家族がニートになったときのために覚えておきたい国民年金の「若年者納付猶予制度」

[2016/3/3 02:07]

ニートでも国民年金の支払いは待ってくれない

国民年金は、日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人が「第一号被保険者」になり、毎月の保険料が徴収されます。

例外は、厚生年金や共済組合に入っている「第二号被保険者」と呼ばれる人と、その配偶者に扶養されている「第三号被保険者」と呼ばれる人だけです。

家族の誰かが、いわゆる“ニート”などの無職に近い状態になっても、放置しておくと保険料の請求が止まりません。

現在の国民年金の保険料は月に「16,260円」なので、未納を続けていると、アッという間に請求金額が大きくなります。

収入が少ないのに、数十万円単位の請求書が送られてくると、それだけで気分も萎えます。

しかも、最近は保険料の取り立てが厳しいので、最後は差し押さえまであります。

こういうときに利用したいのが「若年者納付猶予制度」です。

これは、30歳未満で収入が一定限度以下の場合は、国民年金保険料を「猶予(ゆうよ)」、つまり待ってくれます。

2016年7月1日からは、対象年齢が「30歳未満」から「50歳未満」に拡大されることも決まっています。

ぜひ、この制度を覚えておいてください。

単身者なら年収57万円以下が対象

「若年者納付猶予制度」の特徴です。

  • 対象となるのは自分の収入だけで、世帯主の収入が高くても関係ありません。
  • 対象となるのは収入が「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円」以下の場合、つまり単身者なら57万円、結婚していたら92万円以内です。
  • 猶予期間は年金を受け取るために必要な受給資格期間に入ります。つまり、万一の時に、障害年金などを貰い損なうことありません。
  • 保険料の納付期限から2年を経過していない期間なら、さかのぼって免除が申請できます。
  • 猶予期間中は、将来の年金額は増えません。
  • 書類は記事の末尾にあるページからダウンロードできます。手続きは市区町村の窓口へ郵送すれば終わります。
  • 申し込みにあたって収入を証明する書類の添付は必要ありませんが、年末調整か確定申告をしてないと、市区町村民税の申告が必要になります。
  • 猶予された保険料は、10年以内ならあとで払うことができます。
  • 平成26年度末(2014年度末)の時点で、44万人が利用しています。

市区町村民税の申告は、ちょっと手間ですが、1回やっておくと収入の証明書が取れるようになるので、やっておきましょう。

また、例えば57万円をちょっと超える年収がある場合、若年者納付猶予制度の対象にならなくても、半額などの免除申請の対象となる場合があります。書類は共通なので手間はかかりません。一度、窓口に相談してみましょう。

ある人は、若年者納付猶予制度の最大のメリットは、うっとおしい保険料の請求書が来なくなることだと言います。その気持はよくわかります。44万人と多くの人が利用している制度ですから、ぜひ気後れせずに手続きをしてください。

今は学生も国民年金の対象で、別の免除制度があります

最後に、家族の国民年金保険料について、よくある誤解を2つ解いておきましょう。

「あれは、社保の扶養に入れているから年金は関係ない」
自宅に若年者納付猶予制度の対象になりそうな子供を抱えている方に、制度について説明しようとすると。こう、おっしゃる方がいらっしゃいます。つまり、健康保険の扶養と、年金の扶養とがごっちゃになっているわけです。年金の場合、子供を扶養にすることはできません。「妻以外の家族が社保の扶養になっていても、年金は個人個人に請求が来る」と覚えておきましょう。
「あれは、大学に学籍を残してあるから年金の保険料は払う必要がない」
これは、半分だけ正解です。1991年までは学生は国民年金の対象外だったのですが、現在は学生も含めて強制加入となっています。ただし、学生については若年者納付猶予制度ではなく、「学生納付特例制度」という別の制度で猶予してもらえます。日本国内の大学、大学院、短大、専門学校、高校などが対象となっています。
[シニアガイド編集部]