国民年金に加入している人の4割以上は「免除」や「猶予」の制度を利用している。「未納」にするよりずっとお得。

[2023/6/28 00:00]

国民年金の保険料が払えないときの制度

日本国内に住んでいて、20歳以上60歳未満であり、厚生年金保険に加入していない人は、すべて「国民年金」に加入する必要があります。

ただし、厚生年金に加入している人に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」と言って、年金保険料を納める必要がありません。

それ以外の「第1号被保険者」、具体的には学生や自営業者は、保険料を毎月納める必要があります。

令和5年度(2023年度)の保険料は「16,520円」です。

しかし、現在の保険料の納付率は、8割弱しかありません。

つまり、保険料を未払いにしている人が2割もいることになります。

でも、保険料を未払いにすると、将来的に年金が受け取れません。

そのため、保険料が払えない事情がある人に向けて、「免除」や「猶予」の制度が用意されています。

つまり、保険料を全額払わなくても、支払いをうながす督促状(とくそくじょう)が届いたり、差し押さえを受けることがなくなります。

また、一定の制限はありますが、将来、年金を受け取る権利を失わずにすみます。

この記事では、この「免除」と「猶予」について紹介します。

実は4割以上の人が制度を利用している

最初に、「免除」と「猶予」の利用率を見てみましょう。

実は、国民年金の保険料を、そのまま払っている人は5割しかいません。

「未納者」、つまり未払いの人を除くと、4割以上の人が「免除」や「猶予」の制度を利用しています。

出典:厚労省のデータをもとに編集部が作成

収入によって「免除」の割合が決まる

では、収入が少なくて保険料を納めることが難しい人のための、「免除」を紹介しましょう。

「免除」を利用できるのは、「50歳未満」に限られています。

免除される額は、収入に応じて、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります

それぞれの基準となる金額は、扶養者の有無などによって異なります。

例えば、扶養者のいない独身者で、「全額免除」の場合は、年収が「67万円以下」が基準となります。

扶養者が多い場合は、そこそこの金額でも「4分の1免除」の対象となるので、窓口で相談してください。

20歳以上の学生は「猶予」してもらえる

「学生納付特例制度」は、20歳以上の学生が対象です。

20歳になると、国民年金保険料の納付が義務となりますが、これを申請すると、在学中の納付が猶予されます。

この制度の良いところは、本人の所得制限はありますが、家族の所得は対象にならないことです。
つまり、実家の貧富に関わらず、本人の収入が一定額以下であれば、猶予してもらうことができます。

なお、対象となっている「学校」の範囲は広く、大学、大学院、短大、高校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校、各種学校、一部の海外大学の日本分校まで含まれます。

通学している学校が対象となってるかどうは、一覧で確認してください。

将来の年金を失わないだけでも意味がある

厚生年金の加入者の場合、保険料は給与から天引きされます。

そのため、保険料が未払いになる人は、ほとんどいません。

しかし、国民年金の保険料は、支払いが本人に任されているので、未払いになりやすいのです。

例えば、「日本の年金制度は信用できない」「どうせもらっても金額が知れている」「国に任せるよりも自分で運用した方が有利だ」「自分は太く短く生きるので、年金をもらう前に死ぬに決まっている」など、本人の信念で未払いにするのなら仕方がありません。

しかし、「免除」や「猶予」の対象となるのであれば、それに越したことはありません。

なによりも、面倒な「督促状」が来なくなり、「差し押さえ」におびえることが無くなるだけでも、手続きをする価値があります。

また、一定の制限はありますが、将来の年金の受給資格を失わずにすみます。

ぜひ、もよりの市区町村または、年金事務所に相談してください。

[シニアガイド編集部]