電子マネーカードを使った特殊詐欺の手口

[2017/3/3 00:00]

コンビニで見かける便利な「電子マネーカード」

最近のコンビニでは、AmazonやiTunesなどの「電子マネーカード」の売り場が必ずあります。

これらのカードは、「プリペイドカード」や「ギフトカード」などと呼ばれますが、ここでは警察庁の用語に従って「電子マネーカード」で統一します。

電子マネーカードの本来の用途は、コンビニの店頭で購入したカードを、誰かにプレゼントとして渡すことです。

カードをもらった相手は、カードの裏面にある暗証番号を入力することで、自分のアカウントに、カードに設定されている金額が登録され、買い物に使用することができます。

使い方の一例を挙げると、クレジットカードを使えない子供に電子マネーカードを渡し、その範囲内でアプリやゲームなどに使わせるわけです。

電子マネーカードは、このように台紙に貼った形で販売されている。貰った人は、台紙からはがして、カードの裏側にある10~12桁の番号を読んで、自分で登録する

「電子マネーカード」を使った特殊詐欺が増えている

最近、オンラインゲームなどの課金のために、大きな金額の電子マネーカードを、コンビニの店頭で購入すると、用途を聞かれます。

実は、特殊詐欺(とくしゅさぎ)に遭っているではないかと確認しているのです。

「特殊詐欺」とは、面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺をいいます。

最近、振り込みの代わりに、電子マネーカードを使った特殊詐欺が増えているのです。

警察庁の統計によれば、2016年の電子マネー型特殊詐欺は、わかっているだけでも1,267件に上りました。被害金額は7億7千万円に達します。

件数、被害額とも、過去最高となりました。

電子マネーカードを使った特殊詐欺の被害金額 出典:警察庁

写真やメールなどでカードの番号を送らせる

電子マネーカードを使った特殊詐欺の手口はシンプルです。

例えば、携帯電話に“有料コンテンツの未納料金があるので支払いをしてください”などと電話があります。

スマホに慣れていない被害者は、いつのまにか誤って登録してしまったのであろうと思い込んでしまいます。

そして、言われるままに、電子マネーカードを購入し、カードの番号を相手に電話で伝えてしまうのです。

多くの詐欺師は、アダルトサイトや出会い系サイト、情報番組などの料金や退会費が未払いであると主張します。

そして、「このまま未払いだと裁判になる」などと脅されると、インターネットになじみのない世代ほど、恐怖を感じて電子マネーカードを買ってしまうのです。

また、LINEやTwitterのアカウントを乗っ取り、誰かになりすまして、「ちょっと手伝ってほしい。電子マネーカードを買ってきて、番号を教えてくれ」という例もあります。

電子マネーカードの番号を送る方法についても、電話で読み上げる以外にも、写真に撮って送らせる、コピーしてFAXで送らせるなどのパターンがあります。

被害金額が「770万円」に上る例も

電子マネーカードを使ったことがある方なら、さきほどから疑問を持たれているでしょう。

それは、「電子マネーカードでは大きな金額の送金ができない」ことです。

ほとんどの電子マネーカードは、1枚につき、5万円までしか設定できません。

電子マネーカードの番号を1つ相手に送っても、被害金額は5万円に留まるわけです。番号を2つ送らせても10万円です。

実際に、警察庁の統計でも「被害額の比較的小さい犯行が多数回行われる傾向がある」とされています。

しかし、電子マネーカードを使った詐欺でも、被害金額が大きくなる場合があります。

岐阜県警が公開している実例では、被害金額は「770万円」に上ります。

どうやって、そんなに大きな金額を送らせたのか、手口を見てみましょう。


被害者は60代の女性です。

還付金振り込み担当を名乗る人物から「毎年インターネット回線をご利用者様の中から厳正なる審査で還元金を配当するサービスに貴方様が選ばれました。還付金は8,750万円。貴方の口座番号を教えてください。」とのメールが女性のスマートフォンに届きました。

女性が相手に口座番号を教えると、「1,000万円以上振り込めるようにするためには保証金が必要」などとメールで返信を受けたため、指示されるままコンビニエンスストアで5日間かけて電子マネー合計約300枚(約770万円分)を購入し、この電子マネーを使うために必要な番号をメールで相手に送信してしまいました。

(出典:岐阜県警ホームページ)

つまり、1つの番号で送れる金額は数万円でも、それを何百とメールで送らせれば、被害金額が大きくなってしまうのです。

岐阜県警では、このような実例に学び、2016年12月から「電子マネー通報制度」を設けました。この制度は、合計10万円以上の電子マネーカードをコンビニ店頭で購入している人がいた場合は、コンビニ店員が警察に通報する仕組みです。通報を受けると警察官が出向いて来ます。

他の県の警察も、同様の通知をしているところがあります。それで、大きな金額の電子マネーカードを購入すると、コンビニの窓口で用途を聞かれることが増えたのです。

「電子マネーカードの番号教えろ」は「詐欺」

最後に、電子マネーカードを使った詐欺にかからない方法を紹介しましょう。

電子マネーカードの本来の使い方では、カードを送る側は暗証番号を知りません。カードを受け取った人が、自分で番号を確認して入力するのが、本来の使い方です。

つまり、相手が「電子マネーカードを買ってきて、その番号を教えろ」と言ったら、それは「詐欺」です。電子マネーカードを買いに行かずに、もよりの警察に相談しましょう。

[シニアガイド編集部]