副業として注目されている民泊のホストの実情と条件
盛況な民泊ビジネス
「シェアリングエコノミー」の一例として、よく取り上げられるのが「Airbnb(エアビーアンドビー)」という宿泊提供コミュニティです。日本では「民泊(みんぱく)」と呼ばれるサービスの代表格です。
Airbnbでは、ホストが自分が所有している部屋を提供します。借りたい人はゲストとして申し込みを行ない、賃貸料を支払います。
簡単に言うと、インターネットを使った民泊であり貸間ビジネスですが、相互の評価システムが用意されるなど、コミュニティ的な感覚が強調されています。
ホスト側も、ビジネス的に個室を貸し出すタイプや、ホームステイ的な交流を行なうタイプなど、自分のスタイルを打ち出しており、ゲスト側が選択できるようになっています。
日本のシニア・ホストは高い評価
先日、日本のAirbnbが、60歳以上のシニア・ホストについての調査結果を公開しました。
調査結果を基に、シニア・ホストの実態を見ていきましょう。
- 国内のシニア・ホストの数は約900人
- 前年比235%増で、一番増加率が高い
- 男女比は女性約4割、男性約6割
- 36%が退職者及び無職
- 約3割が家計を支える収入源としてホストを実施
Airbnbは、インターネットを使用するシステムですが、ネットに馴染みが薄い60歳以上のシニア・ホストが900人もいるのは驚きです。
また、ホストになる動機として、収入を挙げている人は3割しかいません。この回答ではわかりませんが、人と人とのつながりを求める気持ちがホストになる要因なのかもしれません。
もう少し、シニア・ホストの特徴を見てみましょう。
- 他の年代のホストに比べ、自宅空き部屋などの個室の提供が70%と多い
- ホスト数の比較的少ない地方都市が多い。第1位は和歌山県田辺市で、同市のホスト数の27%を占める
- 100人以下のホストが在住する地域のシニア・ホストは39%を占める
- 70%が5つ星の最高評価を獲得しており、年代別の評価で第1位
- 「 スーパーホスト」の割合は17%で、グローバル平均の7%を上回る
自宅の空き部屋を提供しているホストが多いのは、一軒家に住んでいて、もとは子供部屋だった空き部屋があるのではないかと思われます。
また、地方都市で比率が高いのは、地方の方が高齢化率が高いことが影響しているでしょう。人口が少ないところほど、高齢化率も高いので、シニア・ホストの割合が高くなっているのでしょう。
シニア・ホストの評価は高く、ゲストからの最高評価である「5つ星」を多く集めています。
さらに、条件が厳しい「スーパーホスト」の率が高いことは、シニア・ホストの質が高いことを示しています。
ちなみに、「スーパーホスト」には次のような条件があり、簡単にはなれません。
- 宿泊実績:年に10件の宿泊実績がある
- レビュー:レビューの8割が5つ星の評価を受けていなければならない
- 高い返答率:ゲストに迅速に返答し、90%以上の返答率を維持している
- コミットメント(確約): スーパーホストは確定した予約を履行し、キャンセルしない
スーパーホストが多いということは、日本のシニア・ホストが高い評価を受けている裏付けと言えるでしょう。
ホストになる前に検討すべきこと
しかし、自分でAirbnbのホストを始める前に、検討しておくべきことが2つあります。
- 自宅をホストとして提供できるのか条件を確認する
- 見知らぬゲストを迎えることのリスクについて調べる
まず、「条件の確認」です。
Airbnbを始めとする民泊については、受け止め方について地域差があります。
積極的に肯定している自治体もありますが、「自宅等の建物を活用する場合においても宿泊料と見なすことができる対価を得て人を宿泊させる業を営む場合は、旅館業法に基づく許可を取得する必要がある」として、実質的に規制している自治体もあります。
同様に、マンションを始めとする集合住宅では、管理規約を改定して民泊を禁止している例が増えています。
少なくとも、自治体とマンションの規定については確認しておきましょう。
もう1つはゲストを迎えるリスクです。
国内でも国外でも、見知らぬ人をゲストとして迎えるのは楽しみなことです。
しかも、多くの候補から、自分の家をゲストとして選んでくれたわけですから、歓迎する気持ちが盛り上がります。
しかし、「ゲストに部屋が汚された」「修理費が必要なほど施設が壊された」などのホストの嘆きも多く目にします。
管理規約を改定するマンションが増えているのも、「共有部分の施設を占有して騒ぐ」「共有部分を汚す」「大量のゴミを収集日意外に出す」「階下に響くほど夜中まで騒ぐ」など、他の居住者にまで迷惑を及ぼす例が多くなっているからです。
実際に、Airbnbでも、これらの苦情に対応するために、近隣居住者用の専用窓口を用意しているほどです。
もちろん、宿泊者を迎える前に、ゲストに対する評価を見ることはできますが、見知らぬ人を自宅に迎えることにリスクが伴うことは否定できません。
ある程度のリスクを承知した上で、未知の人との出会いと、多少の金銭に価値を見いだせる人こそが、民泊のホストに向いた人と言えるでしょう。