医療費と介護費が両方かさんだときは、7月末に合計してみよう
医療と介護の両方に出費があるときに使える制度
高齢の家族がいると、医療費と介護費の両方の出費が重なることがあります。
例えば、「親が要介護認定を受け介護施設に入っている一方で、別の家族が入院が必要な病気になった」というような状況です。
このような場合、医療保険では「高額療養費制度」、介護保険では「高額介護サービス費」など、自己負担限度額を抑える制度が用意されています。
また、確定申告をすると、家族にかかった医療費や介護費に対して、所得税の一部が還付され、住民税が安くなります。
しかし、それらの制度を利用した場合でも、2つの負担が重なると、家計は苦しくなります。
そんなときは、「高額介護合算療養費」のことを思い出してください。
ちょっと癖のある制度なのですが、ひょっとしたら数万円単位で現金が戻ってくる可能性があります。
上限以上の支出が戻ってくる
「高額介護合算療養費」は、簡単に言うと、介護保険と医療保険の両方に出費があったとき、その負担額が、ある基準を越えると、越えた分がまるごと返ってくる制度です。
介護保険と医療保険は、別の制度なので、お互いにどれぐらい負担があるのかわかりません。
自分から、「介護保険と医療保険を合わせたときの負担が重くなりすぎていますから、戻してください」と申請して、初めて戻ってくるのです。
まず、医療費を計算してみよう
「高額介護合算療養費」を知って、「それは良い制度だ、使ってみよう」と思ったときに、引っかかりやすい点があります。
そう、この制度は、ちょっと癖のある制度なのです。
特に、次の2点に注意が必要です。
- 毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額で計算する
- 家族が異なる医療保険に入っていた場合、どれか1つだけが対象となる
まず、医療費と介護費を計算する期間が、「年」でも「年度」でもなく、「その年の8月1日から、翌年の7月末日」までなのです。
医療費控除のために、1年間の医療費を計算する人はいても、7月末という中途半端な時期に医療費や介護費の計算をする人はあまりいません。
この制度の存在を知ってから、初めて計算するという人が多いでしょう。
ただし、医療費控除のときのように1円単位まで計算する必要はありません。
あとで紹介する、自分の上限の金額を越えていることだけ、確認できれば良いのです。
なお、医療保険と介護保険の自己負担額のいずれかが0円の場合は対象になりません。両方に自己負担があることが重要です。
医療保険は1つだけが対象
もう1つの注意は、異なる医療保険の合算ができない点です。
医療保険には、「国民健康保険」「健康保険(被用者保険)」「後期高齢者医療制度」と3つの制度があります。
「高額介護合算療養費」の場合、各制度でかかった費用のうち、どれか1つの制度を選ぶ必要があります。
つまり、同じ医療費だからといって、異なった医療保険でかかった費用は合算できません。
例えば、後期高齢者医療制度に入っている父と、健康保険に入っている自分の両方が入院した場合、どちらか費用の大きな方を1つだけ選びます。
上限の金額を確認する
自分の医療費と介護費の、だいたいの金額が分かったら、それが上限を越えているかどうかを確認します。
ざっくり言えば、70歳以上の家庭であれば「67万円以上」、70歳未満であれば収入に応じて変わります。
住民税が非課税の場合は「31万円」が上限となるので、該当する人が多いでしょう。
また、介護サービス利用者が複数いる場合は、収入に関係なく「31万円」になるので、対象になりやすいでしょう。
なお、2018年8月以降は、70歳以上についても、70歳未満と同様に収入に応じて上限が変わります。
2018年の今年は、上限が低いラストチャンスなのです。
手続きの方法にもコツがある
「高額介護合算療養費」を申請するときは、介護保険と医療保険の両方に申請します。
順番は決まっていて、“先に介護保険に申請”します。
すると、「介護自己負担額証明書」が出るので、それを添えて医療保険の方へ提出します。
うまく申請が通れば、介護保険と医療保険の両方から、それぞれの支出に応じた金額が支給されます。
負担が重なったときには、ぜひ検討を
これまで紹介したように、「高額介護合算療養費」を利用するのに手間がかかる制度です。
しかし、医療費と介護費の両方を負担しなければならないという大変な時期には、多少使い勝手は悪くても、お金が戻ってくるありがたい制度であることは間違いありません。
親の世帯だけに限れば、介護保険と後期高齢者医療制度という組み合わせが多く、同じ役所内の別の窓口を行き来するだけで手続きができます。
まず、窓口で確認してみましょう。
また、高齢者以外でも、「ガン」などの「特定疾病」で介護保険を利用している場合は、医療費との合算で返ってくる可能性があります。
少しでも自己負担を減らすために、自分の収入に応じた上限額だけでも確認してみてください。
【追記】2019年2月より、「末期がん」については、単に「がん」と記載できるようになりました。