併などで、今は無い銀行の場合は、全銀協のサイトで引き継いだ銀行を確認します。

そして、使っていないものについては、「通帳」「キャッシュカード」「届け出印」「運転免許証等の本人確認書類」を準備して、もよりの支店に解約に行きましょう。

たいていの場合、交通費ぐらいの残高は残っているものです。うまくすればお小遣いぐらい出るかもしれません。

[シニアガイド編集部]