山での遭難死の7割は60歳以上が占めている
趣味として定着した「登山」
いまや、「登山」は定年後の趣味の定番の1つです。
日本百名山の制覇とまではいかなくても、東京都の高尾山や富士山に挑む人は、年々増えており、その人出の多さはテレビのニュースになるほどです。
しかし、一方では、山での遭難を伝えるニュースも増えています。
警視庁が公開した「山岳遭難の概況」という資料を基に、シニア層の登山の状況と、遭難を避けるための対策を紹介しましょう。
なお、山での遭難全体の中で「登山」が占める割合は75%ですが、ここでは「山菜・茸採り」なども合わせた数字をみていきます。
遭難件数、死者行方不明者とも過去最悪の状況
2015年(平成27年)の山岳遭難は、2,508件で、遭難者は3,043人、死者行方不明者は335人でした。
いずれも統計の残る1961年以降で最も多い年でした。
また、遭難者のうち11%は、死者行方不明者となっています。
いったん遭難すると、1割以上の人が死亡してしまうわけで、山での遭難の怖さが分かります。
60歳以上の遭難が半数を越える
遭難者を年齢別に見ると、60歳以上のシニア層の遭難が多いことが分かります。
遭難者全体で見ると、60歳以上が51.4%を占めています。つまり、遭難者の半数以上が60歳以上なのです。
また、死者行方不明者の69.9%が60歳以上です。
60歳以上の人がいったん遭難すると、死亡や行方不明などにつながる可能性が高いことがわかります。
遭難の原因は「道迷い」「滑落」「転倒」
遭難の原因を見ると、「道迷い」が39.5%と多く、「滑落」が16.5%、「転倒」が15.3%で続きます。
特に、ここ数年は「道迷い」が増加する傾向にあります。
山岳遭難の防止策
山岳遭難の多くは、知識・経験・体力の不足等が原因で発生していることから、遭難を未然に防ぐため、登山に当たっては、以下の点に注意が必要です。
- 登山計画の作成、提出
- 気象条件、体力、体調、登山の経験等に見合った山を選択し、登山コース、日程、十分な装備、食料等に配意して、余裕のある、安全な登山計画を立てる。
- 単独登山はできるだけ避け、信頼できるリーダーを中心とした複数人による登山に努める。
- 作成した登山計画書は、家庭や職場、登山口の登山届ポストなどに提出しておく。
- 危険箇所の把握
計画を立てるとき、滑落等の危険箇所を事前によく調べる。 - 的確な状況判断
視界不良・体調不良時等には、道迷い、滑落等のおそれがあることから、状況を的確に判断して早めに登山を中止するよう努める。 - 道迷い防止
地図、コンパス等を有効に活用して、常に、自分の位置を確認するよう心掛ける。 - 滑落・転落防止
滑りにくい登山靴、ストック等の装備を有効に使用するとともに、気を緩めることなく常に慎重な行動を心掛ける。
登山は老若男女が楽しめる趣味です。自分の体力にあった山を目指しましょう。
また、山は何度でもチャレンジを待っていてくれます。無理をせずに、安全に帰宅することを心がけましょう。