「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」公開で、見通しが良くなった障害年金の手続き
障害年金の問題点
公的年金の1つである「障害年金」について、2016年9月に変化がありました。
障害年金は、年金保険料を支払っている人が、心身に障害がある状態になった場合に受給できる制度です。
しかし、「都道府県によって、障害の認定に地域差がある」という問題が指摘されていました。
9月からは、地域差が問題になっていた精神障害の認定についてガイドラインが整備されました。
障害年金は、比較的知名度が低く、受給資格があっても申請していない人も多いといわれています。
この機会に改めて、障害年金の要件も含めて紹介しましょう。
障害年金の「4つの要件」
障害年金を貰うためには、4つの必要条件があります。
- 公的年金加入中に初診日が有る
- 保険料納付要件を満たしている
- 治癒または症状固定または初診日から1年6カ月が経過している
- 障害認定
つまり、公的年金に加入していて、きちんと年金保険料を支払っている人が、1年6カ月が経過して障害の症状が固定した時点で、「障害認定」を申請して認定されれば貰えるわけです。
このうち、「初診日が確認できない」「障害認定が下りない」の2つが難関と言われてきました。
「初診日」については、病院のカルテの保存期間を過ぎるような大昔に初診日がある場合、それを証明することが難しい場合があるのです。
これについては明文化はされていないものの、以前よりは柔軟な対応となり、事実関係が確認できれば手続きできるようになったようです。多少は、相談できる余地はあると思って良いでしょう。
書類の整備で見通しが良くなった
一方、「障害認定」については、都道府県によって地域差があるという問題が指摘されていました。
具体的には、障害認定が下りない「不支給」の数字に差が出るほど、地域によって認定の難易度が異なっていたのです。
厚労省の調査によれば、不支給の割合の全国平均は「12.5%」でした。
しかし、一番高い大分県では「24.4%」、一番低い栃木県では「4.0%」でした。都道府県によって、実に6倍以上の大きな差があったのです。この記事の最後に一覧表を掲載していますので、見比べてください。
厚労省の調査によれば、都道府県によって差があるのは、「精神の障害」の認定です。第三者的に検証しやすい身体の障害に比べて、精神の障害は、判定を行なう担当者によって差が出やすいことが原因とされています。
これを改善するため、厚労省は2016年7月に「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」という文書を公開し、9月から運用を行なっています。
このように、認定のガイドラインを公開することで、地域差が縮小することが期待されています。
また、「記述が難しく、書きようによって合否が変わる」と言われていた「診断書(精神の障害用)」についても、記載要領の文書が公開されました。
これらの文書の公開によって、多少は書類が書きやすくなり、合否の判定基準もわかりやすくなりました。障害年金の受給手続きを進めていく道筋について、見通しが良くなったと言えるでしょう。
相談に行くなら今
今回の措置によって、障害年金が貰いやすくなるかどうかは、まだわかりません。
しかし、ガイドラインを始めとする文書が公開されたことによって、提出する書類が書きやすくなったとは言えます。
また、障害認定を受け付ける窓口においても、このような「お達し」が出た直後は、運用に注意が払われており、丁寧に対応してくれることが予想できます。
つまり、障害年金について相談に行くなら、今は良い時期です。まずは、もよりの年金事務所で相談してみましょう。