国民年金に加入している人の4割以上は「免除」や「猶予」の制度を利用している。「未納」にするよりずっとお得。
国民年金の保険料が払えないときの制度
日本国内に住んでいて、20歳以上60歳未満であり、厚生年金保険に加入していない人は、すべて「国民年金」に加入する必要があります。
ただし、厚生年金に加入している人に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」と言って、年金保険料を納める必要がありません。
それ以外の「第1号被保険者」、具体的には学生や自営業者は、保険料を毎月納める必要があります。
令和5年度(2023年度)の保険料は「16,520円」です。
しかし、現在の保険料の納付率は、8割弱しかありません。
つまり、保険料を未払いにしている人が2割もいることになります。
でも、保険料を未払いにすると、将来的に年金が受け取れません。
そのため、保険料が払えない事情がある人に向けて、「免除」や「猶予」の制度が用意されています。
つまり、保険料を全額払わなくても、支払いをうながす督促状(とくそくじょう)が届いたり、差し押さえを受けることがなくなります。
また、一定の制限はありますが、将来、年金を受け取る権利を失わずにすみます。
この記事では、この「免除」と「猶予」について紹介します。
実は4割以上の人が制度を利用している
最初に、「免除」と「猶予」の利用率を見てみましょう。
実は、国民年金の保険料を、そのまま払っている人は5割しかいません。
「未納者」、つまり未払いの人を除くと、4割以上の人が「免除」や「猶予」の制度を利用しています。
収入によって「免除」の割合が決まる
では、収入が少なくて保険料を納めることが難しい人のための、「免除」を紹介しましょう。
「免除」を利用できるのは、「50歳未満」に限られています。
免除される額は、収入に応じて、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります
それぞれの基準となる金額は、扶養者の有無などによって異なります。
例えば、扶養者のいない独身者で、「全額免除」の場合は、年収が「67万円以下」が基準となります。
扶養者が多い場合は、そこそこの金額でも「4分の1免除」の対象となるので、窓口で相談してください。
20歳以上の学生は「猶予」してもらえる
「学生納付特例制度」は、20歳以上の学生が対象です。
20歳になると、国民年金保険料の納付が義務となりますが、これを申請すると、在学中の納付が猶予されます。
この制度の良いところは、本人の所得制限はありますが、家族の所得は対象にならないことです。
つまり、実家の貧富に関わらず、本人の収入が一定額以下であれば、猶予してもらうことができます。
なお、対象となっている「学校」の範囲は広く、大学、大学院、短大、高校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校、各種学校、一部の海外大学の日本分校まで含まれます。
通学している学校が対象となってるかどうは、一覧で確認してください。
将来の年金を失わないだけでも意味がある
厚生年金の加入者の場合、保険料は給与から天引きされます。
そのため、保険料が未払いになる人は、ほとんどいません。
しかし、国民年金の保険料は、支払いが本人に任されているので、未払いになりやすいのです。
例えば、「日本の年金制度は信用できない」「どうせもらっても金額が知れている」「国に任せるよりも自分で運用した方が有利だ」「自分は太く短く生きるので、年金をもらう前に死ぬに決まっている」など、本人の信念で未払いにするのなら仕方がありません。
しかし、「免除」や「猶予」の対象となるのであれば、それに越したことはありません。
なによりも、面倒な「督促状」が来なくなり、「差し押さえ」におびえることが無くなるだけでも、手続きをする価値があります。
また、一定の制限はありますが、将来の年金の受給資格を失わずにすみます。
ぜひ、もよりの市区町村または、年金事務所に相談してください。