去年、高額な医療費がかかった人は、少しでも取り戻す準備を始めよう
去年の医療費を取り戻そう
年が改まった1月は、新しいことを始める月であるとともに、昨年やり残したことを持ち越さないように片付ける月でもあります。
昨年中にケガや病気などで多くの医療費がかかった方は、1月のうちに、医療費の総額をチェックしておきましょう。うまく制度を利用すれば、その一部が取り戻せる可能性があります。
今回は、「高額療養費制度」と「医療費控除」という2つの制度を利用して、昨年かかった医療費の一部を払い戻してもらう方法を紹介します。
まず、「高額療養費制度」から紹介しますが、すでに、この制度を利用している方は「医療費控除」の項目まで飛ばしてお読みください。
手術などで大きな出費があった人は「高額療養費制度」をチェック
高額療養費制度は、「1カ月間にかかった医療費が、収入から定められた自己負担限度額を上回っていたら、限度額を越えた分を払い戻して貰える制度」です。
基本的には、医療費を支払った人が、自分で申請しないと払い戻ししてもらえません。
また、払い戻しの申請には「2年間」という期限があり、それを越えると無効になってしまいます。
つまり、今年中に申請しておかないと、昨年かかった医療費について高額療養費制度からの払い戻しがもらえなくなってしまいます。
あなたの医療費が、高額療養費制度の対象になるかどうかは次の項目をチェックします。
- 昨年の医療費の領収書を集め、月単位で集計する
- 健康保険の被保険者の収入によって決まる「自己負担限度額」を超えている月がないかチェックする
- 超えている月があったら、高額療養費制度の対象になるか窓口に相談する
自己負担限度額については、下記の表で確認してください。だいたい、表の(3)か(4)に該当する人が多いので、1カ月間の医療費が57,600円または80,100円を超えていたら、高額療養費制度の対象になる可能性があります。
ただし、高額療養費制度は、細かい規定が多い制度です。使えると思っていても対象外という場合も多いので、申請する前に、社保であれば会社の総務部門か健康保険組合、国保であれば市区町村の窓口にチェックしてもらいましょう。病院の医療相談室などでも相談に乗ってくれます。
そして、無事に申請できても、払い戻しには数カ月かかる場合がありますので、そのつもりで待ちましょう。
なお、さきほどちょっと出た「限度額適用認定証」を取得しておくと、病院からの請求が自己負担限度額の範囲になります。払い戻しに係る手続が不要になりますから、慢性的な病気などで、今年も医療費の負担が見込まれる方は、今のうちに取得しておきましょう。
社保の場合は、会社経由でなく自分で保険組合などに申請する必要があります。国保の場合は、市区町村窓口に相談しましょう。
還付申告して「医療費控除」を受ける
高額な医療費の一部を取り戻す方法として、もう1つ「医療費控除」があります。
医療費控除は、「高額な医療費がかかったら、その分を税金を計算する収入(所得)から差し引いて計算し、取り過ぎた税金を返してくれる」という制度です。
医療費控除を受けるための流れは、次のようになります。
- 昨年の医療費の領収書を集め総額を集計する。家族の分もまとめてで良い
- 総額が10万円を超えていれば、医療費控除の対象となる
- 税務署に還付申告する
まず、年収が少ない場合は、10万円以下でも医療費控除の対象となる可能性があります。ご自分の所得を確認しましょう。
医療費を集計する際は、民間の生命保険などで支給される入院費給付金や、健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などは差し引いて計算します。
還付申告は、病院などの領収書が揃っていれば、税務署の窓口で相談しながら書類を書くことができます。還付申告は1月から受け付けてくれます。3月になると、確定申告で税務署が混みますから、早めに相談に行きましょう。
また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」に用意されている、専用のExcelフォームに領収書のデータを入力しておくと、書類の作成が簡単にできます。パソコン操作に慣れた方は「確定申告書等作成コーナー」を利用して書類を作成し、印刷した書類を持っていくことをお勧めします。
医療費控除は、10万円を越えた金額のすべてが返ってくるわけではなく、普通はその1~2割ぐらいの金額分しか戻ってきません。ただし、申告をすることで、住民税も同じぐらい安くなりますので、それをはげみにして作業をしましょう。
自分の知識で、自分のお金を取り戻そう
高額療養費制度も、医療費控除も、大変よく出来た制度で医療費の負担を大きく減らすことができます。
思いもかけなかったケガや病気で入院や手術をした身にとっては、大変ありがたい制度です。
しかし、これらの制度は、自分で申請しないと利用できません。
こういう制度への知識が、療養生活の負担を軽くしてくれます。
ぜひ、ご自分で利用するだけではなく、身の回りに入院した方などがいたら「こういう制度があるよ」ということを教えてあげてください。