お墓を引っ越しする際の費用と手順

[2016/11/22 00:00]

お墓の引っ越しはどうやれば良いのか

最近、テレビなどでも、「お墓の引っ越し」や「墓じまい」が話題に上がるようになりました。

お墓の引っ越しのことを、正式には「改葬(かいそう)」と言います。

改葬には、いろいろな手続が必要で、時間もお金もかかります。

この記事では、メモリアルアートの大野屋の協力により、同社の資料を活用して、改葬の手順や作業内容を紹介します。

改葬の理由

メモリアルアートの大野屋が、改葬を行なった362人に行なったアンケートによれば、改葬の理由の78%は、「お墓が遠くて維持管理が大変」でした。

ほかには、「お墓を守ってくれる人がいなくなった」「家族や親戚から意見があった」「お寺との関係維持が困難」「宗旨が変わった」などが挙がっています。

お墓の移転を考えた理由(複数回答)

また、「改葬にあたって心配したこと」という質問では、「費用」「必要な行政手続」などが挙がっています。

特に「何から始めれば良いのか」が心配だった人が30%もいて、作業の全体像が見えないことが不安につながっていることがわかります。

改葬にあたって心配したこと(複数回答)

改葬にかかる時間と費用

では、「改葬」には、どれぐらいの時間と費用がかかるのでしょう。

このアンケートによれば、改葬にかかった時間は、「3カ月以上6カ月未満」が29%、「6カ月以上1年未満」が28%で、この2つで過半数を占めています。

移転を考え始めてから完了するまで、だいたい半年から1年ぐらいは見込んでおいた方が良いでしょう。

また、改葬にかかる費用は、「全国平均で300万円」となっています。

300万円の内訳は、移転元で52万円、移転費や諸費用で30万円、移転先で218万円となっています。

移転先では新しいお墓を作るので費用がかさむのですが、移転元や移転費などでも、かなりの費用がかかることがわかります。

改葬費用の全国平均は「300万円」。その内訳

引っ越しの4つの方法

改葬にあたって、以前のお墓から墓石を移すか、遺骨のみにするかという選択があります。

アンケートによれば、「遺骨のみ」移す人が57%と多くなっています。

改葬にあたっては、「遺骨のみ」を移す場合が多い

これは、「区画が狭い」「霊園の基準に合わない」などの理由で、引っ越し先の霊園に墓石を移せないことが多いためです。

墓石を移転したいときは、新しい霊園を決める段階から、条件に合うところを探す必要があります。

墓石の移転例

また、遺骨のみを移す場合でも、「遺骨を全部移す」「たくさんある遺骨の一部を移す」「骨壷のなかから遺骨の一部を分骨する」という選択肢があります。

どれを選択するかは、それぞれの事情にもよりますが、選択肢によって役所などの手続きにも違いがあります。

墓地は、そこを管理している霊園や寺社だけのものではありません。

『墓地埋葬等に関する法律』により、「改葬を行おうとするものは、市町村の許可を得なければならない」と定められているため、お墓のある市町村の許可が必要となります。

「改葬」は、勝手に行えるプライベートな作業ではなく、公的な手続きが必要なパブリックな作業なのです。

改葬の流れを知るための10のステップ

改葬を行なうためには、さまざまな作業が必要となります。

ここでは、10のステップに分けて、全体の流れを見てみましょう。

  1. 新しいお墓を探す
  2. 新しいお墓の管理者から「墓地使用許可証」または「受入証明証」を発行してもらう
  3. 新しいお墓の仕様を決め、工事契約を行なう(工事には3カ月程度かかります)
  4. 古いお墓がある自治体から「改葬許可申請書」を取り寄せる
  5. 古いお墓の管理者から「埋蔵証明書」または「収蔵証明書」を発行してもらう
  6. 古いお墓のある自治体に必要な書類を提出し、「改葬許可証」を発行してもらう
  7. 古いお墓から遺骨を取り出す(「魂抜き」などの儀式を伴う場合があります)
  8. いったん自宅などへ、遺骨を安置する
  9. 新しいお墓の完成を確認する
  10. 「改葬許可証」または「墓地使用許可証」を提出して、新しいお墓へ納骨する(「魂入れ」などの儀式を伴う場合があります)

こうやって、整理してみると、改葬にあたっては、以前のお墓のある場所と、新しいお墓を作る場所の両方で作業が必要なことがわかります。

また、新しいお墓を作ったり、古い墓石の撤去には石材店が関わりますし、霊園の管理者や菩提寺の僧侶、地方自治体の窓口との交渉も必要となります。

「改葬」は、思いのほか複雑な作業で、想像以上に多くの人が係る作業なのです。

専門家の活用も考えよう

ここまで見てきたように、「改葬」という名前のお墓の引っ越しは、半年から1年間程度の期間と、平均300万円の費用、そして書類の発行作業や関係者との交渉を伴う大きな作業です。

それだけにメモリアルアートの大野屋でも「お墓の引っ越し おまかせサービス」という名称で、改葬を行なう業務が提供されています。

改葬は、手間のかかる作業ですから、経験のある専門家の知恵を利用することも検討しましょう。

とくに、墓石を移転したいなどの特別な要望がある場合は、「墓石を移すことができる霊園の提案」など専業者ならではのノウハウが期待できます。

やり遂げた後は満足している人が多い

メモリアルアートの大野屋のアンケートによれば、「実際に改葬を終えて苦労した事」として、「移転先の墓地選び」「遺骨の移動」「行政手続」「お寺との調整」などが挙がっています。

実際に改葬を終えて苦労した事(上位3つ)

しかし、改葬を終えた感想は「大変満足」が39%、「ほぼ満足」が55%で、合計で94%の人が「満足」としています。この数字を見ると、改葬に対する満足度は高いと言えます。

「改葬」は大変な作業だけに、やり遂げた後は満足されている方が多いのでしょう。

また、改葬後は「墓参の回数が増えた」という方が71%もいます。

改葬の作業を通じて、もう一度、故人との縁がつなぎ直され、感謝や報告を伝えるお墓参りの機会が増えるのが、一番大きな功徳(くどく)かもしれません。

改葬後は、お墓参りの回数が増える人が多い
[シニアガイド編集部]