取引先の倒産に備え、節税にもなる「経営セーフティ共済」

[2015/12/24 00:01]

取引先の万一に備える「経営セーフティ共済」

フリーランス(個人事業主)にとって、売掛金のある取引先が倒産するというのは悪夢です。

その悪夢に備えるための制度が、経産省の外郭団体である「中小企業基盤整備機構(中小機構)」が提供している「経営セーフティ共済」です。

この制度は、1社が倒産したことによる連鎖倒産を避けるための貸付制度です。共済の加入者は、毎月一定の金額を積み立てておきます。取引先が倒産したら、積み立てた共済金の10倍まで無担保、無利子、保証人なしで貸し出してくれます。

また、運転資金などで現金が必要な際には、積立金の範囲内で貸出を受けることもできます。

さらに、この積立金は、法人であれば損金、個人事業主であれば経費として控除できるため、手持ちの資金を掛金として積み立てることで節税にもなります。

とくに特定の1~2社に収入が偏っている場合には「経営セーフティ共済」は頼りになる制度なので、ぜひ覚えておいてください。

ここからは、「経営セーフティ共済」の要点を箇条書きで紹介します。

1年間営業していれば個人事業も対象

まず、この共済の加入条件を見てみましょう。

  • 個人事業主を含む中小企業を対象とする
  • 1年以上継続して事業を行なっている
  • 「法人成り」の場合、法人化して1年未満であっても、個人事業の開業日から1年以上経過していれば加入できる

法人だけでなく、個人事業主でも事業が1年間続いていれば対象です。

毎月の掛金は毎月20万円まで設定できる

次に、毎月の掛金を見てみましょう。

  • 毎月の掛金は5,000円から20万円の範囲(5,000円刻み)
  • 預金口座振替のみ
  • 減額や増額もできるが、一定の手続きが必要
  • 将来払い込む掛金を、まとめて前払いできる
  • 前払いの場合、少しだけ割引される
  • 掛金の積立限度額は800万円
  • 共済の掛金は、法人であれば損金、個人事業主であれば経費になる

毎月の掛金の上限が20万円と大きいので、1年間で240万円まで掛金を積み立てることができます。さらに、前払いもできます。

共済金の貸付け

「経営セーフティ共済」の一番の目的である、取引先が倒産した際の共済金の貸付けについて見てみましょう。

  • 取引先の倒産により売掛金の回収が困難となった場合に、共済金の貸付けが受けられる
  • 貸付額は、回収困難になった売掛金の額と、掛金総額の10倍のいずれか少ない額
  • 共済金の貸付けは、無担保、保証人なし
  • 無利子だが、払い込んだ掛金から、貸付金の10分の1に相当する額が取り崩され、掛金の権利が消滅する
  • 返済期間は最大で7年。5千万円未満なら5年
  • 未払月数が5カ月に達すると、違約金を含む貸付残高が一括請求される

「経営セーフティ共済」では、掛金が積立限度額の800万円溜まっているときに、取引先が倒産したら、最大で8,000万円まで、無担保かつ保証人なしで貸しつけてもらえます。

ただし、貸付金額の1/10分の掛金は取り崩されてしまいます。取り崩された掛金は、利息と保証金代わりと思えば良いでしょう。

運転資金の貸出もある

取引先に支障がなくても、手元の運転資金が足りなくなるということはあります。そういうときに「一時貸付金」という制度があります。

  • 金額は30万円以上(5万円単位)
  • 掛金をもとに計算される解約手当金の95%の範囲内
  • 返済期間1年。一括返済
  • 用途は事業資金(運転、設備)のみ
  • 貸付利率は変動。現状は0.9%
  • 無担保、無保証人

「一時貸付金」制度を利用すると、ほぼ積み立てた額に近い現金が貸し出してもらえます。手持ちの運転資金が足りない場合でも、共済を解約しなくてすみます。

いつでも任意で解約できる

共済は任意の時点で解約できます。

  • 12カ月以上掛金を払い込んでいると、「解約金」という名前で掛金の大半が戻ってきます
  • 40カ月以上掛金を払い込んでいると積み立てた掛金の全額が戻ってきます
  • 解約手当金は法人の場合は益金の額、個人の場合は事業所得の収入金額となります

個人事業を廃業するときなどに、年齢などに関わらず、いつでも解約できるのは経営セーフティ共済の利点です。ただし、積立期間によっては「解約金」が出なかったり、減額されるので、よく確認しましょう。

また、解約金は事業所得なので規定の所得税がかかります。収入の少ない年を選んで、解約するようにしましょう。

1年間で最大240万円の経費ができるので節税になる

節税面から見た「経営セーフティ共済」の最大の特徴は、毎月の掛金の金額が20万円と大きいことです。

つまり、月に20万円ずつ積み立てると毎年240万円が、経費または損金として控除できます。これだけ大きい金額が控除できると、課税される所得金額が下がります。手元に現金を置いておくよりも、ずっと節税になるわけです。

また、前払いした掛金については、前納の期間が1年以内ならば、12カ月分まで経費として認めてもらえます。

事業が順調で、資金に余裕があるときこそ、「経営セーフティ共済」で万一の事態に備えましょう。

[シニアガイド編集部]