葬祭業は、どんな仕事で、どのように人事評価されるのか
厚労省が決める人事評価の標準基準
葬儀を請け負ってくれる「葬祭業」という仕事は、葬儀のとき以外は、あまりお付き合いがなく、どのような仕事なのか内容が想像しにくい部分があります。
この5月に、厚生労働省が葬祭業の「職業能力評価基準」を定めました。
この「職業能力評価基準」は、厚労省が各分野で進めているという人事評価の標準基準で、それぞれの職務に必要な技能や知識を、担当者から組織・部門の責任者まで4つのレベルに整理したものです。
葬祭業の基準を決める際には、業界団体の「全日本葬祭業協同組合連合会」が協力しています。
ある業種の「職業能力評価基準」を見ると、その職業の仕事の内容と、仕事のレベルを上げていくのに必要な知識が分かります。
今回は、これを参考にして、葬祭業という仕事の一端を見てみましょう。
3つの職種、4つの職務に分けられる
職業能力評価基準では、葬祭業を、3つの職種、4つの職務に分類しています。
- 職務「施行業務」
- ご遺族等と打ち合わせを行なって葬儀の段取り準備を整え、会場の設営、式典の運営等を行なうとともに、葬儀後のアフターケア、苦情があった場合の対応等を行なう。
- 職務「企画」、職務「営業」
- 顧客ニーズや、地域動向に対する、新しいサービスの企画・立案や、個人・企業・病院・団体等に対する営業活動を推進する。
- 職務「生花」
- 祭壇や装飾で使用する生花の仕入れ、保管、企画・デザイン、製作、設営・撤収などを行なう。
葬祭業は「施行業務」「企画」「営業」「生花」の4つが、主な仕事と考えれば良いでしょう。
他の業種には無い「生花」が職務として独立していることで、現在の葬儀における「花」の重要性が分かります。
仕切れる仕事の内容でレベルが決まる
実際に、「施行業務」について、各レベルの目安を見てみましょう。
- レベル1
- 葬儀についての基本的な知識と技能を有し、上司の指示・助言を踏まえて日常業務を遂行できる能力水準(呼称例:スタッフ)
- レベル2
- 個人葬における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの一般的な知識と技能を有し、担当業務を独力で遂行できる能力水準(呼称例:主任)
- レベル3
- すべての葬儀における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの詳細な知識と技能を有し、個人葬のみならず、社葬、団体葬等についても業務を統括できる能力水準(呼称例:課長、責任者)
- レベル4
- あらゆる葬儀について体系的かつ網羅的な知識と技能を有し、リーダーシップを発揮して業務全体を統括することでえ、高い顧客満足を実現できる能力水準(呼称例:部長、統括責任者)
まず、スタッフとして働く「レベル1」から始まり、個人葬が仕切れるようになると「レベル2」、社葬が仕切れると「レベル3」、どんな葬儀でも引き受けられると「レベル4」というわけです。
「葬祭ディレクター」との比較で分かる経験の必要性
もう1つ、別の角度から、レベルを上げていく難しさを推測してみましょう。
葬祭業界には、「葬祭ディレクター技能審査制度」という制度があります。
これは、厚労省の認定のもとで行われる資格試験で、「1級」と「2級」があります。
葬祭ディレクターの受験資格は、2級が「葬祭実務経験を2年以上有する者」、1級は「葬祭実務経験を5年以上有する者」が基本となっています。
そして、職業能力評価基準の「レベル2」は葬祭ディレクターの「2級」に、「レベル3」は「1級」に相当します。
つまり、職業能力評価基準のレベル1からレベル2に上がるには、2年の実務経験が、レベル3に上がるためには5年の実務経験が必要となると考えれば良いでしょう。
このことからも、葬祭業は現場で経験を積むことが重要な職業であることがわかります。