4年前とはガラリと変わった育児休暇に対する企業の意識
「アイデム 人と仕事研究所」が、パート・アルバイト等の雇用に関する調査を行ない『平成28年版 パートタイマー白書』として公開しています。
今回は、その中から、育児に伴う退職についての企業の意識の変化を拾ってみましょう。
アイデムは、従業員規模100人以上で正社員を30人以上雇用している企業に対し、インターネットによるアンケート調査を行ないました。回答者は、経営者または人事関連部署の監督職以上の者に限定されています。
有効回答者数は1,428社でした。
その結果を平成24年(2014年)の調査と比較すると、社員の育児休暇取得について、企業の意識が変わってきている様子がうかがえます。
女性正社員に対し「育児休業を取得し、復職してほしい」が半数を超える
まず、女性社員が育児休業を取得することに対してどのように考えているかを聞いています。
「育児休業を取得し、復職してほしい」52.5%で一番多く、「どちらかと言えば、育児休業を取得し、復職してほしい」37.8%で、女性正社員の復帰を希望する意向が90.3%を占めています。
平成24年調査と比較すると、当時は「育児休業を取得せずに、退職してほしい」「どちらかと言えば、育児休業を取得せずに、退職してほしい」の合計が25.3%ありましたが、今回は大幅に減少して9.7%となりました。
政府の両立支援の推進などで、4年の間に企業側の意識に変化があったことがうかがえます。
男性正社員の「1年程度の育児休業取得は問題ない」も半分
次に、男性正社員が女性正社員と同様に育児休業(約1年)を取得することに対して、どのように考えているかを聞いています。
「1年程度の育児休業取得は問題ない」が49.9%で一番多く、平成24年調査の24.3%から倍増しています。
「育児を理由とした休暇の取得は、許容できない」も16.9%から5.5%に大幅に減少しており、企業の意識に変化が生じていることがわかります。
女性が意欲を持って働き続けるために必要なこと
しかし、企業側の態度が変わっても、個人と企業の間には、まだギャップが残っています。
「女性が意欲を持って働き続けるために必要なこと」という質問に対して、企業は「女性自身の意識の改革」が40.2%と多く、以下、「夫や家族の理解や協力」「職場の理解や協力」「女性の積極登用」の順となっています。
しかし、女性社員に行なった個人調査の結果は「夫や家族の理解や協力」が47.0%と多く、「職場の理解や協力」が37.5%で続きます。
つまり、企業側は“本人”の問題と考えているのに対して、女性社員は“家庭や職場での理解”など周囲の問題を重要と考えています。
女性の場合、正社員としての再就職は狭き門
上のグラフは、厚生労働省による「平成27年雇用動向調査」からの引用です。
ご覧のように、女性が再就職する場合、フルタイムの正社員ではなく、パートタイムでの雇用となる場合が多くなっています。
これによって、年収の減少を招きやすく、将来的な年金の支給額にまで影響してきます。それぞれの事情はありますが、可能であれば育児休暇を取得して、元の職場に戻る方が金銭面では有利です。
部下や同僚が育児休暇について迷っているときは、「会社の意識も変わりつつあること」と「女性の場合、一度キャリアを離れると正社員としての再雇用が難しいこと」も踏まえた上で、相談に乗ってあげましょう。