2020年の人口が10万人以上あるのに、2050年に大幅に人口が減る7つの市
もとの人口が少ないと、減少率が過大に見える
今回公開された、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)のレポートでは、全国の市区町村に対して、2020年から2050年の人口の変化を予測しています。
例えば、人口の減少率が最も高い「群馬県南牧村」では、2020年に「1,611人」だった人口が、2050年には「406人」に減ると予想されています。
つまり、人口が4分の1に減ることになり、減少率で言うと「74.8%」になります。
このように、もともとの人口が少ない町村は、計算するときの母数が小さいために、人口の減少率が大きくなってしまいます。
では、もう少し人口が多い、つまり母数が多い街では、どれぐらい人口が減るのでしょうか。
ここでは、2020年の人口が10万人を超える「市」について、いくつかの例を見てみましょう。
2040年でも14万人を維持する目標の「日立市」
2020年の人口が10万人を超えながら、2050年までの人口減少率が40%を超える市は7つあります。
- 茨城県 日立市 174,508人、40.2%減
- 北海道 釧路市 165,077人、40.3%減
- 大阪府 堺市南区 138,464人、41.8%減
- 岩手県 一関市 111,932人、45.3%減
- 北海道 小樽市 111,299人、50.1%減
- 群馬県 桐生市 106,445人、43.8%減
- 大阪府 河内長野市 101,692人、42.6%減
その中で、2020年の人口がもっとも多いのが「日立市」です。
2020年に「17万4,508人」だった人口は、2050年には「10万4,391人」に減る見込みです。
減少率は40.2%ですから、ほぼ4割減って、かろうじて人口10万人を維持する状態です。
一方、現在の日立市の目標は「2040年に人口14万人を維持する」としています。
以前は「2040年に15万人を維持する」が目標でしたが、実績を反映して下方修正されました。
2040年の人口は「12万9,191人」と推計されているので、それに1万人上乗せする必要があります。
2050年に人口が半分になる「小樽市」
北海道 小樽市は人口10万人を超える市の中で、もっとも人口の減少率が高い都市です。
2020年は「11万1,299人」の人口がありますが、2050年には「5万5,542人」に減少します。
減少率は「50.1%」ですから、ちょうど人口が半分になります。
小樽市は、独自の分析を加えた「小樽市人口ビジョン」というPDFファイルを公開しています。
そちらでは、2050年に「6万707人」と今回の推計を、5千人上回る目標を設定しています。
意欲的な人口維持計画を示す「釧路市」
最後に、人口減少に対して、極めて楽観的な「北海道 釧路市」を紹介しましょう。
ここまで見てきたように、自治体が立てる将来の人口計画は、国の機関である社人研の推計をもとに、それを少し上回る目標になっています。
さきほどの日立市の例で言えば、「2040年に12万9千人ってことになっていますが、コレとコレで対策しますから目標は14万人にします」という感じです。
しかし、「釧路市」は違います。
2040年の予測値が「10万6千人」のところで「13万8千人」を目標としています。
いきなり3万人も上乗せしています。
2060年はもっと凄く、予測値が「6万2千人」のところで「12万6千人」を目標としています。
つまり、2060年の目標値は、予測値の2倍以上なのです。
控えめに言っても、極めて意欲的かつ楽観的な計画と言えるでしょう。
ちなみに今回使用した最新の推計では、釧路市の人口は、2020年に「16万5,077人」で、2040年の時点では「11万9,698人」、2050年では「9万8,544人」に減少すると見込まれています。
2020年から2050年の減少率は「40.3%」です。
相変わらず厳しい数字を示す推計に対して、釧路市がどのような目標へ進んでいくのか注目されます。
自治体の目標を見るだけで本気度が分かる
今回見た3つの市は、いずれも2050年までに、人口が4割以上減少すると予測されています。
それに対して、すでに何年も前から対策は進んでいます。
しかし、どんなに楽観的な推計でも、2020年時点の人口から大きく減るという見込みは変わりません。
その上で、どのような選択をすべきか、まずは市が提供している資料を読むことから始めましょう。
とりあえず、公的な機関が出している推計に対して、どの程度の対策を用意して、目標を設定しているかを見るだけでも本気度が分かります。
まず、もよりの地方自治体のホームページで「人口 対策」や「人口 総合戦略」などの言葉で検索すると資料を見つけやすいでしょう。