「ふるさと納税の返礼品に問題がある」と総務大臣が発言
制度の趣旨に沿わないような返礼品が送付されている!?
「ふるさと納税」制度を管轄している総務省の高市早苗大臣が、ふるさと納税の返礼品について「地方団体間の競争が過熱したり、一部の地方団体において制度の趣旨に沿わないような返礼品が送付されていることは、問題であると認識しております」と、記者会見で発言しました。
ふるさと納税は、指定した地方自治体に寄付を行なう制度ですが、寄付を受けた自治体が「返礼品」と称して品物を贈ることが恒例となっています。
実際には、「和牛」や「ブランド米」など人気のある返礼品を用意することで、ふるさと納税ポータルサイトなどを通じて、寄付を集めることが当たり前となっています。
また、今回の発言のきっかけとなった千葉県勝浦市の「かつうら七福感謝券」のように、その地域で使える商品券やプリペイドカードなども登場しています。
総務省では、過去にも、下記のような要請を自治体に行なっています。
- 寄付金が返礼品に対する対価と誤解されないように、「返礼品の価格」や「寄付額の何%相当」などの表示を行なわない
- 換金性の高いプリペイドカード、高額品や寄付額に対して高価な返礼品を自粛する
もともと、ふるさと納税という制度に、返礼品は含まれていません。自分と縁のある応援したい自治体に、無償の寄付を行なうというのが本来の制度の趣旨です。
しかし、実情としては「どんな返礼品があるか」または「どこに寄付するのが得か」という基準で判断されることが多く、それを促すようなポータルサイトも登場しています。
また、プリペイドカードや商品券を自粛していない自治体も多く、転売目的のアプリやサイトに多数掲載されています。
このような現状が、今回の総務大臣の発言を招いたと言えるでしょう。
自治体同士の競争が激しくなったため、返礼品を調達するためのコストが高くなっているのも問題です。
平成27年度のふるさと納税は「1,653億円」ですが、そのうち「632億円」が返礼品の調達に充てられています。
寄せられた寄付のうち「38%」が返礼品の調達のために消えてしまうのです。
この件についても、総務大臣は「せっかく、ふるさと納税で寄附が集まってきても、返礼品のコストの割合が非常に高いことになると、多くの方々が寄せてくださったお金が地方公共団体の住民サービスのために十分に活用されない」と指摘しています。
ふるさと納税はどう変わる
総務大臣の発言によって、「ふるさと納税」は変わるでしょうか。
結論としては、換金性の高い商品や、コストが高い商品については自粛する自治体が増えると思われますが、返礼品を全面的に取りやめることにはならないでしょう。
そもそも、総務省が返礼品について直接的な指導を行なうことは難しい事情があります。
なぜなら、返礼品は、法律によるものではなく、地方公共団体が自主的に行なっていることです。
『地方自治』という基本原則があるため、総務省からは「要請」という形しかとれません。
総務省としては公式には「地方団体が自らの御判断と責任の下で、良識ある対応を行っていくことが重要だと考えています」と言うのが限界なのです。
しかし、今後は「地方団体に実情や御意見をお伺いする機会を増やす」ことが予告されています。総務省からの働きかけが強化されるのは間違いないでしょう。
総務大臣は「課題がどこにあり、どのように改善できるのかを検討してまいります。その旨、既に職員に対して指示を行っております」とも発言しています。
早ければ今年中にも返礼品の内容について変化が始まるでしょう。