ちょっと得する「高額療養費制度」の使いこなし方

[2016/11/11 00:00]

高額療養費制度をうまく利用するための知識

病気や怪我などで医療費の負担が大きくなった時のために、健康保険には「高額療養費制度」が用意されています。

「高額療養費制度」は、医療費が一定の限度を超えてしまった場合に、限度額以上の医療費を健康保険が負担してくれる制度です。

通常の健康保険では、自己負担分は「3割」ですが、その3割分の金額でも高額だった場合に、限度額以上の分を「高額療養費制度」が負担してくれます。

この記事では、高額療養費制度を利用する上で、覚えて置くと得をする3つのポイントを紹介します。

なお、高額療養費制度の概要と、それを簡単に使うための「限度額適用認定証」については、記事末の関連記事を参照してください。

お金のかかる医療行為はできるだけ同じ月に収める

日本の健康保険制度では、医療費や保険料などの計算を「月単位」で行ないます。

高額療養費制度も同様で、月単位で計算した医療費が、ある限度を超えると対象となります。

したがって、“手術や検査などのお金のかかるイベントは、できるだけ同じ月に集めるのがコツ”です。

例えば、月末の28日に入院して、翌月の7日に退院すると、医療費は、28日から末日までの分と、1日から7日までの分とに分けて計算されます。

これが、同じ月に入院して、退院すると、医療費はひとまとめとなるので、高額療養費の限度額を越える可能性が高くなります。

同じように、抗がん剤治療などで、2週間に1回の感覚で通院で投薬治療を行なう場合に、1回目の通院と2回目の通院を同じ月にすると、高額療養費の対象になる可能性が増えます。

主治医の先生から、入退院や手術、通院などの日程の希望を聞かれたときは、「できるだけ同じ月内にイベントを集められないか」相談してみましょう。

同じ世帯に医療費がかかる人が2人以上いる場合は合計できる

同じ世帯の中に、医療費がかかる人が2人以上居る場合は、2人の医療費を合計した金額が、高額療養費制度の対象となる「世帯合算」という制度があります。

ただし、それぞれの医療費の自己負担分が、21,000円以上なければ対象となりません。

例えば、2人の自己負担分が4万円ずつだった場合、合計の8万円が高額療養費制度の対象となります。

この世帯の年収が約370万円以下であれば、自己負担限度額は「57,600円」ですから、2万円ちょっと医療費が戻ってきます。
「世帯合算」は、2人の家族が同じ健康保険制度に加入している必要があります。また、片方の家族が70歳以上の場合などは計算の方法が異なるなど、細かい規定があります。

また、同じ人が同じ月内に2つ以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21,000 円以上ある場合も同様に合計できます。

詳細については、必ず、加入している健康保険制度の窓口に確認してください。

なお、加入している健康保険が「組合健保」の場合は、世帯合算も含めて保険組合の方で計算してくれるので、あまり意識する必要はありません。

介護保険と健康保険を両方使っている場合は払い戻し制度がある

高齢者や自宅療養などで、介護保険の対象となっている方は、健康保険と介護保険の両方を同時に使います。

「高額介護合算療養費」は、この2つの保険の自己負担限度の「基準額」を決め、それ以上の金額は払い戻してくれる制度です。

対象となる期間は、毎年8月から1年間で、かかった医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給してくれます。該当者には、2月頃に通知されることが多いようです。

なお、基準額は加入者の収入によって「34万円」から「212万円」の範囲で4段階に分かれています。

「高額介護合算療養費」は2つの保険制度にまたがることや、基準額の変更が頻繁に行なわれることから、少しわかりにくい制度です。また、医療保険と介護保険の自己負担額のいずれかが0円である場合は支給されないなど、細かい規定もあります。不明な点は、保険制度の窓口やケアマネジャーさんに相談しましょう。

[シニアガイド編集部]