実は10%以上も課税されている、サラリーマンのための住民税入門

[2016/5/17 00:05]

住民税とサラリーマンは縁遠い?

「あなたの年収はいくらですか」という質問に答えられるサラリーマンは多いと思いますが、「あなたの払っている所得税はいくらですか」という質問に答えられる人は少ないでしょう。

まして、「あなたの払っている住民税はいくらですか」という質問に答えられるサラリーマンには、まだお会いしたことがありません。

「えっ、私って住民税払ってるのですか」と、おっしゃった方も実在します。

しかし、住民税の税率は「10%」です。毎年毎年、結構ばかにならない金額を皆さんは納めているのです。

この記事では、サラリーマンが、どうやって住民税を払っているのか、どれぐらい払っているのか、どうすれば安くなるのか、という基本のところをご紹介しましょう。

所得税は均等割と所得割の組み合わせ

ここでは、東京23区の区民を例にして紹介します。

基本的な仕組みと税率は、ほぼ全国共通ですから、他県の方でも大丈夫です。

23区民の場合、住民税として払うのは、都道府県レベルの税金である「都民税」と、市区町村レベルの税金である「特別区民税」の2つです。

ただ、税金を納める窓口は、区が統一して行なうので、まとめて「住民税」と呼ばれます。

住民税には、収入に関わらず支払う「均等割」と、収入に応じて支払う「所得割」があります。

「均等割」の年額は2023年までは、特別区民税が3,500円、都民税が1,500円で、合計5,000円です。

「所得割」の税率は10%で、そのうち特別区民税が6%、都民税が4%です。

つまり、サラリーマンの方々も、自分の所得の10%+5,000円は、必ず支払っているのです。

住民税は、1月1日に住んでいる場所に払う

住民税はその年の1月1日現在に住んでいる区に払います。

その年の途中で引っ越しをして、別の自治体に引っ越しても、住民税は前の区に払い続けます。

つまり、1月1日にどこに住んでいるかということが重要です。

住民税は天引きなので気が付きにくい

サラリーマンの場合、住民税は「特別徴収」という仕組みで納税しています。

まず、あなたの会社では、前年末の年末調整によって確定した年収や控除に必要な家族などのデータを、あなたが住んでいる区に送ります。

区では、そのデータをもとにして、あなたを雇用している会社に対して、毎年5月に住民税の金額を知らせます。

あなたの会社では、その年の6月から、来年の5月まで、毎月の給与から住民税を天引きして区に納めます。

サラリーマンが、住民税を払っている意識が低いのは、このように、あなたが知らないところで収入が把握され、税額が計算されて、毎月少しずつ天引きされているからです。

特別徴収の仕組み 出典:東京都主税局

住民税を安くする方法

サラリーマンが住民税を安くするためにできる方法は限られています。

なぜなら、年収や家族構成は、会社からデータが行っていますから、誤魔化す余地はありません。

そういう状況で、サラリーマンができることは「控除」の金額を増やすことです。

住民税の所得割は、所得税と似たシステムで、必然性のある費用については「控除」という名前で収入から差し引くことができます。

例えば、「給与所得控除」などは、大きな控除ですが、給与額から計算されてしまうので、自分で増やすことはできません。

しかし、次のような控除は、自分で書類を揃えて申請するので、きちんと書類を揃えておくことで控除額を増やすことができます。

  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除

まず、「医療費控除」は、税務署に還付申請をすれば、その内容が区にも伝わります。

それ以外の控除に該当する支出は、年末調整の際に会社に提出する書類に書くことで、住民税の計算にも利用されます。

また、扶養している家族に関する控除も用意されています。

例えば、「扶養控除」の対象になる家族の数が増えれば、一人あたり最大45万円も控除できます。

住民税の税率は10%ですから、45万円控除されれば、税金が4万5千円安くなります。

これらの控除は、所得税と共通する項目が多いので、控除に相当する項目を意識して増やすことができれば、所得税も安くなります。

会社に提出する書類は、毎年の行事化していて、つい、いいかげんに書いてしまいがちです。

しかし、これが税金を計算する基になるのですから、きちんと資料を揃えて正しく申請しましょう。

これまで意識していなかった住民税の存在を認識し、領収書などを保存して、提出書類を丁寧に記入することが、節税の基本になります。

また、自分がお住まいの自治体のホームページで「住民税」の項目を見ることもお勧めします。

例えば、均等割の金額が平均的な自治体(年5,000円)と比べて高いのか安いのか、そこから確認してみましょう。

[シニアガイド編集部]