国民健康保険料が高いときに考える「国民健康保険組合」への加入
同業組合に近い国民健康保険組合
自営業(フリーランス)が加入している医療保険制度は、「国民健康保険」(国保)です。
国保の事業を運営しているのは、主に市区町村ですが、もう1つ「国民健康保険組合」があります。
国民健康保険組合は、同じ事業や業務に従事している300人以上の人で構成されています。
市区町村による国保が、住んでいる場所で加入資格が得られるのに対し、国民健康保険組合は、職種や業務によって加入資格が得られる点が異なります。ただし、国民健康保険組合の大半は加入できる地域も限定しています。
フリーランスの間で、国民健康保険組合が注目されるのは、保険料を削減できる可能性があるからです。
市区町村の国保の保険料は収入に比例して高くなりますが、国民健康保険組合の保険料は収入に関係なく固定の場合が多いのです。
ただし、国民健康保険組合に加入するには、一定の資格が必要です。ここでは、どういう国民健康保険組合があって、どのような資格が必要なのかを簡単に紹介しましょう。
なお、フリーランスでも法人化している場合は、社会保険(協会けんぽ等)の強制適用となります。国民健康保険組合は個人事業主対象ですのでご注意ください。
国民健康保険組合がある業種
歴史的な経緯もあって、国民健康保険組合がある業種は限られています。
厚生労働省の資料によれば、「建設」32組合、「一般」39組合、「三師」92組合、「全国土木」1組合で、合計164組合しかありません。なお、「三師」は「医師」「歯科医師」「薬剤師」を指します。
建築、土木、三師は、専業色の強い分野ですので、普通のフリーランスが入れる可能性があるのは「一般」に属する39組合となります。
「一般」業種でもかなりの制限がある
この画面は、「一般」業種に属する国民健康保険組合の一覧です。
ご覧いただくとわかるように、ホームページを設置していない組合も多く、ホームページがあっても地域や職種の関係で加入が難しそうな組合も多く見られます。
たとえば「東京都弁護士国民健康保険組合」や「関東信越税理士国民健康保険組合」は、その職種に属していなければ加入できませんし、「福井食品国民健康保険組合」や「京都花街国民健康保険組合」は、地域が限定されることが予想されます。
なんとか、加入できそうな国民健康保険組合を見つけたとしても、加入時には次のような書類や証明が必要となります。
- 所得税の確定申告書B控 第一表・第二表・所得の内訳書など職業・所得に関する様式
- その職業についていることがわかる活動の証明物(作品の写し、または作品の一覧など)
- 市区町村の国民健康保険に加入していることの証明(未加入期間がないこと)
- 国民健康保険組合に参加している同業団体の組合員証
つまり、その職業できちんと生計を立てており、法人などに所属せず、市区町村の国保に加入していることの証明が必要となります。
市区町村の国保の被保険者が3,397万人なのに対して、国民健康保険組合の被保険者を合計しても295万人しかいません。さらに「一般」業種に限れば36万人です。この数字からも、そう簡単に加入できるものではないことがわかります。
国民健康保険組合の保険料の例
国民健康保険組合の保険料の例として「文芸美術国民健康保険組合」の保険料を紹介しておきましょう。
- 組合員1人月額16,900円 (医療分 13,800円、後期高齢者支援金分 3,100円)
- 家族1人月額8,700円 (医療分 5,600円、後期高齢者支援金分 3,100円)
- 介護保険料1人月額3,600円(満40歳から64歳までの被保険者)
文芸美術国民健康保険組合では、収入に比例する「所得割」がなく、保険料が固定となっているため、収入が多い個人事業主は負担が軽くなります。
ただし、収入が少ない場合でも金額は固定で、市区町村の国保のように減免などの処置は用意されていません。つまり、収入が少ない場合は、市区町村の国保の方が有利になる可能性もあります。
また、国民健康保険組合でも「東京芸能人国民健康保険組合」のように、所得割を取り入れている組合もあります。
国民健康保険組合への加入を検討している人は、まず加入条件が見たせるかどうかを確認しましょう。その上で、現在納入している市区町村の国保の保険料を家族の分も含めて確認し、加入後の保険料を試算して比較することをお勧めします。