急な入院に対して、いくら用意しておけば良いか

[2015/9/3 14:51]

入院時に襲いかかる金銭面の不安

日常生活における不安の1つに、急な病気や事故による入院があります。

自分の健康に自信があり、大きな病気の経験がない人にとって、「入院」はとても怖い未知の存在です。

入院に対する不安の原因は、「病状」と「金銭」の2つが多いでしょう。病状については、治療の過程を通じて不安と戦うしかありません。

しかし「金銭」については、実態以上に不安を感じている例が多いようです。実際には、入院中にかかるお金にはルールがあります。健康保険による保険診療の範囲で治療を受けていれば、一定の金額を越えることはありません。

あなたが入院したら、「いつ」「どれぐらい」お金がかかるのか確認しましょう。そして、少しでも不安を解消しましょう。

入院すると、平均23万円かかる

まず、入院時にかかる総額について見てみましょう。公益財団法人 生命保険文化センターによる調査では、「入院時の自己負担費用の平均は約23万円」という結果が出ています。

もちろん、病状や入院期間によって差はありますが、入院に備えて準備しておく金額の目安と考えてよいでしょう。

では、その23万円はいつまでに用意すれば良いのでしょう。もう少し、詳しく見てみましょう。

病院にお金を払うのは入退院時と月1回に限られる

入院に際して、病院にお金を支払うのは、「入院時」「毎月の精算日」「退院時」の3回だけです。

入院時には、「入院保証金」という名目で5万円から10万円を預かる病院が多数派です。これは万一のトラブルに備えた保証金になります。保証人を立てれば、入院保証金を不要としている病院もあります。

一般に入院保証金は、退院時に支払う医療費と相殺で精算されます。

名目は預り金ですが、戻らないと思った方が良いでしょう。

入院中の医療費は月単位で精算

入院中の医療費は、月単位で計算されます。これは、国保や社保などのシステムに合わせているためで、月の末日に締めます。

支払いを行なう精算日は翌月の10日のことが多く、その前日に請求書が入院中のベッドに届けられます。

請求される金額は「診察費」「検査代」「手術代」などの医療費と、「差額ベッド代」「消耗品代(おむつなど)」「レンタル代(寝間着、タオル)」などの医療費以外の経費を合わせたものです。

つまり、「入院だ!」となったら、入院時に保証金が5~10万円、翌月の10日に最初の入院費が必要になるわけです。

医療費には上限がある

では、翌月の10日にはいくら用意しておけば良いのでしょう。

実は、医療費については、ちゃんと手続きをしていれば、個人が負担する金額には上限があります。

日本の健康保険には「高額療養費制度」という制度があり、個人が負担する医療費に上限を定めているのです。

上限の金額は、年齢と収入で決まります。70歳未満で、一般的な収入の場合では約8万円と覚えておきましょう。

高額療養費制度を使うために、入院が決まったら、すぐに「限度額認定証」を用意しましょう。限度額認定証の請求方法は、健康保険証に記載されている窓口へ問い合わせてください。

医療費以外の食費や消耗品代、レンタル代などの諸経費は月に3万円~4万円ぐらいとみれば間違いないでしょう。

したがって、毎月病院からの請求は“高額療養費の自己負担分8万円+諸経費4万円”で、12万円ぐらいになります。これが、入院中に月に1回支払うお金の目安となります。

20万円あれば、とりあえずしのげる

時間軸順におさらいをしてみましょう。

「すぐに入院してください」と言われたら、とりあえず入院保証金が5~10万円必要です。これは退院時に必要な経費と相殺されると思えばいいでしょう。

入院した月の月末までに、高額療養費の「限度額適用認定証」を手に入れて、病院に届けます。そうすれば、翌月10日ごろの医療費の請求は12万円ぐらいで納まるはずです。

両方合わせて、17万円~22万円ぐらいのお金があれば、とりあえず最初の1カ月分はしのげます。「入院」というショックを受け止めるための金額というわけです。

さらに大きなリスクには保険も検討する

1カ月以内の入院で、普通の大部屋であれば、上記のとおり20万円ほどの現金があれば、しのげます。

しかし、「入院が長期化した」「差額ベッド代の必要な病室にしか入れなかった」など、状況が悪化すると、支払金額の総額が膨らみます。

たとえば、1人部屋に入ると、差額ベッド代は平均で1日7,563円かかります。つまり、1カ月で226,890円です。純粋な医療費よりも、差額ベッド代の方が高くなるのです。

こういうリスクに現金だけで備えるのは難しいので、民間の医療保険など、別の方法を組み合わせることを考えましょう。

[シニアガイド編集部]