売上が1千万円未満の免税事業者の7割は、インボイスの登録申請をしていない
売上が1千万円以下の免税事業者へのアンケート
税理士事務所のSMG菅原経営株式会社が、「インボイスの登録申請状況やその理由」についての調査結果を公開しています。
2023年10月に行なわれたインターネット調査では、全国の免税事業者1,150人が回答しています。
インボイス(適格請求書)制度は、2023年10月に開始されました。
しかし、これまで消費税が免税となっていた売上高が1,000万円未満の「免税事業者」は、インボイス制度の登録申請を行なうかどうかが悩みどころとなっています。
申請をして「適格請求書発行事業者」にならないと、取引先の消費税の負担が増えてしまうのです。
免税事業者の7割以上が申請していない
しかし、現実には、7割以上の免税事業者が、インボイス制度の登録申請をしていません。
「適格請求書発行事業者」の登録をした人は、3割に届いていないのです。
また、少数ですが「登録したが取り消した」という人もいます。
申請しない理由は「メリットがない」
まず、「登録申請していない」人に、その理由を聞いています。
一番多いのが「メリットがない」で、半分以上の人がこれを挙げています。
登録申請をすると、これまで免税となっていた消費税を払わなければならないので、それを嫌っているのでしょう。
次に、「余計な手間がかかる」が続きます。
「適格請求書発行事業者」になれば、それに伴う事務仕事が増えますから、避けたい気持ちは分かります。
また、「toCなのであまり必要ない」を挙げる人も少なくありません。
「toC」とはコンシューマー向けという意味で、不特定多数の一般市場を対象としています。
このような業態では、「適格請求書発行事業者」になってインボイスを発行する意味が、ほとんどありません。
申請した理由は「取引先から求められた」
次に、「登録申請した」人に、その理由を聞いています。
一番多い回答は、「取引先から求められた」で4割を超えました。
また、「契約時に不利になる」や「インボイスを発行できないことを理由に取引を止められる」など、インボイスを発行をしないことによって、取引に支障が出ることを恐れていることが分かります。
なお、「義務だと思った」という人がいますが、「適格請求書発行事業者」の登録申請は任意であって、義務ではありません。
とりあえず向こう3年間は様子見を
インボイス制度については、免税事業者を対象とした経過措置が追加で公開されています。
例えば、免税事業者等からの仕入税額相当額については、向こう3年間80%が控除されます。
これにより、「適格請求書発行事業者」の登録申請をしていなくても、取引先に迷惑をかける割合が低くなりました。
取引先からの指示がないのであれば、とりあえず、向こう3年間は様子見をしても良いでしょう。
また、公正取引委員会が公開した「インボイス制度の実施に関連した注意事例」という文書には、「課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。」という表現があります。
つまり、いざとなれば公正取引委員会の文書を盾に取って対抗することができますから、「インボイスを発行できないことを理由に取引を止められる」ことをむやみに恐れる必要はありません。
まずは、インボイスの発行が必要かどうか、取引先の意向を確認することから始めましょう。