2万円からお願いできるインターネット戒名授与サービス

[2016/2/18 05:29]

戒名とお布施の関係

「戒名」は、仏弟子になった印として与えられる名前です。お墓や位牌に書かれている名前と言えばわかるでしょう。

一般の人は、亡くなってからいただくことがほとんどですが、出家しているお坊さんは生前から戒名を持っていますし、入信の際に必ず戒名を授ける仏教系の教団もあります。

戒名を授けていただくのは、本来は宗教的行為ですので、対価はありません。お包みする「お布施」は直接の対価ではなく、謝礼です。したがって、葬儀の打ち合わせの際にお坊さんに聞いても「おこころざしで」と言われます。

そういうときは、葬祭業者に助けを求めると、それなりの「相場」を教えてくれます。その金額は、数十万円から百万円以上という大きなものであることが多く、その金額に対する驚きを記している本やブログはたくさんあります。

そういう不満を受けて、最近ではインターネット上で、料金を明記して戒名を授与するサービスが増えてきました。

ここでは、戒名をつけてくれるサービスについて紹介し、どういう人がどのように使うのに向いているかという情報もお知らせします。

なお、宗派によっては、戒名ではなく「法号」「法名」という正式名称がありますが、ここでは説明をわかりやすくするために、「戒名」で統一します。ご了承ください。

戒名の相場

では、実際の戒名の相場とは、どれぐらいの金額なのでしょうか。

インターネット上で戒名をつけてくれる「てらくる」では、「一般価格」として相場表を掲載しています。

この価格例は、実際に見聞きしている例と照らしあわせても、だいたい妥当な金額だと思われます。

なお、伝統的仏教を代表する「全日本仏教会」では、このようなお布施の一覧表を掲載することに対して批判的で、いくつかの例については削除要請を出しています。ニュースリリース

  1. 「信士(しんし)」「信女(しんにょ)」「釋(しゃく)」「釋尼(しゃくに)」 15~30万円
  2. 「居士(こじ)」「大姉(だいし)」「院信士(いんしんし)」「院信女(いんしんにょ)」 30万円~50万円
  3. 「院釋(いんしゃく)」「院釋尼(いんしゃくに)」「院日信士(いんにちしんし)」「院日信女(いんにちしんにょ)」 80万円~
  4. 「院居士(いんこじ)」「院大姉(いんだいし)」 100万円~

「院」という文字が入っている下の2つは、「院号(いんごう)」と言って位が高い戒名です。

インターネットでの戒名は2万円から

「てらくる」で戒名の授与をお願いすると、次のような金額になります。

一般的な相場に比べて、5分の1ぐらいの目安でしょうか。

  1. 信士/信女、釋/釋尼 2万円
  2. 居士/大姉、院信士/院信女 6万円
  3. 院釋/院釋尼、院日信士/院日信女 16万円
  4. 院居士/院大姉 20万円

同じように戒名を授与してくれる「お坊さんjp」では、戒名料は2万円~15万円です。「院釋」と「院釋尼」のみ「ご相談」となっています。

同業の「お坊さん便」では、戒名料は2万円~20万円となっています。こちらは「院釋」「院釋尼」についても価格が明記されています。

さらに、東京本寿院が主宰している「戒名の会」では、戒名のランクに関わりなく「一律3万円」で戒名を授けてくれます。

つまり、数万円の「戒名料」を支払うことで、誰でも簡単に戒名が手に入る時代となっているのです。

なお、寺から授与されるのではく、自分で作っても良いという方には、無料で戒名が作れる「電網山戒名寺」というWebサイトもあります。

戒名授与サービスを利用する場合の注意

お寺に比べて格安で戒名がいただける戒名授与サービスですが、2つ注意点があります。

  • 墓が寺の霊園にある場合は、勝手に戒名を付けると納骨させてくれないことがある
  • 安いからといって、むやみに高いランクの戒名をつけるとトラブルになる場合がある

寺に墓がある、つまり菩提寺(ぼだいじ)のある人を檀家(だんか)と言います。この場合、寺は単に納骨する場所ではなく、読経や戒名などの儀式を含めた宗教の場となります。

そこに、「今度、父が亡くなりまして、納骨をさせてください。葬儀は済ませました、戒名はこれです」と言っても通りません。宗教的儀礼をないがしろにしていると受け取られます。

最悪の場合、納骨を拒否される可能性もありますし、そこまで行かなくても、戒名を付け直しさせられた例があります。

菩提寺のある方は、インターネット上のサービスを利用する前に、まず菩提寺に相談しましょう。

また、戒名のランクについては、先祖や家族と合わせるという暗黙のルールがあります。

特に先祖代々の墓に入る場合、親や兄弟とクラスを揃えることが、世間的な常識となっています。

もちろん、これは明文化されたルールではありませんが、兄弟で同じ墓に入ったときに、弟のほうだけが院号付きだったので兄の遺族と疎遠になったという実例があります。

戒名は、その人の生涯の評価という側面もあるので、クラスが異なると、心穏やかではいられない人が出てくるのです。

また、自分の代で独立した墓を立てる場合でも、妻が院号付き、夫が「信士」というように、夫婦でクラスが異なるとバランスが悪いと言われます。

むやみに院号付きにしようと考えるのではなく、自分の周囲とのバランスも考えて戒名のクラスを選択しましょう。

戒名のなかった親族に戒名をつけてあげるべきか

一人あたり数万円で戒名が貰えるのであれば、これまで戒名がなかった親族に戒名をつけてあげたいと思う方もいらっしゃるでしょう。

ここで戒名にまつわる2人の故人の実例を紹介させていただきます。いずれも筆者の親族です。

・ケース1

1人目の親族は、寺に先代からの墓があり、自分もそこに入りました。

戒名は墓のある寺の和尚さんが、付けてくださいました。

その和尚さんは、普段からお盆にはお経を上げにきてくれていましたから、故人とも顔なじみで人柄もよくご存知でした。

その和尚さんは、戒名をくださるときに親族を集めて、次のようなお話をしてくださいました。

「~さんは、こういう方だったから、この字が良いと思って入れさせていただました。また、こちらの字はこういう意味で~さんのご職業にふさわしいものとして選ばせていただきました」

親族のものも「~さんらしい良い名前です」「いい名前をつけていただけてよかったねぇ」と、故人のために喜んでいました。

故人は、檀家としての文化の中で生き、そのように弔われることを望んでいました。周囲の親族もそれをよく知っているので、故人のために良い戒名がいただけたことを素直に喜んでいました。

具体的には葬儀での読経のお礼も含めて、数十万円程度のお布施をつつんだと思いますが、その金額については「読経」と「戒名」がもたらしてくれた「葬儀」という文化の恩恵を考えれば高いとはまったく思いませんでした。

この場合は、いただいた戒名を故人も喜んでいたでしょうし、故人を弔う親族一同の心にとっても戒名をいただくという行為が、死別した悲しみをいやす手段として有効でした。

これは戒名をいただく意味があった例です。

・ケース2

もう1つ別の例を紹介します。

2人目の親族は、地方から上京してから、実家や寺とは、まったく付き合いがありませんでした。

死にあたっての葬儀への希望は一切なく、家族の意向で読経も戒名もない「無宗教葬」で送られました。

位牌もなく、墓石には戸籍名が刻まれています。

しかし、その親族は大変良い人柄で、生前から周囲の人に愛されていました。

その人に戒名がなかったからと言って、死後に困った状態になっていると思っている人は誰もいません。

思い出話の席では、「~さんは、きれいに成仏しているよ」と複数の人が言いました。仏弟子になったわけではありませんから、成仏というのは正確な言い方ではありませんが、気持ちはよくわかります。

この故人と親族にとって、戒名は必要のないものだったのです。

これら2つの例からわかるように、故人が生前に戒名を求めていたのであれば付けてあげるべきですし、それにこだわっていなかったのであれば、あえて後から付けてあげる必要はないと思います。

ただし、どうしても、あなたが故人の戒名を必要とするのであれば、授与していただけば良いでしょう。そのことによってあなたの中で故人を想う気持ちが納まるのであれば、戒名は役に立ったわけです。

付けないと決めた場合でも、あなたが故人はどう考えていただのだろうと想う気持ちがあれば、それだけで故人は十分に満足してくださるでしょう。

[シニアガイド編集部]