意外に頼りになる公的医療保険

[2015/8/31 15:08]

医療費を軽減してくれる保険のしくみ

病気やケガで医療機関を受診する際に、一般には医療費の3割だけを負担します。このように、医療費の一部を負担してくれる制度を「医療保険」と言います。

医療保険は、収入の一部を保険料として支払っている代わりに、医療機関にかかったときの費用の一部を負担してもらえる制度です。

日本では、国民全員が、なんらかの公的な医療保険に加入する制度になっています。これを「国民皆保険制度」と言います。

いくつかある保険の種類

日本の公的医療保険は、歴史上の経緯などからいくつかの制度に分かれています。それぞれの保険によって制度が異なっていますので、自分の健康保険証で確認しておきましょう。

主なものを次に挙げます。

  • 国民健康保険(国保)→主に自営業、無職の人、その家族
  • 組合管掌健康保険(組合健保)→主に大企業の従業員、その家族
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)→主に中小企業の従業員、その家族
  • 共済組合→公務員、私立学校の教職員、その家族

退職直後の一定期間を除き、自分で保険制度を選ぶことはできません。たとえば、企業の従業員であれば、その会社が加入している保険制度に加入することになります。職種や職域によって、加入できる制度が決まります。

なお、厚労省によれば、各公的保険の加入者の比率は、国保が34%、組合健保が26%、協会けんぽが32%、共済が8%です。

自分で払う費用は医療費の3割が基本

医療を受けた場合に自分が支払う割合は、「一部負担」と言います。一部負担の割合は、5つの制度で共通で、「3割」が基本です。

正確には「義務教育就学後から70歳未満」が3割と規定されています。

小学校に上がる前の子供の一部負担は2割です。70歳以上75歳未満の一部負担は、以前は1割でしたが、現在は2割です。さらに、現役並みに所得があると3割になります。

なお、75歳以上はそれまでの公的医療保険から離れて、「後期高齢者医療制度」という共通の制度になります。一部負担は1割となりますが、現役並に所得があると3割に上がります。

医療費が月額8万円に抑えられる高額療養費制度

その月の医療費が高額になった場合に一定金額以上の部分を負担してくれる「高額療養費制度」があります。

一般的な年収の場合、月に約8万円を越えた部分については高額療養費制度の対象となります。詳細については記事末のリンクを参照してください。

現金給付と付加給付

出産や死亡という人生の大きなイベントの際には、現金が給付されます。出産時の「出産育児一時金」と、死亡時の「葬祭費」は、国保を含めて、どの保険でも用意されています。

また、病気により働けなくなった際に一定期間支給される「傷病手当金」が、組合健保、協会けんぽ、共済で用意されています。

また、組合健保と共済の一部では、「付加給付」という制度があります。例えば、月に25,000円を越える医療費は、すべて保険側が負担してくれます。付加給付の有無は、加入している健保組合や共済に問い合わせましょう。

大きな病気をすると差がわかる

このように、一見、同じような制度に見えても、公的な医療保険の保険料と手厚さには差があります。「傷病手当金」と「付加給付」が典型的な例でしょう。

日本では、公的な医療保険は、職種や職域によって加入できる制度が決まります。つまり、高い保険料を払う代わりに、手厚い保証を選ぶということはできません。

自分の加入している制度を調べて、公的な医療保険で足りない部分については、民間の医療保険などでカバーする手配をしましょう。

[シニアガイド編集部]