2025年に東京圏の介護施設は不足する!?
東京圏の介護施設は不足する
2015年6月に、「2025年には東京圏の介護施設の不足が深刻化する」という警告が、日本創生会議という民間の有識者会議から発せられました。
発表時の資料を基に、日本創生会議が何を警告したのか、それは、どれぐらい心配すべきことなのかを見直してみました。
なお、ここでいう東京圏とは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の一都三県を指しています。
日本創生会議のシナリオ
日本創生会議のシナリオを簡単にまとめると、次のようになります。
- 東京圏の後期高齢者は2025年までの10年間で「175万人」増える。これは全国の3分の1を占める
- 東京都区部に比べて、千葉県、埼玉県、神奈川県の方が高齢化率が高くなる
- 2025年の介護需要は、東京圏全体で増える
- これまで東京都区部は、医療については周辺からの需要を受け入れ、介護については周囲を頼ってきたが、それが不可能になる
- 東京圏全体で介護施設の不足が深刻化し、高齢者が施設を奪い合う状況になる
- 東京圏へ介護を担う人材や費用が集中し、地方消滅が加速する
このシナリオが、どれぐらい信じられるものなか、プレゼンに沿って考えてみましょう。
東京圏の後期高齢者は175万人増える
まず、後期高齢者が175万人増えるという推計は、国立社会保障・人口問題研究所の資料がベースです。例えば、国土交通省などの将来計画案などでも、この数値が使われていますから信じて良いでしょう。
東京都区部の人の移動は特殊である
日本創生会議のシナリオで面白いのは、これに年代別の移動状況をからめて分析しているところです。
つまり、東京圏の中でも、東京都区部は特別で「10代~20代」の若い層を集めており、「60代以上」の高齢層を東京圏内の他の地域へ出しています。
若い層は進学や就職で東京都区部に集まり、定年退職後に都下や周辺の県へ出ているというわけです。
周辺地域も介護施設が不足する
とくに、75歳以上の後期高齢者を収容する住宅や施設について見ると、東京都区部は貧弱で需要に応えきれていません。
2015年の時点では、周辺の地域は収容能力に余裕があるので、そちらに流出しているわけです。
それが、2025年には、周囲の地域も自分のところの高齢者だけで満杯にになってしまうため、東京都区部の後期高齢者は行き場を失ってしまいます。
「東京圏の介護施設は不足する確率が高い」
高齢化が進むにつれて東京圏での介護施設が不足するという指摘は、新しいものではありません。
例えば、2011年に公開された国土交通省の資料でも、要介護者の増加を警告しています。
日本創生会議のシナリオの新しいところは、3つあります。
- 人の移動を細かく追うことで、若い層を集めて高齢者を外に出すという、東京都区部の特性を明らかにした
- 東京都区部以外の東京圏でも、都区部の高齢者を受け入れる余裕がなくなることを明らかにした
- 問題の解決を東京圏や首都圏だけにとどまらず、受け入れる余裕のある地域への移住という提案をした
このシナリオについては、公開後に次のような指摘がなされています。
- 周辺の県について言えば、介護施設などの建設余地は大きく、ここまで不足しない
- 移住促進を行なっても、実際に移住に至る人の数は少なく、実効性に疑問がある
いずれにしても、東京圏での高齢者の増加は、確実な情勢です。
すでに、東京都豊島区のように、姉妹都市である埼玉県秩父市と提携して特別養護老人ホームを建設する計画を検討するところも出てきています。
とりあえず、地方移住も含めて、自分や親の老後生活を考える時に、「東京圏の介護施設は不足する確率が高い」ということは頭に入れておいた方が良さそうです。