伊那市が、ふるさと納税の返礼品から「家電」を取り下げ。他の自治体にも影響か
伊那市が家電の返礼品を6月から停止
長野県伊那市は、2017年5月31日をもって、ふるさと納税の返礼品として、家電製品の取り扱いを止めると発表しました。
伊那市は、4月1日に総務省が行なった、「ふるさと納税に関する通知」を受けて、寄付の受付を一時停止しました。
しかし、4月17日から、以下に該当する返礼品は取り扱いをしないという条件で、受付を再開しました。
- 家電製品で、調達価格が10万円以上のもの(資産性が高いもの)
- 家電製品以外で、調達価格が50万円以上のもの(高額なもの)
- 生産工程が国内に存在しない製品(海外製品)
また、すべての返礼品の原価(返礼割合)が3割以下となるよう見直ししています。
総務大臣の記者会見で名指しで批判される
この伊那市の方針で注目されたのは、総務省が通知で好ましくないと指定している「家電商品などの資産性の高い返礼品」を、一定の金額内とはいえ、引き続き返礼品としたことです。
実際に、伊那市の委託を受けた、ふるさと納税サイトでは、ロボット掃除機やスチーマー、ドライブレコーダーなどの返礼品が「イチオシ返礼品」として紹介されています。
この伊那市の方針に対して、4月21日の総務大臣の質疑応答において、高市総務大臣が次のように名指しで批判しました。
総務省から発出した通知の中で、「ふるさと納税」の趣旨に反するような返礼品として、電気・電子機器など「資産性の高いもの」を「地域への経済効果等の如何にかかわらず」送付しないよう、地方団体に要請をしており、今回の伊那市の対応については、通知の趣旨にそぐわないものだと考えています。
また、「10万円未満の家電」について法人税法では「消耗品」扱いとなっていることを根拠として、取扱いを続けていることについても、次のように批判しました。
法人税法上の「減価償却資産の損金算入」に当たっての基準である10万円のことをおっしゃっているのでしょうか。返礼品は、ふるさと納税制度の枠外であり、個人の寄附者の方々に送付されるものでございますから、法人に対する法令上の取扱いを云々されるのは、大変違和感がございます。
いずれにしても、4月1日に発出させていただきました通知は、返礼品競争の過熱を是正するために必要な対応と考えておりますから、資産の価格にかかわらず、「電子・電気機器」などについては「資産性の高いもの」として送付しないように、更に理解を求めてまいります。
伊那市が折れる
この批判を受けて、伊那市の判断が注目されていました。
そして、5月9日に「総務省および長野県からの見直し要請を受け、再検討した結果、改めて以下の内容で返礼品を取り扱うこととしました」として、基準の見直しを発表したのです。
- 家電製品は、返礼品として取り扱いをしない(今回変更)
- 社会通念に照らし、高額と判断する返礼品は、取り扱いをしない
- 生産工程が国内に存在しない製品(海外製品)は、返礼品として取り扱いをしない
- 全ての返礼品の返礼割合が3割以下となるよう寄附額を設定する
なお、家電製品の取り扱いについては、即時ではなく、5月31日までの受付をもって終了とするとしています。
「ふるさと納税」自体への批判が始まっている
今回は、一自治体の動向について、質疑応答とはいえ、総務大臣が直接批判するという異例の事態になり、自治体側の対応を招きました。
どうして総務省および総務大臣が、ここまで「ふるさと納税」の返礼品について、こだわるのか、4月28日付の記者会見で明らかにしています。
返礼品競争が過熱している現状に対する認識や通知の趣旨については、理解が浸透しつつあると認識しています。今後は、今回の通知を踏まえた各地方団体の対応について、総務省でも把握をしながら、「ふるさと納税」の趣旨に反するような返礼品の送付を行なっている地方団体については、通知の内容について理解を求めながら、必要に応じて、直接、見直しを働きかけていくことになります。
是非、御理解いただきたいのは、返礼品競争の過熱に伴って、「ふるさと納税」制度そのものに対する批判も現れてきている現状でございますので、何とか「ふるさと納税」制度が健全に発展し、継続できますように、通知の趣旨を御理解いただきたい、御協力を賜りたいと思っております。
つまり、高額な返礼品や換金性の高い返礼品の問題を放置しておくと、ふるさと納税という制度自体が危うくなるという危機感が背景にあります。
このような事情を考えると、伊那市以外に指導に従わない自治体が出てきた場合、今後も総務省は強硬な姿勢で望むであろうと推測されます。
高額な返礼品や、家電などの返礼品、原価が寄付額の3割を越えると思われる返礼品を狙っている人は、すぐに行動した方が良いでしょう。