国民健康保険保険料の地域差は最大6.2倍!?
単純比較しにくい国民健康保険の保険料
フリーランスなどが加入している国民健康保険の保険料は、地域差が大きいことで知られています。
しかし、実際に、保険料を比較しようとすると、次の2つがネックになります。
- 国民健康保険は市区町村単位で運営されており、市区町村単位で保険料が異なる
- 保険料の計算は、収入や世帯の人数によって行なわれるため、家族構成によって保険料が大きく変わる
例えば、単身者と家族が多い世帯では、保険料が安い市区町村が異なります。同じように、収入が保険料に大きく影響する地域と、さほど影響しない地域があります。
ここでは、厚労省のサイトで公開されている「市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」という資料を使います。
この資料は、統計的な分析を行なうことで、先に挙げた2つの問題を乗り越えて、保険料が安い地域と高い地域を割り出したものです。
この資料を基に、国民健康保険の安い地域を探してみましょう。
所得水準に応じた3つの指数で比較
厚労省の資料は、各地の保険料に統計的な処理を施し、3つの指数を計算しています。
- 「標準化指数」
- 平均所得者の保険料水準を示す指標
- 「応能割指数」
- 中高所得者の保険料水準を示す指標
- 「応益割指数」
- 低所得者の保険料水準を示す指標
「~指数」という言葉は難しいですが、自分の所得に合った指数がどれかだけ覚えれば大丈夫です。
なお、いずれの指数も数字が大きいほど、保険料が高くなります。
県別で見ても最大1.8倍の格差
まず、だいたいの地域差を見るために、県別に3つの指数を見てみましょう。
- 標準化指数
- 最も高いのは徳島県、最も低いのは東京都で、1.5倍の格差
- 応能割指数
- 最も高いの徳島県、最も低いのは東京都で、1.8倍の格差
- 応益割指数
- 最も高いのは石川県、最も低いのは埼玉県で、1.7倍の格差
都道府県別で比べても、指数によっては1.8倍もの格差があります。
下の地図を見て、赤っぽいところが指数が高いところ、青っぽいところが低いところです。
同じ県内でも格差がある
さきほど紹介したように、国民健康保険の保険料は、市区町村ごとに異なります。
したがって、同じ県内であって、保険料に格差があります。
まず、県内の格差の大きさを見てみましょう。
- 標準化指数
- 格差が最も大きいのは北海道(2.6倍)、最も小さいのは滋賀県(1.3倍)
- 応能割指数
- 格差が最も大きいのは北海道(4.9倍)、最も小さいのは滋賀県(1.2倍)
- 応益割指数
- 格差が最も大きいのは鹿児島県(3.6倍)、最も小さいのは富山県(1.3倍)
やはり、面積が広い北海道は、地域ごとに事情の差があるのか、市区町村レベルでの格差が大きいようです。しかし、4.9倍というのは大きいですね。
下の市区町村別の地図を見ても、同じ県内でも色が混ざってまだらになっているところがあるのがわかります。
市区町村別では、最大6.2倍の格差
次に市区町村別の指数を見てみましょう
- 標準化指数
- 最も高いのは徳島県阿波市、最も低いのは東京都青ヶ島村で、3.7倍の格差
- 応能割指数
- 最も高いのは沖縄県多良間村、最も低いのは北海道幌加内町で、6.2倍の格差
- 応益割指数
- 最も高いのは北海道苫前町、最も低いのは鹿児島県三島村で、5.0倍の格差
最大6.2倍という格差の大きさには驚きます。
しかし、厚労省の分析によれば、約8割の市区町村では、標準化指数は0.8~1.2の範囲に納まっているということです。
つまり、一部の市区町村が国民健康保険保険料の格差を広げているようです。
また、3つの指数を比較すると、中高所得者の保険料水準を示す「応能割指数」のばらつきが大きいとしています。つまり、ある程度の収入のある人ほど、自分が住んでいる地域の国民健康保険保険料に敏感になったほうが良いでしょう。
2年後に大きな変化があるので、それを見定めてから
国民健康保険には、意外と大きな地域差があることがわかりました。しかし、ここであわてて保険料の安いところに引っ越したりしてはいけません。
実は、2018年度には、国民健康保険の運営は、市区町村から都道府県へと変わります。
これまで、市区町村が責任を負っていた資金面は都道府県が見ることになり、市区町村は保険料の決定と徴収などに仕事が限定されます。
保険料の決定権は市区町村に残るため、市区町村レベルでの差は残りますが、運営主体が都道府県となるため、同じ県内での格差は縮小することが予想されます。
極端に高かった市区町村や、安かった市区町村が、県内のレベルに合わせてくるでしょう。
とりあえず、2年待って、各地の国民健康保険保険料が、どう変わるかを見定めてください。