今回の年金の未払い問題に、自分が該当するかどうかを確認する方法

[2017/9/19 00:00]

約十万人に、598億円が未払い

2017年9月13日に、厚生労働省と日本年金機構が「年金の未払いがある」という発表を行ないました。

未払いの対象者は「10万5,963人」、未払金額は「598億円」という大規模なものです。

個人に対する未払い金額は「590万円」とされています。

未払いの内容は「振替加算」という金額が加算される仕組みに該当していながら、実際には支給されていないというものでした。

この記事では、自分が、未払いに該当しているかどうかを判断する方法を中心に紹介します。

「振替加算」という制度

今回の未払いの原因になったのは、「振替加算」という加算分です。

加給年金という制度は、一般的には、専業主婦を対象としています。

この場合は、「夫に扶養されている妻が65歳になると、自分の年金がちょっと増える」と思えば良いでしょう

下の図のように、それまで夫に支給されていた加給年金の代わりに、妻の年金が増えるイメージです。

出典:日本年金機構

振替加算の有無が問題

今回の未払いの内容は、「振替加算を貰える条件を備えている人に対して、振替加算が加算されていなかった」ということです。

つまり、振替加算がされているか、されていないかが問題です。

振替加算の金額は、受け取る人の生年月日で決まってしまうので、「振替加算が出ているけれど金額の計算が間違っている」という可能性はほとんどありません。

未払い対象者の条件

貰えるはずの振替加算が未払いだった可能性があるのは、振替加算が支給されるための条件を満たしている人です。

  • すでに65歳になっていて、年金の支給が始まっている
  • 自分の厚生年金または共済年金の加入期間が20年未満である
  • 厚生年金または共済年金に20年以上加入していた配偶者に生計を維持されている
  • 自分が65歳になる前は、配偶者に「加給年金」が支給されていた

ただし、1986年(昭和61年)3月以前に、公務員として20年以上勤務した上で退職している場合は、「振替加算」はありません。今回の未払い問題の対象からも外れます。

振替加算の確認方法

上の条件に合致していたら、毎年5月から6月頃に送られてくる「年金額改定通知書」をチェックしましょう。

この書類の「振替加算」の項目に金額が入っていれば、問題はありません。

出典:日本年金機構

「年金額改定通知書」を保存していない場合は、最初に年金が出るときに送られてきた「国民年金・厚生保険 年金決定通知書 ・支給額変更」という書類にも「振替加算」の項目があります。そちらでチェックできます。

未払い分を受け取るための方法

日本年金機構によれば、未払い金を受け取る手順は、次のようになります。

  • 2017年11月上旬に手紙にて通知が来る
  • 2017年11月15日に全額が振り込まれる

つまり、未払いの該当者は、特に書類などを提出することなく、未払いだった分の年金が受け取れます。

また、この件に関しては時効がありません。過去の未払い分すべてが一括で支払われます。

すでに、受け取るべき本人が死亡している場合には、遺族宛に手紙が来ます。

なお、勤務関係や扶養関係などで事実確認が必要な場合は、確認の手紙が来ます。その場合は、すみやかに回答しましょう。

今後もトラブルが起こると思っていた方が無難

「振替加算」という制度は『扶養されている配偶者に支給される加算なのに、支給の資格があるかどうかは、夫と妻の両方の条件が揃わないと判断できない』という複雑な仕組みです。

例えば、今回の未払いで一番多いパターンは、共済年金と厚生年金の間の連絡が悪く、2つの年金で通算すれば20年以上勤務しているのが分からなかったというものです。

このため、今回の未払いは、夫婦のいずれかが共済年金を受給していた人が96%を占めています。

つまり、制度が複雑すぎてミスが起こりやすかったことは間違いありません。

出典:厚労省

ただし、今回の未払いの原因はそれだけではありません。

例えば、振替加算に該当するかどうか微妙なケースについて、「その場合は、リストを出力して個別に確認することとしていた。しかし、このリストには多くの不要な情報が混在し、個別確認に対応できる仕様でなかったため、振替加算の支給漏れが生じた」という記載が、報告書には出てきます。

一般的な企業であれば、チェックに使えないリストは、すぐにリストの形式を適切なものに変えますが、日本年金機構には、そういう風土がないのです。

社会保険庁から日本年金機構へと名前や立場が変わっても、「自分の仕事が誰かの年金に影響するから、きちんと解決しなければならない」という意識が養われていないことが分かります。

したがって、管理不行き届きに類するトラブルは、今後も起きると考えた方が良いでしょう。

商売に例えれば、手続きのミスやトラブルが多いが、付き合いは続けざるを得ない取引先と思えば良いでしょう。そうすれば、適切な付き合い方がイメージできます。

とりあえず、日本年金機構から送られてきた書類は、すぐに開封して、自分自身で数字を確認する習慣をつけるところから始めると良いでしょう。

年金という自分のお金を、任せきりにするには頼りない相手だと思って対応しましょう。

[シニアガイド編集部]