「生涯活躍のまち」構想の最終報告書まとまる。50代の地方移住も支援
地方移住を促進する「生涯活躍のまち」構想
政府が進めている、東京を始めとする都市居住者の地方への移住策「生涯活躍のまち」構想がまとまりました。
「生涯活躍のまち」は、米国で普及しているCCRC(継続介護付き退職者向けコミュニティ)をベースに、首相官邸の「まち・ひと・しごと創生本部」が、有識者会議で討議していたものです。このほど、ようやく最終報告書がまとまりました。
今後は、今年度中に立ち上げる「生涯活躍のまち支援チーム(仮称)」による支援をもとに、実現をめざします。
「生涯活躍のまち」構想の意義は、「高齢者の希望の実現」、「地方へのひとの流れの推進」、「東京圏の高齢化問題への対応」の3点とされています。
しかし、構想が明らかになってからは、地方に高齢者向け住宅や要介護者向け施設を作るための補助金政策と受け止められてしまい、受入側の地方自治体からも、「姥捨て」「働けなくなった老人の都会からの追い出し」「福祉負担の地方への押し付け」などの反響が寄せられました。
今回の最終報告書では、それらの声に配慮し、中間報告書よりも踏み込んだ表現が見られます。
自分の意志で移住、健康な50代も対象と明記
特に、次の3点が注目されます。
- 移住対象を「入居者の年齢は、中高年齢期における早めの住み替えや、入居する地域での活躍を念頭に、50代以上を中心とする」とし、高齢者のみを対象としているのではないと明記した。
- 「住み替えの意向のある高齢者の希望の実現を図る選択肢の一つとして推進するものであり、高齢者の意向に反し移住を進めるものではない」と明言した
- 「入居対象者は、生涯活躍のまち構想の基本理念を理解した上で、入居希望の意思が明確な者」とし、「丁寧な相談」や「お試し居住」などの支援策を明記した
もともとCCRC構想自体が、介護を必要としていない健康な状態で移住し、コミュニティの中で活動していくことを含んでいます。しかし、今回の最終報告書では、対象年齢を50代まで引き下げ、現役世代の移住に重点を置いていることを明記しました。
また、「本人の意志による移住」「お試し居住などによる意思の確認」など明記することで、本人の意志を伴わない症状の人の移住や、深く検討しない状態での移住を避けるという態度が明確にされています。
地域の発展のきっかけに
最終報告書は次のような期待の言葉で締めくくられています。
『「生涯活躍のまち」構想は、単に「生涯活躍のまち」をつくることだけを目的としているわけではない。人口減少時代においては、この「生涯活躍のまち」構想に向けた取組をきっかけとして、地域の魅力・地域の力の掘り起しや再発見につながり、あるいは他の政策や取組を巻き込む形で、それぞれの地域が維持・発展していくことを、有識者会議として期待したい。』
これから、来年度に向けて構想が具体化していくなかで、この期待が実現することを希望しましょう。