「遺言書」と「遺書」と「エンディングノート」の違い

[2015/10/26 13:34]

3通りある遺志の残し方

「終活」の一環として、自分の意思または遺志を家族に書き残すという作業があります。

そのためには、「遺言書」「遺書」「エンディングノート」などの形式があり、家族に伝えたい内容に応じて、いずれかの形式を選びます。

主な用途は次の通りです。

  • 「遺言書」は財産の処分について意志を伝えるための法的な文書
  • 「遺書」は自分の志や気持ちを伝えるための私的な文書
  • 「エンディングノート」は自分の来歴や、葬儀の方法、など家族に知っておいてほしい情報を記した私的なノート

個別に、もう少し詳しく見ていきましょう。

公的な文書である「遺言書」

「遺言書」は自分の財産を、遺族がどのように分かち合うかということを指示します。

形式については、民法に規定があり、3つの形式があります。指定の形式が守られていなければ無効となります。

「自筆証書遺言」
遺言者が、遺言の内容の全文を自書して作成する遺言です。作成は簡単ですが、形式や内容に不備があって、遺言書が無効になる可能性があります。また、自筆証書遺言は、その遺言書を発見した者が家庭裁判所に持参し、相続人全員に呼出状を発送した上、その遺言書を検認するための「検認」手続を経なければなりません
「公正証書遺言」
遺言者が、公証人の面前で遺言の内容を口授し、それに基づいて、公証人が文章にまとめて作成します。公証人は元裁判官など法律の専門家なので、方式の不備で遺言が無効になるおそれがありません。手数料は財産の金額などにもよりますが、数万円からです。
「秘密証書遺言」
遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をした上で封じ、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載して作成します。自署である必要がないこと、遺言の内容を秘密にできることなどのメリットがありますが、記載内容に不備がある可能性が残ります。これも検認作業が必要です。

一般には手軽に作成できる「自筆証書遺言」が普及しており、書店などで作成キットも販売されています。財産が大きい場合や確実に遺言が実施させたい場合は「公正証書遺言」が使用されます。

なお、公証人は、法的に有効な遺言書を残すために協力してくれますが、遺言の内容については遺言者が指定する必要があります。相続の指示など遺言の内容について検討する際は、司法書士や弁護士、税理士などに相談する必要があります。

自分の意志を誰かに強く訴える「遺書」

「遺書」は自分の志や気持ちを伝えるための文書です。

一般には家族や友人に宛てて書かれますが、所属している会社や学校などの組織やマスコミなどを相手先として書かれることもあります。

遺書には特に形式はありません。紙に書くときは、自筆で書くのが一般的です。

用意された項目を埋めることで考えを進めることができる「エンディングノート」

「エンディングノート」は、自分の不在にむけて、共有しておきたい情報を周囲の人に残す文書です。その名の通り、ノート形式になっており、数十ページに渡るものもあります。

多数の製品や文書ファイルが用意されており、その指定にしたがって欄を埋めていくことで、必要な情報が書き残せるようになっています。

遺書に比べて、内容は多岐に渡り、自分の人生を振り返った「自分史」的なページが多いようです。また、死後に限らず、延命処置の有無など、自分の遺志が表現できなくなった場合に備えた指示も書かれます。

財産があればきちんとした「遺言書」から

こうして3つの形式を比較してみると、「遺言書」だけが特別なものであることがわかります。

遺言書は財産分与の指示を与えるという機能を持った公的な文書であり、形式や内容に制約があります。相続する財産がある方は、まず遺言書を用意しましょう。その際は、きちんと効果が発揮できるように形式や内容に留意しましょう。有効性を確実なものにするためには、専門家が関与する「公正証書遺言」を検討しましょう。

遺書とエンディングノートは、自分の遺志を誰かに伝えるための形式です。書式は自由ですし、内容の制約もありません。

どちらでも書きやすい方を選べばよいのですが、まず何を書いたら良いのか迷っているというのであればエンディングノートをお勧めします。

エンディングノートに用意された1つ1つの項目を埋めていくことで、自分の考えや、本当に伝えたいことが、だんだんと整理されてきます。

そのうえで、特定の誰かにどうしても伝えたいということがはっきりしたら、それを遺書として書けばよいでしょう。受け取る立場になってみれば、誰かに「遺書」を残されるというのは重いことです。深い感謝や謝罪などを伝えるのに向いている形式だからです。

いずれにしても、せっかく遺志を伝える文書を用意するのですから、確実に読んでもらえて、相手に届くような形式と内容を選びましょう。残された文書が、あなたの最後の姿なのですから、寛容な心を持って残される人々に優しさを伝えられればそれに過ぎたことはありません。

[シニアガイド編集部]